ボローメオ・ストリング・クァルテット

昨日は晴海のクァルテット・ウェンズディに行ってきました。今年最後の演目です。
シリーズ第52回目となるこの日は、シェーンベルク・プロジェクトの3回目でもあります。
演奏は、このシリーズでもお馴染み、毎シーズン登場しているボローメオ・ストリング・クァルテットです。
曲目は3曲、ゴリホフの「テネブレ」、シェーンベルクの弦楽四重奏曲第4番、休憩後はベートーヴェンの最後のクァルテット、弦楽四重奏曲第16番作品135というもの。

このクァルテットは最近メンバーの移動があったようです。第2ヴァイオリンが、これまでのウィリアム・フェドケンフォイアーに替わって今回からクリストファー・タン。名前と容姿から判断して、どうも東洋系のようですね。

最初のゴリホフについては、名前の読み方に問題があります。CD業界では専ら「ゴリジョフ」で通しているようですが・・・。
Osvaldo Golijov。アルゼンチン生まれだそうですから、スペイン語読みでしょう。明らかにゴリジョフは誤り、第一生命ホールの表記、ゴリホフが正解。
スペインの舞曲に Jota というのがありますが、これはジョタではなくホタ。スペインの指揮者 Enrique Jorda もエンリケ・ジョルダではなくエンリケ・ホルダですね。
こういうことをキチンとしないからCD業界は廃れていくのでしょう。

今回のプログラムノートは第1ヴァイオリンのニコラス・キッチンが書き下ろしたものですが、それによるとキッチンとゴリホフはカーチス音楽院の同級だったとか。ゴリホフを紹介するには最適の団体と言えるでしょう。
「テネブレ」は本来2002年にソプラノ、クラリネットと弦楽四重奏のために書かれた作品ですが、クロノス・クァルテットのために弦楽四重奏用に書きなおされたようです。
作品は1714年にフランソワ・クープランが作曲した「ルソン・ド・テネブレ」の対位法を引用しております。
演奏に10数分かかるもので、前後にクープランを思い起こさせる古雅な音楽が置かれ、真ん中は弦の細かい音を弾き交わす緊張した響きに支配されます。
何でも第2ヴァイオリンの一番低い弦をトからホに下げる調弦を施しているそうで、古雅な響きはその辺に由来するのかもしれません。

シェーンベルクの最後の弦楽四重奏曲は、作曲から70年を経過した現代でも難しく、かつ驚きに満ちた作品ですね。私は初めて聴きました。レコードなどでも聴いた覚えがないし、楽譜も持っていませんので、詳しいことは判りません。
判りませんが、これは名演でしたね。とにかく4本の弦が一つの音色に統一され、鋼のような強さと光沢を持って迫っててくる様には圧倒されました。

私は2階の最奥で聴いていたのですが、第1楽章最後の和音が鳴り渡ったとき、余韻が「わぁ~ん」とホール全体に立ち昇ったあと、もう一つの波が会場の空気を揺るがせました。つまり音響が渦を巻いていたのだと思います。こんな体験は初めてです。
第3楽章も凄かった。4本のユニゾンで開始される厳しい独白。音楽はどこまでも暗いのですが、グイグイと魂を鷲掴みにしていきます。
とりあえずシェーンベルクを紹介してみました、というような生易しい演奏ではないことが素人の私にもハッキリ認識できました。楽譜の読み込み、技術の磨き込みも並大抵のものではありません。それにしてもシェーンベルク、凄い作曲家ですね。今日の演奏で改めて20世紀最大の作曲家の一人であると確信しました。

最後のベートーヴェン。これもまた壮絶な名演です。前日もベートーヴェンの最後の交響曲を堪能したのですが、きょうはまた最後の弦楽四重奏曲に圧倒されましたね。
ボローメオの演奏姿勢はシェーンベルクと同じです。速目のテンポながら歌うべきは歌い、聴き手を音楽に没頭させます。
知らず知らずの内に体が前のめりになっていき、最後では前の椅子の背に被さるようにして聴いていました。

アンコールに同じくベートーヴェン、ラズモフスキー第2のフィナーレが演奏されましたが、これまた度肝を抜くようなスピードと完璧なテクニックで弾き切りました。チョッとやり過ぎじゃないかと思うほど。
もしナマの音楽を始めて体験したのがこのコンサートだったとしたら、その人は間違いなく弦楽四重奏に嵌りますね。
クァルテットというジャンルの素晴らしさ、シェーンベルクとベートーヴェンという巨大な作曲家。脱帽です。

最後に客席の入り。ガッカリするほど少ないですねぇ。皆何を聴きに行っているのでしょう。
ボローメオは、例えばハーゲン・クァルテットなどと同等、世界のトップ・クラスですよ。これを3000円チョッとで聴けるなんて、それこそドロボーです。
彼らはレコーディングなどせず、その時間をアウトリーチ活動に全力投球しています。来日の度に学校を回ったり、アマチュアオケの指導に走り回っています。今回も同じ。
レコードコマーシャリズムと無縁なので、マスコミも取り上げない。しかし実力は世界最高峰。

諸君、ジャーナリズムの言う事に振り回されてはいけませんぞ。このクァルテットを聴け。そして自分の耳で確かめよ。
そう忠告したい。

 

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1件の返信

  1. 音吉 より:

    こんにちは。必要に迫られ、久しぶりに御サイトを紐解きました。かつては日々の楽しみにオンタイムなものだけを読ませて頂いていましたが、今回は、折角のアーカイブ、最初から読んでみようと思い立ちました。日々の楽しみはそのままで、毎日一項づつですが、、💦💦
    そうしましたら、一項目から内容に感動いたしました。
    ボローメオ、凄そうですね!機会があれば是非にもと思いました。そんなカルテットがいるのかと、知ることが出来、本当に良かったと思いました。
    これからも競馬以外ばかりで心苦しいですが、楽しみにしております。失礼いたします。

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