今日の1枚(146)
合唱曲を集めた Arturo Toscanini, The Immortal の2CDシリーズ第11巻。2枚目は次の内容です。
①ヴェルディ/4つの聖歌~テ・デウム
②ケルビーニ/レクイエム ハ短調
いずれもトスカニーニ指揮NBC交響楽団、ロバート・ショウ合唱団 Robert Shaw Chorale の演奏で、この2曲にはソリストは登場しません。
引き続きCD番号は 74321 72373-2 の20ビット・リマスター盤。
データは、
①1954年3月14日 カーネギーホールでの放送録音
②1950年2月18日 スタジオ8-H での放送録音
①はヴェルディ最後の作品。「アヴェ・マリア」「スターバト・マーテル」「聖母マリアの讃歌」「テ・デウム」の4曲から成る宗教合唱曲集で、第1曲と第3曲はア・カペラの合唱、第2・4曲が大編成のオーケストラ伴奏を伴います。ここでは第4曲のみの録音。
1898年にパリで初演されて大成功を博しましたが、その翌月にトリノで行われたイタリア初演も大絶賛。そのときに指揮したのがトスカニーニその人です。ということもあり、これは同曲の決定盤でしょう。
ブックレットには、トスカニーニが作曲者の前でピアノで試奏したとき、ある箇所を楽譜に無いリタルダンドをかけたところ、ヴェルディが“ブラヴォー”と叫んだというエピソードが紹介されています。
その箇所が何処かは不明ですが、冒頭のクライマックス(大太鼓も動員される)手前ではないでしょうか。
テ・デウムは二重合唱、八声部という大規模なもの。残念ながらモノラル録音のため壮大な広がりは望めませんが、トスカニーニのほぼ最後の時期である1954年の収録だけに、モノラルとしては最高水準の仕上がりです。
(例えば冒頭はテンポの無い聖歌の応唱で始まりますが、最初は第1合唱のバスが歌い、それを第2合唱のテノールが引き継ぐ構造になっています)
曲の最後に近く(171小節)、Dignare, Domine が始まる2小節前に大太鼓が pppp で低弦を支える場面がありますが、トスカニーニは大太鼓を2小節間に止めず、フレーズの終わり、第185小節まで引き延ばしているように聴こえます(何分にも音量が pppp なので断言はできませんが・・・)。
当録音の初出はヴィクターのLPで、LM 1849 としてボイートの歌劇「メフィストーフェレ」プロローグとのカップリングで発売されていました。
②は①より4年前の録音、演奏会場の違いも聴きどころです。
①に比べて録音の古さは否めませんが、それなりに優れた録音。第3曲「ディエス・イレー」に登場するタムタムの強打は中々インパクトがあります。
トスカニーニは11歳の時に合唱団の一員としてこの曲を歌ったことがある由。当録音はトスカニーニがアメリカで演奏した唯一の記録でもあり、極めて貴重なドキュメントと言えましょう。
WERMには当録音の発売記録はなく、恐らくトスカニーニの死後にアーカイヴから発掘されてLP化されたのでしょう。
以前に交響曲でも紹介しましたが、ケルビーニはベートーヴェンが極めて高く評価していた作曲家。ベートーヴェンは、もし自分がレクイエムを作曲する機会があれば、手本とするのはケルビーニだけ、と宣言していました。実際にこのレクイエムはベートーヴェンの葬儀で演奏されています。
現在では演奏機会がめっきり減ってしまったケルビーニですが、トスカニーニがこの録音を残しておいてくれたことに感謝すべきでしょう。
一度聴いた位ではピンと来ませんが、繰り返し聴くうちに作品の素晴らしさに開眼すること間違いなしの名盤。
参照楽譜
①オイレンブルク No.1000
②オイレンブルク No.993
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