今日の1枚(163)

BMGジャパンが日本の技術「K2レーザーカッティング」を用いてリマスタリングした「トスカニーニ・ベスト・セレクション」。第1回発売分も後半戦に入ります。
第19集の BVCC-9929 はフランスの交響曲2曲を収録したアルバム。

①サン=サーンス/交響曲第3番
②フランク/交響曲ニ短調

当盤に記載されたデータは、

①1952年11月15日 NBC放送録音 カーネギーホール、及び1952年11月14日 カーネギーホールにおけるリハーサル

1940年12月14日及び1946年3月24日 NBC放送録音 NBC8-Hスタジオ

また①の独奏者として、ジョージ・クック George Cook (オルガン)、ジョセフ・カーン Joseph Kahn (ピアノ)が挙げられています。

共にトスカニーニとしては珍しいレパートリーに属すると思いますが、どちらも聴衆を入れた放送用コンサートのライヴ収録。②の最後には拍手も入っていますが、①では拍手はカットされています。

①はヴィクターから LM 1874 として発売されたLP盤が初出。WERMにも1952年11月の放送用演奏と記載されています。
ただ疑問なのはソリストの名前。WERMにはオルガニストのみ記載があって、“G.Crook, org” となっています。クックでなくクルック。
両者をネット検索したところ、George Crook は確かにオルガニストとして登録されていますが、George Cook なる人物は今一つハッキリしません。海外の同曲演奏のデータとして Cook が採用されているものがあるのも事実。

ここからは私の想像ですが、これはWERMが正しいのでしょう。当日本盤の表記も、何処かで犯された誤りをそのまま引き継いだだけ。例によって解説は一切ありませんが、本気でブックレットを準備すれば、このような誤植は防げた筈です。

もう一人のピアニスト。これはオルガン奏者以上にデータが不足しています。そもそもこの交響曲の最後の楽章では、ピアノは四手。確かにこれに先立ってピアノ・ソロも出ますが、ピアニスト一人の名前しか挙げないというのも不自然な気がします。
それともトスカニーニは四手を二手に変更して演奏しているということか・・・。どうもそのようには聴こえませんが。

②は最初にも書いた通り拍手入り。データを見ると二度の演奏を合成したようで、明らかに別時期の録音と思われる個所も聴き取れます。
ただし録音そのものは古く、①に比べると聴き劣りするのは止むを得ないでしょう。
録音時期はSP期に属しますが、WERMには発売記録がありません。トスカニーニの死後、遺作として発掘された録音と思われます。そもそもヴィクターにはモントゥーの名演もありましたし、その後はミュンシュも録音していました。わざわざトスカニーニの古い録音を出す必要は無かったのかも知れません。

第3楽章で第2楽章のテーマが高らかに復帰するところ、299小節の3拍目のトランペットをメロディー・ラインに合わせて加筆する習慣がありますが、トスカニーニはオリジナル通りで加筆はありません。

その代りと言うのも妙ですが第1楽章再現部、456~458のコントラバスをアルコ(弓奏)でなくピチカートに変えています。これは提示部の同個所(166~168)と整合させるためで、注意して聴かれることをお勧めします。

参照楽譜
①デュラン A.D.& F. 6839
②ペータース Nr.629

Pocket
LINEで送る

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください