アメリカ、芝コースの激戦
今週のアメリカは変則開催です。というのも5月最終月曜日がメモリアル・デイの休日に当たっているからで、本来なら土・日に行われるGレースが月曜日に集中しています。今週のG戦は土曜日と月曜日。
ということで、先ず昨日の土曜日に行われた4場の4レースをレポートしましょう。いつもとは違って芝コースが主役、ダートコースがメインのアメリカらしい裏メニューと言えなくもありません。
先ずアーリントン・パーク競馬場のアーリントン・メイトロン・ステークス Arlington Matron S (GⅢ、3歳上牝、9ハロン)から。レース名に「メイトロン」とあるように、牝馬のレース。1930年創設の長い歴史を持つ一戦です。
今年の勝馬はパチャタック Pachattack 。9頭立て。最初は5番手に付けていましたが、向正面で一気に加速して先頭に立ち、直線では他馬を引き離す一方、2着ラ・グラン・バイラドラ La Gran Bailadora に6馬身差を付ける圧勝です。去年はイギリスでリステッド戦に2勝した馬で、今年5月初めにもニューマーケットのダーリア・ステークス(GⅢ)に出走したばかり。去年の11月にカナダでも勝った馬で、英米を股にかけるタフな牝馬です。
調教師も英米を股にかけるジェラード・バトラー、騎手は落馬負傷したアルヴァーロに急遽乗り替わったフローレント・ジェルー。
ベルモント・パーク競馬場はシープスヘッド・ベイ・ハンデキャップ Sheepshead Bay H (芝GⅡ、3歳上牝、11ハロン)。レース名のシープスヘッド・ベイ(羊の頭海岸)はブルックリンの海岸ですが、昔はここに競馬場があったそうです。1959年創設、様々に条件も施行競馬場も変更され、以前は牡馬にも出走権がありましたが、現在は古馬牝馬による芝のレース。
今年の勝馬はヒバーイェブ Hibaayeb 。これまたヨーロッパのファンにはお馴染みの馬でした。6頭立て。見るからにスローの流れ、終始内々の3~4番手に待機し、直線では最内から瞬発力を活かして一気に抜け、2着に追い込むジャイアンツ・プレイ Giant’s Play に1馬身差。GⅠ馬の貫録を見せ付けました。アスコットのフィリーズ・マイル、ロイヤル・アスコットのリブルスデール・ステークス、サンタ・アニタのイエロー・リボン・ステークスに続いてのビッグ・タイトルです。
調教師はこれまたニューマーケットを本拠地にするサイード・ビン・スロール、騎手はジョン・ヴェラスケス。
続いてチャーチル・ダウンズ競馬場のルイヴィル・ハンデキャップ Louisville H (芝G3、3歳上、12ハロン)。1895年創設のアメリカでも最も歴史あるレースの一つで、2006年から現在の1マイル半で行われています。ルイヴィルは、もちろんケンタッキー州の都市名で、チャーチル・ダウンズ競馬場の本拠地。
今年の勝馬はキルターナ Keertana 。7頭立て。最後は3頭がほぼ同時にゴールインする大接戦。写真判定の結果、キルターナがベアパス Bearpath にハナ差で優勝、3着ガイズ・リワード Guys Reward もハナ差でした。キルターナは5歳牝馬で、牡馬に競り勝っての優勝、最内を衝いたジョッキーの判断も見事でした。今シーズン既に3つ目のG戦勝利、通算では26戦11勝となります。ルイヴィル・ハンデ74年の歴史の中で、牝馬の優勝は初めてという快挙でした。ブリーダーズ・カップ・芝牝馬の有力候補誕生。
調教師はトーマス・プロクター、騎手はホセ・レズカノ。
最後にハリウッド・パーク競馬場のアメリカン・ハンデキャップ American H (芝GⅡ、3歳上、8ハロン)。1938年創設の芝戦。6月の独立記念日に行われる慣例でしたが、今年は1か月早いスケジュールになっています。
今年の勝馬はライヒル・ドリーマー Ryehill Dreamer 。6頭立て。縦長の展開になりましたが、3番手に付けていたライヒル・ドリーマーが直線で猛烈に追い上げ、最後の一歩で終始先頭を走ったシドニーズ・キャンディー Sydney’s Candy をハナ差捉えて優勝。2歳時にはアイルランドでリステッド戦に勝っていた同馬、これがアメリカでのステークス初勝利です。2着は去年のサンタ・アニタ・ダービー馬、久々に芝コースに戻るということで1番人気を背負っていましたが、最後の逆転で8対1のサプライズとなりました。
同馬を管理するジュリオ・カナーニ師は、2004年のベイヤーモ Bayamo に続きアメリカン・ハンデ2勝目。ジョセフ・タラモ騎手は、同馬には初騎乗でした。
ところでこの日、アーリントン・パーク競馬場では伝統のアーリントン・クラシック Arlington Classic (芝、3歳、8.5ハロン)も行われています。かつてはアメリカでも最も重要な3歳戦でしたが、現在はGから格下げされているのは寂しい限り。出走馬のレヴェルや賞金などの関係からでしょう。盛時にはアメリカン・ダービー、セクレタリアト・ステークスと並んで中部アメリカ三冠と称されていたほど。Gから降格したのは2007年からのようです。
ということで、今年の勝馬はウィルコックス・イン Willcox Inn 。9頭立て。レース前はケンタッキー・ダービー馬アニマル・キングダム Animal Kingdom を破ったことのある馬という程度の知名度しかありませんでしたが、これで堂々とアーリントン・クラシックの勝馬と名乗れる存在になりました。3対2の1番人気、2番手から危なげ無く抜け出し、2着に2馬身半差を付ける横綱相撲で芝コースの新しいスター誕生を印象付けています。
調教師はマイケル・シュティドハム、騎手はロビー・アルバラード。
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