今日の1枚(139)
イタリア・フィリップスがメンゲルベルクの没後50年を記念して発売したコンセルトへボウ管弦楽団とのベートーヴェン交響曲全集、今日は4枚目を取り上げます。
①ベートーヴェン/交響曲第6番
②ベートーヴェン/交響曲第8番
①は1940年4月21日、②は1940年4月18日の演奏。第6は第2と、第8は第5と組み合わせれて演奏されたコンサートのライヴ収録です。
当盤の個別番号は、468 634-2 。
①は、第5と共にテレフンケン盤に収録されていた作品。私見ではメンゲルベルクの最も素晴らしいベートーヴェン演奏だと考えますが、当ライヴ盤はセッション録音以上に活気の漲ったもので、当全集の白眉と言えましょう。
第1楽章と第2楽章は、ほとんどテレフンケン盤と変わらないスタイル。第1楽章の繰り返しは省略し、第2楽章の独特なアーティキュレーションも健在です。鳥の歌もグッとテンポを落とし、自由に唄っているのもメンゲルベルクならでは。
第3楽章の繰り返しは忠実に実行しますが、傑作なのはテレフンケン同様、ピッコロの加筆でしょう。173~180小節のフルートにピッコロを重ねるのですが、アイディアは真に秀逸。ベートーヴェンが書き忘れたというメンゲルベルク説を信じてしまいそう。
第4楽章の嵐でもメンゲルベルク節は絶好調。19~20小節にティンパニのトレモロ・クレッシェンドを加え、弦楽器にスル・ポンティチェロを導入して不気味さを強調します。
スル・ポンティチェロは、例えば43~44小節、47~48小節、62~63小節など、テレフンケン盤以上に大胆になっているように感じられます。
60小節のトランペットに弱音器を付けて吹かせるのもテレフンケン盤に同じ。
第5楽章のコーダ、トロンボーンの弱音器(255小節)もテレフンケン盤でも聴かれたアイディアですが、アッと驚くのは再現部、125~131小節の第1ヴァイオリンでしょう。
ここはスコアではスピッカートの指示ですが、メンゲルベルクは何とピチカートに代えているのですね。
同じところをテレフンケンと比較してみると、どちらも録音が古いので明瞭には聴き取れませんが、テレフンケンはどうやら楽譜通りと思われます。
②は、前回取り上げた第7交響曲同様、スコアにはほとんど手を加えていないと思われます。
第1楽章提示部の繰り返しは実行。第3楽章の繰り返しも全て実行しています。
オーケストレーションに加筆が認められるのは第4楽章で、展開部での木管楽器に登場するスフォルツァート sf の箇所。ここにホルンを重ねているように聴こえます。(録音が高音を強調しているので聴き取り難いのが難点)128小節から143小節辺りまでのパッセージです。
またこの楽章では、提示部(47小節のあと)でも再現部(223小節のあと)でも第2主題の直前に短いパウゼを置くのが特徴。第7交響曲のコーダ同様、急激な音量変化に対処した処置でしょうか。
参照楽譜
①ユニヴァーサル(フィルハーモニア) No.3
②ユニヴァーサル(フィルハーモニア) No.4
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