アメリカ競馬2011、これまでのGⅠ戦

先週からアメリカ競馬ウォッチングを始めましたが、折角ですから2011年のこれまで行われたGⅠレースだけでも振り返っておきましょう。今年は既に4鞍のGⅠ戦が終わっています。

先ず1月のGⅠは一鞍だけ。30日にサンタ・アニタ競馬場で行われたサンタ・モニカ・ステークス Santa Monica 。メインのダートコースで行われる、4歳上牝馬のための7ハロン戦。
今年の勝馬はスイッチ Switch 。前回紹介したラ・カニャーダ・シリーズの第1戦となるラ・ブレア・ステークス(GⅠ)の勝馬ですが、カニャーダ三冠を狙わずにGⅠ戦のこちらに回ってきました。年上の馬が相手になりますが、GⅠ連勝を目指したのでしょう。
6頭立て。大外からのスタートで三番手に付け、直線手前で早くも先頭。ジョエル・ロザリオ騎手はムチを使うことなく2着以下に5馬身差を付ける圧勝でした。狙い通りGⅠ2連勝達成です。
勝利調教師はジョン・W・サドラー。スイッチはこれで12戦5勝の戦績。

2月に入った最初の土曜日、2月5日には3鞍のGⅠ戦が行われました。サンタ・アニタのラス・ヴァージェネス・ステークス Las Virgenes 、ガルフストリーム・パーク競馬場のガルフストリーム・パーク・ターフ・ハンデキャップ Gulfstream Park Turf と、ドン・ハンデキャップ Donn です。

ラス・ヴァージェネスは3歳牝馬による8ハロン戦。年明け最初に行われるクラシック牝馬のための最初のGⅠ戦として注目されます。
今年は、前年の2歳牝馬チャンピオンであるタービュレント・デサント Turbulent Descent が初めてダートコースに挑むことに期待が集まっていました。当然ながら彼女が本命。
しかし優勝はザズー Zazu 。勝ちタイム、1分34秒86はレース・レコードというおまけつきです(このレースの創設は1981年)。
6頭立て。先行馬が揃ってペースが極端に速くなり、最後方を進んだザズーが内埒沿いに追い上げ、結局本命に1馬身4分の1差を付けて見事に差し切ってしまいました。アメリカ競馬では珍しい展開。

勝利騎手ジョエル・ロザリオ、勝利調教師ジョン・W・サドラーは、共にサンタ・モニカに続くGⅠ制覇で、新年に入っていきなりGⅠ連覇と幸先の良いスタートです。
芦毛馬のザズーは、これで6戦2勝。これまでタービュレント・デサントとは二度対戦していずれも負けていましたから、雪辱を果たしたことになります。一方負けたタービュレント・デサントは、ダートコースの適性よりも8週間振りの競馬に敗因を求めた方が良さそう。
去年このレースに勝ったブラインド・ラック Blind Luck はケンタッキー・オークスの勝馬になりましたから、ザズーも同じ路線を歩むでしょう。
ところでザズーのもう一つの注目点は、オーナーがあの名牝ゼニヤッタ Zenyatta と同じモス夫妻(ジェリーとアン)であること。モス夫妻としては、引退したゼニヤッタの後継馬として期待に胸が膨らむ思いでしょうね。

ガルフストリーム・パーク・ターフ・ハンデキャップはレース名の通り芝コースのGⅠ戦で、4歳上、9ハロンのレースです。9ハロンになったのは2009年からで、それまでは長く2200メートルで行われていました。
今年は大荒れ、優勝は25対1のティークス・ノース Teaks North 。ここ3戦は全てダートコース、これまでGレースの勝鞍が無かったのですから当然でしょう。
8頭立て。ホセ・ヴァルディヴィア騎乗のティークス・ノースは6番手を進む展開で、直線だけで大外から追い込み、ゴール寸前ハナ差抜け出しての優勝でした。
勝利調教師はフスティン・サラスト、同馬はこれで12戦5勝となります。

最後のドン・ハンデキャップは、4歳上の9ハロン戦。メインコースの一戦で、同じ日のターフ・ハンデとは同距離で一組となる趣向でしょうか。1959年創設の伝統あるハンデ戦です。
今年の勝馬はジャイアント・オーク Giant Oak 。これもターフと同様8頭立て、後方から進んでの差し切り勝(2馬身差)。人気薄だったことも共通しています。
ジャイアント・オークは2009年にアーリントン・クラシックに勝った後14連敗。漸く去年の11月にクラーク・ハンデ(GⅠ)を繰上りで勝って連敗を脱したところでした。記録上はGⅠ連勝。
同馬はこれで24戦5勝、ブリーダーズ・カップ・マラソン4着という実績もあります。年齢を加えて良くなるジャイアンツ・コーズウェイ Giant’s Causeway の産駒だけに、まだまだ成長する可能性を秘めた馬だと申せましょう。

今回はドン・ハンデキャップについて少し掘り下げてみましょうか。
先に書いたように、このレースの創設は1959年。アメリカにグレード競走システムが導入されたのは1973年のことで、その時の格付けはGⅢでした。それが2年後の1975年にGⅡに、更に1987年からは最高格のGⅠにアップして今日に至っています。
現在では3月に行われるドバイ・ワールド・カップのトライアルとしての位置付けも加わり、実際に2007年にドン・ハンデに勝ったアルゼンチンの強豪インヴァソール Invasor がドバイのビッグレースを制しました。

レース名の「ドン Donn 」は、かつてガルフストリーム・パーク競馬場の持ち主でもあり、同競馬場に多大な貢献を残したドン・ファミリーを記念して名付けられたもの。
今年の勝馬ジャイアント・オークも、歴史あるドン・ハンデの勝馬としてドバイを目指すことになるでしょう。

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