アーヴル・ド・グラース、牡馬を一蹴

土曜日のアメリカ競馬はハリケーン明け、延期されたG戦2鞍も含め、4場7鞍の大賑わいとなりました。サラトガは奇しくもGⅠ戦3連発の豪華版です。

先ずアーリントン・パーク競馬場のワシントン・パーク・ハンデキャップ Washington Park H (GⅢ、3歳上、9ハロン)。1926年に、今は無いワシントン・パーク・競馬場の呼び物レースとして創設、1958年以降は現在のアーリントン・パーク競馬場に移管されています。
今年の勝馬はミスター・マルティ・グラ Mister Marti Gras 。8頭立て。前半は前の馬から離されて後ろから二つ目。直線で大外を衝きあと1ハロンでも4番手。そこから急速に脚を伸ばし、逃げるワーキン・フォー・ホープス Workin for Hopes を首差捉えて優勝。3着入線のマリスター Maristar に騎乗したベアード騎手が前2頭の騎手を進路妨害で訴え、裁決の結果マリスターとワーキン・フォー・ホープの着順が入れ替わりました。優勝したミスター・マルティ・グラはG戦初勝利。
調教師はクリス・ブロック、騎手はエドゥアルド・ペレス。

続いてモンマス・パーク競馬場のサプリング・ステークス Sapling S (GⅢ、2歳、6ハロン)。1883年に創設された歴史ある一戦ですが、その後の馬券禁止や競馬場の閉鎖などを経、1946年の競馬再開と共に復活した一戦。
今年の勝馬はシー・ディグズ・ミー She Digs Me 。10頭立て。前半は7番手。直線入口で4頭の外から追い上げ、2着以下に6馬身半差を付ける圧勝。2着はジャガティ Jagati とブラック・ライノ Black Rhino が同着でした。これで5戦3勝、G戦は初勝利です。
調教師はスティーヴン・アスムッセン、騎手はエルヴィス・トラジロー。

ところでこの日、モンマス・パーク競馬場ではハリケーンで順延になったモーリー・ピッチャー・ステークス Molly Pitcher S (GⅡ、3歳上牝、8.5ハロン)も行われました。1946年創設。1951年に、全米で最初にカラーでテレビ中継されたレースとしても知られている由。レース名に冠されたモーリー・ピッチャーとは、アメリカ独立戦争で「モンマスの戦い」で奮戦した伝説の女性の名前。モンマス競馬場で行われる牝馬の大レースの名として採用されたものです。
今年の勝馬はクワイエット・ジャイアント Quiet Giant 。8頭立て。前半は控えて2番手、3コーナー手前でスパートし、2着ペイトン・ドーロ Payton d’Oro に5馬身差を付ける完勝。7月末のレディーズ・シークレットに続く圧勝で、モンマス競馬場は2戦2勝。
調教師はトッド・プレッチャー、騎手はジュリアン・ルパルー。

そしてサラトガ競馬場で最初に行われたのは、28日に予定されていながらハリケーンで順延となったパーソナル・エンサイン・ステークス Personal Ensign S (GⅠ、3歳上牝、10ハロン)。1948年に競馬殿堂入りした名牝フィレンツェ Firenze の名を冠してフィレンツェ・ハンデ Firenze H として創設。1986年から1996年まではジョン・A.モリス・ハンデ John A. Morris H として行われてきましたが、1998年に現在のレース名に再度変更されました。現レース名は、競走馬としても繁殖牝馬としても成功した名牝の名前に因んだもの。
今年の勝馬はアスク・ザ・ムーン Ask the Moon 。6頭立て。終始先手を奪っての逃げ切り勝ち。直線中程で外に寄れましたが、それでも2着パチャタック Pachattack に2馬身4分の3差。ラフィアン・ハンデに続き、今夏のサラトガでGⅠ2連勝となります。前走より距離が1ハロン伸びる不安もありましたが、何とかクリアーした形。
調教師はマーチン・ウルフソン、騎手はハヴィエル・カステラノ。

