今日の1枚(175)

引き続き「トスカニーニ・エッセンシャル・コレクション」からベートーヴェンの1枚。BVCC-9703 という品番の第3集は、

①ベートーヴェン/交響曲第5番
②ベートーヴェン/交響曲第8番
②ベートーヴェン/エグモント序曲

3曲とも新・旧2種類の録音があり、新盤については既に取り上げています。旧盤に当たる当盤のデータは、

①1939年2月27日、3月1日&29日 NBC 8-Hスタジオ
②1939年4月17日 NBC 8-Hスタジオ
③1939年11月18日 NBC放送録音、NBC 8-Hスタジオ

このデータの通り、①②は客席に入れないセッション録音で、③のみが聴衆を入れた放送用ライヴ録音の様です。それは客席ノイズの有無からも実証されています。

当盤のモーティマー・フランク氏のコメントは第5交響曲に関するフィラデルフィア管弦楽団のメンバーの述懐で、ストコフスキーとの違いの大きさがテーマになっています。
ストコフスキー・ファンには申し訳ありませんが、トスカニーニの崇高な解釈は、凡そストコフスキーの比ではありません。そんなトスカニーニでも第5の録音は中々満足のいくものにならず、当録音は何度かの失敗の後マエストロが初めて承認した録音の由。

①の初出はHMVの DB 3822/5 の4枚8面。繰り返しや楽譜の改変等は新盤(シリーズ147、1月11日)とほぼ同じですが、第1楽章再現部でのホルン信号は当旧録音の方が明瞭にホルンで吹かせていることが判ります。
また新盤では気が付きませんでしたが、同じ第1楽章の再現部でコーダの直前の木管による下降音階(363小節からと367小節から)にホルンを重ねていることも確認できます。これは提示部と同じ扱いに整合させたものでしょう。
もちろんこちらの方が録音としては古いにも拘らず、よりトスカニーニの決然とした解釈が聴かれる一品と言えるでしょう。

②の初出はHMVの DB 6160/2 の3枚6面。こちらも繰り返しや楽譜の改変は新盤(シリーズ148、1月12日)と大体において同じ。ただ決定的に違うのは第1楽章再現部の冒頭で、ティンパニを低弦に出る主題と同じリズムで叩かせていること。これは新録音には無い処置で、コアなファンには有名な改訂個所です。
また第2楽章は16分音符の刻みを基本にした音楽ですが、トスカニーニは8分音符の個所も16分音符で演奏させることに徹底しているのが独特。これをトスカニーニは楽譜通り演奏していないと批判するのは野暮というものでしょう。
冒頭などは録音の粗さ、古さも感じさせますが、年代を考慮すれば決して聴き辛いものではありません。

③も同じくHMVのSPで、DB 5705 の2面に収められていました。聴衆のノイズも聴かれる録音ですが、最後の拍手はカットされています。
この曲には特に楽譜の改変などは聴き取れませんでした。如何にもトスカニーニらしい筋骨隆々たる名演。

参照楽譜
①ユニヴァーサル(フィルハーモニア) No.1
②ユニヴァーサル(フィルハーモニア) No.4
③ユニヴァーサル(フィルハーモニア) No.44

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