日本フィル・第282回横浜定期演奏会

競馬のレポートが忙しく、中々昨日の演奏会の感想に辿り着きません。一段と寒さを増した文化の日の休日、横浜のみなとみらいホールに出掛けました。
曲目も演奏者も改めて内容に触れるまでも無いもの。簡単な感想に留めましょう。

ベートーヴェン/ヴァイオリン協奏曲
     ~休憩~
チャイコフスキー/交響曲第5番
 指揮/小林研一郎
 ヴァイオリン/前橋汀子
 コンサートマスター/扇谷泰朋
 フォアシュピーラー/九鬼明子
 ソロ・チェロ/菊地知也

ヴァイオリンの前橋氏をナマで聴く機会は、正直な所余りありません。今回は横浜定期ということで、久し振りに聴いてきました。

大御所の共演とあって客席は一杯の聴き手。当日券は完売したそうです。
その熱気に応えるように、グァルネリ・デル・ジュスを紡ぐ前橋のベートーヴェンは一家言あるもの。最近の若手の演奏スタイルとは違い、一音一音を噛み砕くように、譬えは不適切かもしれませんが、ゴツゴツと弾いていくのでした。

若い聴き手にはどう聴こえるか判りませんが、小生のようなロートル・ファンにはこれぞヴァイオリン、これこそがベートーヴェンであって、往年のLP盤を引き合いに出せば、あのヨゼフ・シゲティを連想させるヴァイオリン。
恐らく彼女の性格、これまで積み重ねてきた音楽への姿勢がそうさせるのでしょう。現代風なサラッとした聴き味とは好対照をなすもの。指揮のコバケンと相俟って、正に文化の日に相応しい、叙勲に値するベートーヴェン演奏と言えましょう。今や貴重な音楽時間を満喫。

アンコールに弾かれたバッハのサラバンド(無伴奏第2パルティータ)も然り、いやそれ以上と言いましょうか。懐かしいバッハの世界にタイムスリップさせて貰いました。

後半のチャイコフスキーも、基本的には同質の演奏。例によってコバケン独特の伸び縮みに富んだチャイコフスキーですが、久し振りに聴いたこともあり、以前より濃度が濃くなったような印象。
音楽はもがき苦しみ、底なしの悲しみから生まれるもの、と小林研一郎が語っているようなチャイコフスキーです。いや彼に掛かればチャイコフスキーだってベートーヴェンだって、もちろんブラームスもブルックナーも修行僧のような形相に変わっていくのでした。

例によってスピーチがあり、横浜を卒業するチェロの大石修氏に花束贈呈。続けてアンコールにドヴォルザークの「ユーモレスク」が弦楽合奏で演奏されました。(誰のアレンジでしょうか)
マエストロのユーモレスクは「ユーモア」からは程遠く、「You漏れす苦」。“マエストロ、もう止めて下さい”と思わず漏らしてしまうほど悲愴な表現。ピアノ原曲の3倍は時間のかかるアンコールでした。

読まれた方は否定的な感想と捉えられるかもしれませんが、私としては一杯の尊敬を籠めてご両人の音楽を讃えているのです。こんな芸術家は、今や日本にしか存在しないでしょう。

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