土曜日のサラトガはGⅠ3連発、その第2弾フォアゴ・ステークス Forego S (GⅠ、3歳上、7ハロン)。1980年に創設された当時はベルモント競馬場で開催。1984年からサラトガに移管され、現在はブリーダーズ・カップのスプリントやマイルに向かう馬のステップレースとしての意味合いがあります。レース名のフォアゴは、セクレタリアート Secretariat と同期で、1974年から1976年までの3年連続で年度代表馬に選ばれた快速せん馬の名前に因んだもの。
今年の勝馬はジャクソン・ベンド Jackson Bend 。9頭立て。快速馬が揃ってハイペース、前半7番手に控え、直線ではコース中程を通って馬群を縫うように進出、2着ジャージー・タウン Jersey Town に3馬身4分の1差を付けて快勝。ここサラトガでノン・グレードのステークスに勝ち、照準をピタリと合わせてきた調整の勝利でしょう。
調教師はニコラス・ジート、騎手はコーリー・ナカタニ。

そしてメインのウッドワード・ステークス Woodward S (GⅠ、3歳上、9ハロン)。1954年に、当時の大オーナー、ジョージ・ニコラス・ウッドワード氏に因んで創設されたレース。後には元ジョッキー・クラブ会長ウィリアム・ウッドワードを記念したレースともなりました。ハンデキャップ戦として開催されていた時期もありますが、現在は馬齢重量で行われるGⅠ中のGⅠ戦。ベルモントやアケダクトで行われるのが常でしたが、2006年以降は現在のサラトガが舞台になっています。過去に前述フォアゴが4連覇を達成したこともあり、2009年にはレーチェル・アレキサンドラ Rachel Alexandra が史上初めて牝馬での優勝を果たしたレースとしても知られる一戦。
今年の勝馬は牝馬のアーヴル・ド・グラース Havre de Grace 。8頭立て。前半は3~4番手。3コーナーから徐々に進出し、直線では逃げたルール Rule を競り落とし、追い込むフラット・アウト Flat Out を1馬身4分の1差抑えて優勝。これで3年連続年度代表馬に牝馬が選ばれる可能性が出てきました。(2009年レーチェル・アレキサンドラ Rachel Alexandra 、2010年ゼニヤッタ Zenyatta)
ウッドワードを牝馬が制したのは、58年の歴史の中で2009年のレーチェル・アレキサンドラに続いて二度目の快挙。アーヴル・ド・グラースの父セント・ライアム Saint Liam もウッドワードの勝馬(2005年)です。初めての牡馬との対戦を制したアーヴル・ド・グラース、ブリーダーズ・カップではレディーズ・クラシックを選ぶか、クラシックで再び牡馬との対決を選択するかに注目が集まっています。
調教師はラリー・ジョーンズ、騎手はラモン・ロドリゲス。

最後にデル・マー競馬場のデル・マー・デビュタント・ステークス Del Mar Debutante S (GⅠ、2歳牝、7ハロン)。1951年に創設され、GⅠに格上げされたのは1996年から。時期的にみて、ブリーダーズ・カップ・ジュヴェナイル・フィリーズへの重要なステップ。
今年の勝馬はウィーミスフランキー Weemissfrankie 。10頭立て。前半6番手、直線では大外を通っての鮮やかな差し切り勝ち。1馬身4分の1差2着にも最後方からセルフ・プリザヴェーション Self Preservation (アイルランドから移籍してきたばかりの馬)が追い込みました。未だ2戦目の牝馬で、馬名はかつてオーナー・グループの一人だったハリウッド俳優の故フランク・アレーシア Frank Alesia に因むものだとか。
調教師ピーター・ユールトンは、これがG戦初優勝。騎手ラファエル・ベジャラノは、デビュタント初勝利。

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