日本フィル・第265回横浜定期演奏会

昨日の土曜日、日本フィルの横浜定期を聴いてきました。会場は横浜みなとみらいホールですが、このところこのホールでは東京のオーケストラのコンサートが増えてきたようです。
正直に言えば私はこのホールの音響は必ずしも好きになれないのですが、拙宅からはアクセスも良く、少なくとも二通りの経路で通うことが出来ます。どちらにしても30分ちょっとで行けるのですから、週末を楽しまない手はないでしょう。

日本フィルの横浜定期はかなり歴史がありますが、最近は読売日響もホールと共催で行う定期が定着、東京の会との振替も利くようです。更に噂によれば、あのN響も横浜定期を開始するのだとか。横浜も中々の激戦区になってきましたな。

というわけでもないでしょうが、今月スタートの日フィル横浜は食欲をそそるプログラムが並びます。これまでは1回券で摘み喰いしていましたが、4回以上聴くなら会員になった方が得。損得勘定で半期の定期会員になってしまいました。
その第1回はどうしても聴きたい選曲。マエストロ大友の英国音楽は必聴でしょう。

ヴォーン=ウィリアムス/交響曲第2番ト長調「ロンドン交響曲」
     ~休憩~
エルガー/チェロ協奏曲
エルガー/行進曲「威風堂々」第1番ニ長調
 指揮/大友直人
 チェロ/菊地知也
 コンサートマスター/扇谷泰朋

大友直人と言えば東響の指揮者と思っているファンが多いと思いますが、彼は実は日本フィルから巣立った指揮者。確か初代の日本フィル正指揮者だったはずです。私は最初から日フィルの指揮者だと考えていましたし、彼の誠実で飾り気のない音楽性は日本フィルに最も適していると感じます。
この日のヴォーン=ウィリアムスとエルガーも、正にマエストロの「音楽」をたっぷり満喫するコンサートになりました。

前半のヴォーン=ウィリアムスは、東京でも珍しい演目。ましてや横浜では千載一遇の機会かも知れませんね。私もこれまでナマでは一度しか接したことが無く、改めてヴォーン=ウィリアムス独特の美しさ、悲しさを味わいました。
ビッグベンの鐘の断片が曲頭と終結に置かれ、作品はロンドンの、あるいはロンドンっ子の心情などを描いていきます。
しかしこれは表題音楽ではなく、あくまでも絶対音楽として聴くのが筋。冒頭の上昇音型が終楽章にも登場し、一種の循環形式として味わっても立派に聴き応えするシンフォニーだと感じました。
これも作品を妙にいじらず、ストレートに演奏するマエストロの姿勢あってのことでしょう。

なおこの作品は編成を減らして演奏することも可能ですが、大友はスコアの指示通りの編成で演奏していました。
第3楽章でヴィオラ・ソロが「niente」に収斂する最後、全体のフィナーレでこれまた「niente」に消え入る響きが特に印象に残ります。正に落日の美しさ、か。

続くエルガーの協奏曲は、日本フィルのソロ・チェロを務める菊地知也の独奏。いつもは指揮者の最前列で全体を纏める菊地が、楽員の暖かいサポートで見事なソロを聴かせます。

エルガーの協奏作品では最も良く聴かれる曲ですが、冒頭の nobilimente の気品といい、第3楽章の秘めたる情熱といい、大友/菊地の音楽性には最適の一品です。

演奏が終わって満場の拍手。中で、マエストロとこの日のチェロ・トップ(山田智樹)が何やら相談しています。
カーテンコールに応えてソリストが登場した時、マエストロが拍手を遮って、“今日は菊地さんのお誕生日なのです” 。すかさずチェロ軍団が「Happy birthday to you」の合奏。楽団からプレゼントも贈られました。
もちろん菊地はオケの仲間ですが、日本フィルの良さは、こうしたアットホームで温かい雰囲気が感じられること。横浜では特にこの傾向が強いようです。
こうした暖かい雰囲気は他の在京オケにはほとんど見られないもので、その意味でも日本フィルは最もヨーロッパ的特性を持ったオーケストラであることが判ります。

最後は有名な「威風堂々」。
この日の曲目は、全てが一部の楽器を省略しても良いように書かれている点で共通しています。既に書いたようにヴォーン=ウィリアムス同様、大友はチェロ協奏曲(ピッコロとチューバ)でもスコア通りの編成を取り、最後の行進曲でも楽器の省略はありませんでした。
それはピッコロを2本使うことで、この煌めくような音色が実に効果を上げていましたね。

横浜定期ではアンコールも楽しみの一つ。
今日は定番「愛の挨拶」かな、それともオルガンも加わった威風堂々の最後をもう一丁かな、と思っていましたが、流石マエストロ、しっとりとヴォーン=ウィリアムスのグリーンスリーヴスによる幻想曲。

有名な民謡をアレンジした作品で、本来は歌劇「恋するジョン」(シェークスピアのウインザーの陽気な女房に基づくオペラ)に挿入された音楽ですが、演奏会用にアレンジしたバージョンです。
ところで今日のフルートは誰だろう? ゲスト・プレーヤーだと思いますが、暗めの音色が英国音楽には良くマッチしていました。

横浜では嬉しい英国音楽の一夜、桜木町までの帰路は、いつもよりゆったりと時間が流れていたみたい・・・。

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2件のフィードバック

  1. より:

    フルートのトップは遠藤さん(ひさしぶり)じゃなかったでしょうか。
    二番の女性はトラだったかと思います…。

  2. メリーウイロウ より:

    宏さん
    舞台から遠い席だったのでハッキリしませんが・・・。
    最初は私も遠藤氏かと思いましたが、氏は威風堂々では2番ピッコロを吹いていたように見えました。
    後日某団員氏と会うことになっていますから、その時に確認してみますね。

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