今日の1枚(157)

トスカニーニの名盤集、今日からワーグナーに入ります。今回と次回の二回でトスカニーニのワーグナー作品はほぼ完璧に揃うことになります。
「ワーグナー管弦楽曲集」の第一巻はBVCC-9923 、収録作品は、

①ワーグナー/歌劇「ローエングリン」第1幕への前奏曲
②ワーグナー/歌劇「ローエングリン」第3幕への前奏曲
③ワーグナー/楽劇「ニュルンベルクのマイスタージンガー」第1幕への前奏曲
④ワーグナー/楽劇「ニュルンベルクのマイスタージンガー」第3幕への前奏曲
⑤ワーグナー/舞台神聖祝典劇「パルジファル」第1幕への前奏曲
⑥ワーグナー/舞台神聖祝典劇「パルジファル」聖金曜日の音楽
⑦ワーグナー/ジークフリート牧歌

録音は当然ながら様々な機会のものが集められています。全てセッション録音で客席ノイズはありません。データは、

①②1951年10月22日 カーネギーホール
③1946年3月11日 カーネギーホール
④1951年11月26日 カーネギーホール
⑤⑥1949年12月22日 カーネギーホール
⑦1952年7月29日 カーネギーホール

最も古いものがマイスタージンガー1幕前奏曲で、以下パルジファルの2曲、マイスタージンガー3幕、ローエングリンの2曲と続き、最も新しいものがジークフリート牧歌。
音質も大体録音年代の順に良くなりますが、最初の③もやや硬い音とは言いながら、充分に鑑賞に堪えるレヴェルです。先取りするようですが、トスカニーニのワーグナーはどれも優れた録音と言って良いでしょう。

トスカニーニは①②とも二度録音しているようで、当盤に収められているのは新しい方。

②はオペラ上演では終止せずに幕が挙がりますが、ここでは演奏会用のエンディングが付けられた版での演奏。演奏会版にもいくつかあるようですが、トスカニーニが選択したのは「禁問の動機」が金管で強奏されるバージョンです。
これがワーグナー自身のアレンジなのか、他の人の手になるものなのか、私は知りません。是非、御教示を・・・。

③も同様に演奏会用終結の付いた版。手元のオイレンブルク版より1小節長いエンディングで演奏されています。
④も同じことが言えますが、ここでは第1場に入る直前、木管のダヴィッドのモチーフは省略して弦の pp を終止和音にして演奏しています。この編曲者も不明(編曲と言えるほどのものではありませんが)。
③の初出はヴィクターの 11-9385 で2面のSP盤。SP時代この曲は3面のものと2面のものがあり、2面盤の方が営業的に有利だったのは当然でしょう。
因みに3面の代表はフルトヴェングラー、ストコフスキーなど。一方2面盤はトスカニーニの他、メンゲルベルク、クナッパーツブッシュ、ベーム、カラヤンなど。クナは晩年こそ遅いテンポで有名でしたが、若い頃はトスカニーニより速いテンポで演奏していました。

⑤も演奏会用終結部付きバージョンによる演奏。この版はオイレンブルクから出ているのでスコアを参照しながら聴くのには問題がありません。
⑥も同様、オイレンブルクから出ている演奏会用バージョンによる演奏。
聖金曜日の音楽は、楽劇全体の上演とはかなり異なるもの。ダニエルズの「Orchestral Music」によると、当版はW.ハッチェンロイターの編曲になるもののようです。

⑦も二種類の録音が残されているようですが、当盤は新録音。何故か曲の最後で自動車のクラクションの様なノイズが混入しています。

例によって日本盤の解説書には演奏版についての指摘は一切無く、トスカニーニとワーグナーの係わりについても触れられていません。

参照楽譜
①②オイレンブルク No.904(歌劇全曲版)
③オイレンブルク No.665
④オイレンブルク No.906(歌劇第3幕全曲版)
⑤オイレンブルク No.666
⑥オイレンブルク No.812
⑦オイレンブルク No.810

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