今日の1枚(147)
BMG/RCAが20ビットリマスターで発売した2枚組のトスカニーニ名盤集、手元にある最後の1セットはベートーヴェンの交響曲です。
当シリーズの第1巻から第3巻まではベートーヴェン交響曲全集にミサ・ソレムニスを加えた内容で、これはその第2巻。先ず1枚目を聴きましょう。
74321 55836-2 という品番、1998年の発売です。
①ベートーヴェン/交響曲第5番
②ベートーヴェン/交響曲第6番
アルトゥーロ・トスカニーニ Arturo Toscanini 指揮NBC交響楽団 NBC Symphony Orchestra の演奏、録音データは、
①1952年3月22日 カーネギーホールでの放送録音
②1952年1月14日 カーネギーホールでの録音
①は放送用のコンサートで、聴衆が入ったライヴ(ただし拍手などはありません)。一方②は純粋なセッション録音でしょう。①には楽章間のノイズや客席の咳ばらいが収録されているのに対し、②には演奏ノイズ等は一切入っていません。
録音はいずれもモノラル録音最盛期のものだけに、極めて優れたもの。モノであるという以外に鑑賞には何の支障もありません。むしろ最新ディジタル録音よりも、音楽が発するエネルギーでは勝っているとさえ感じられます。
トスカニーニはベートーヴェンの交響曲を何度も演奏・録音していますが、当全集に選ばれたのは最も録音状態が新しいもの。一般的に最も多く聴かれてきた録音です。
①はトスカニーニの代表的な名盤。冒頭のダダダダーは、トスカニーニを象徴するような意味合いがありました。この録音の10数年後、カラヤンが自身のベートーヴェン全集を録音するに当たってベルリン・フィルのメンバーにトスカニーニの全集を聴かせたのは有名な話。当時だけでなく、現在でもベートーヴェン演奏のスタンダードと申せましょう。
実はトスカニーニは第5をそれほど頻繁には取り上げて来なかったのだそうで、録音が残っているのは4種類。ニューヨーク・フィルとが2種、NBCとが2種の由。他に第4楽章のみ、スカラ座オケとの記録(1920年)もあるそうです。
ここで採用されているのは、NBCとの最後のもの。
WERMによると、この演奏のLP初出はHMVの ALP 1108 。同じベートーヴェンの第8交響曲とのカップリングでした。(ヴィクターでは LM 1757)
第1楽章提示部の繰り返しは実行。再現部でのホルン信号は微妙で、ファゴットともホルンとも取れる音。恐らく楽譜通りファゴットが吹き、ホルンは控えめに支えているのではないでしょうか。露骨にホルンが代奏していないのが面白いところ。
186小節の2拍目、ティンパニをトランペットのリズムに合わせて加筆しています。
第3楽章トリオの繰り返しは当然ながら実行、155~157小節にもティンパニの加筆があるのはメンゲルベルクと全く同じ処置です。
第4楽章の繰り返しは省略。この楽章にもティンパニの加筆がいくつかあり、先ずは小結尾直前の63小節、続いて117小節のトレモロ。
更に128小節には3連音符の一打を加え(前後の小節と同じ)、263小節にも同様に3連音符のティンパニを加筆しています。
②も速目のテンポで細部が明瞭な演奏。フルトヴェングラーとは対照的なアプローチです。
トスカニーニは第5とは違って田園交響曲はしばしば取り上げてきました。NBC響と演奏した最初のベートーヴェン交響曲も第6でした(1938年1月8日)し、最後(1954年3月7日)もまた第6。
8種類もの放送録音が残されているそうですが、当盤に選ばれたのは1952年1月のセッション録音です。
こちらのLP初出は、やはりHMVの ALP 1129 、ヴィクターからは LM 1755 で出されたようで、田園交響曲1曲のみの収録盤でした。
第1楽章と第3楽章の繰り返しは全て実行。
第2楽章提示部第2主題の最後にある第1ヴァイオリンの長いトリル(40小節)の最後に短い装飾音を加えるのは独特で、再現部(112小節)でも同じ処理。最後に登場するナイチンゲールの鳴き声に合わせたようにも聴こえます。
第4楽章の嵐では、かなり大胆にティンパニを加筆させています。一々指摘すると、25小節からと27小節からの ff 。53小節と54小節の一撃。更に78小節からの ff にも雷を落としてます。
参照楽譜
①ユニヴァーサル(フィルハーモニア) No.1
②ユニヴァーサル(フィルハーモニア) No.3
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