今日の1枚(176)

BMGジャパンが日本独自の技術であるK2レーザーカッティングを駆使してマスタリングしたトスカニーニ名盤集は、そのほとんどがNBC交響楽団との演奏ですが、「トスカニーニ・エッセンシャル・コレクション」第4集のみはニューヨーク・フィルハーモニック交響楽団との録音を集めた1枚です。BVCC-9704 がその品番。

①ベートーヴェン/交響曲第7番
②ハイドン/交響曲第101番
②ブラームス/ハイドンの主題による変奏曲

トスカニーニがニューヨーク・フィルの首席指揮者を務めていた時代の演奏ですから当然ながら録音は古く、

①1936年4月9日&10日 カーネギーホール
②1929年3月29日&30日 カーネギーホール
③1936年4月10日 カーネギーホール

最も古い②は、トスカニーニがニューヨーク・フィルの首席指揮者に就任した年の録音。また②と③は同じセッションで収録された2曲で、ニューヨーク・フィルの首席を辞任した年の録音になります。いずれもSP用のセッション録音。
1929年は例の大恐慌が起こった年ですが、ブラックマンデーはその年の秋、これは4月の録音ですからバブル絶頂期だったはずですね。もし大恐慌が無ければトスカニーニ/ニューヨークの録音ももっと多かっただろうと思うと、聊か感慨深いドキュメントと言えましょう。

モーティマー・フランク氏は、当時のスタイルとしてトスカニーニの第7が如何に斬新だったかについてコメントしています。またハイドンでは“オーケストラの編成を減らすことによってテクスチュアの明快さと動機の絡みをはっきり聞き取ることが出来た” と述懐しています。

①は当然ながらSPが初出で、HMVの DB 2986/90 の5枚10面。繰り返しや楽譜の改変等はNBC交響楽団との再録音(シリーズ148、1月12日の記事を参照して下さい)と全く同じです。特に第3楽章第2トリオに入る前のデクレッシェンドは短く、2小節分しか演奏していないようにも感じられるほど。
録音はFレンジ、Dレンジとも狭いのは致し方ないところで、時代の記録として鑑賞すべき録音です。

②は①以上に古いもので、これも初出はSP、HMVの D 1668/71 の4枚8面だったようです。因みにNBCとの新録音は7面でした。(NBC盤はシリーズ13、2009年1月1日に扱っています)
繰り返しや楽譜の改変はNBC盤とはかなり違っているのが面白いところで、先ず第1楽章の繰り返しは当盤では省略しています(NBCは実行)。
次に第2楽章の繰り返しは、NBCが全て省略しているのに対し、当ニューヨーク盤では前半のみ実行。また第2変奏のファゴットの刻みで、72小節後半の下降音型を省略(NBCでは譜面通り吹かせています)しているのにもドキリとさせられます。
第3楽章と第4楽章の繰り返しは両盤とも実行しているのは同じ、また第4楽章188小節のフェルマータを無視するのも同様ですが、これは使用楽譜に起因するのかも知れません(シリーズ13参)。

③は再び1936年の録音に戻りますが、②を聴いた後で当作品を聴くと、録音の進歩が感じられるのが不思議。微かながらコントラファゴットの低音がそれらしく響きます。
演奏の質、繰り返しの実行等はNBCとの新録音と全く同じアプローチ。こちらはシリーズ162、今年の2月14の記事を参考にして下さい。

参照楽譜
①ユニヴァーサル(フィルハーモニア) No.11
②ユニヴァーサル(フィルハーモニア) No.801
③ユニヴァーサル(フィルハーモニア) No.134

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