サンタ・アニタのGⅠ三連発
3月第1週のアメリカ、Gレースは土曜日のみです。それでもこの土曜日はサンタ・アニタ競馬場でGⅠ戦が3鞍。愈々春シーズン本格化とあって、豪華な週末となっています。
他にはフロリダのガルフストリームで1鞍、そろそろ有力馬が始動するニューヨークのアケダクト競馬場でも2鞍のグレード・レースが行われました。
先ずアケダクト競馬場はこのカテゴリー初登場ですが、アメリカ東海岸を代表するニューヨーク州にあり、ベルモント競馬場と並んでアメリカをを代表する競馬場。俗に「ビッグA」として親しまれています。開場は1894年。
ニューヨーク州のアケダクトとベルモントは、関東なら中山と府中、関西なら阪神と京都に擬えられる関係ですが、アケダクトの冬は如何にも寒く、G戦は数えるほどしかありません。しかし漸く三月に入り、これからは毎週のようにG戦が行われます。今週はその第一弾。
トム・フール・ハンデキャップ Tom Fool H は7ハロンで行われる3歳上のGⅡ戦。レース名のトム・フールは、言わずと知れたアメリカの年度代表馬になった名馬の名。ニューヨークのハンデ三冠として知られるメトロポリタン・ハンデ、サバーバン・ハンデ、ブルックリン・ハンデを制した数少ない馬の一頭です。
今年の勝馬はカリブラチョーア Calibrachoa 。6頭立て。離れた3番手を進み、2着に4馬身半差を付けて圧倒的1番人気に応えました。調教師はこのカテゴリーですっかりお馴染みになったトッド・プレッチャー、ジョッキーはラモン・ドミンゲス。
これでステークスは3連勝、勝つ度に前走を上回る快勝で、その成長ぶりを見せ付けています。次はGⅠのカーター・ハンデキャップが目標。
ガッサム・ステークス Gotham S は3歳馬による1700メートルのGⅢ戦。ニューヨーク州におけるケンタッキー・ダービーへのトライアルであるウッド・メモリアル・ステークスのステップレースとなります。レース名のガッサムは、ニューヨーク市の旧名(Gotham City)から。
今年の勝馬はステイ・サースティー Stay Thirsty 。7頭立て。2着ノーマン・アブジョーンソン Norman Asbjornson に3馬身4分の1差を付けましたが、直線の攻防で両馬が軽く接触、更に勝馬が内に切れ込んで2着馬の進路に入る場面があって審議になりました。
しかし結局は着順通り確定、ステイ・サースティーはステークス初勝利。同馬は、同厩のケンタッキーダービーの本命馬アンクル・モー Uncle Mo の陰に隠れ勝ちでしたが、調教のパートナーでもあり、厩舎の期待も並々ならぬものがあります。プレッチャー厩舎の隠し玉と言える存在でしょうか。
トッド・プレッチャー師はトム・フールに続いてGレース連勝。鞍上も同じラモン・ロドリゲスでした。
ガルフストリーム・パーク競馬場のハネー・フォックス・ステークス Honey Fox S は4歳上牝馬による1マイルの芝コースで行われるGⅢ戦。このレースの歴史などについては良く判りません。恐らく比較的新しいレースでしょう。
今年の勝馬はネヴァー・リトリート Never Retreat 。11頭立て。逃げたパースウェイディング Persuading を2番手でマークし、直線で抜け出し1馬身差の快勝。Gレース初勝利となりました。
調教師はクリス・ブロック、勝利騎手はジュリアン・ルパルー。
冒頭にも書いたように、サンタ・アニタ競馬場はGⅠレースのみ3レースという豪華版です。
その第一弾、サンタ・アニタ・オークスは文字通り3歳牝馬のための1700メートル戦。1985年まではサンタ・スザーナ・ハンデとして知られてきた一戦ですが、現在はレースの特質が判り易い名称に変更されています。
今年の勝馬はタービュレント・デサント Turbulent Descent 。僅か5頭立て。3コーナーから捲り気味に先頭に立った1番人気のタービュレント・デサントが、芦毛のザズー Zazu の追い込みを辛うじて首差抑えての優勝。前走ラス・ヴァージェネス・ステークスの雪辱を果たしました。ステークス・レコードが出る速いタイムでの決着です。
同馬は去年の暮れにGⅠ(ハリウッド・スターレット・ステークス)を制しており、前走は明らかに休養明けが敗因でした。マイク・パイプ調教師、ロメロ・フローレス騎乗。
続いてフランク・イー・キルロー・マイル Frank E. Kilroe Mile は、4歳上、1マイルの芝コースで行われるGⅠ。これも以前はアルカディア・ハンデとして知られてきたレースで、オールドファンにはピンと来ないネーミングの一つ。2001年からこの名前になったそうですが、フランク・キルローは人名でしょうか、私は知りません。
今年の勝馬はフルーク Fluke 。10頭立て。中団を進み最内から伸びた2番人気のフルークが、後ろから二つ目を進み外を回った1番人気カラコルタード Caracortado を頭差凌いでのスリリングな優勝です。
勝ったフルークはブラジル産馬、2009年のサイテーション・ハンデ以来2つ目のGⅠ制覇となります。調教師はフンベルト・アスカニオ、騎手はラファエル・ベジャラノ。
なおバックストレッチでリーヴ Lieve (これもブラジル産馬)が故障発生、安楽死処分になるというアクシデントも起きました。
最後に「Big Cap」で知られるサンタ・アニタ・ハンデキャップ Santa Anita H は、サンタ・アニタ開催のメイン・イヴェントとも言うべき4歳上の10ハロン戦。単にサンタ・アニタの大レースに止まらず、アメリカの冬競馬で最も注目される大イヴェントでもあります。
今年の勝馬はゲーム・オン・デュード Game On Dude 。11頭立て。3頭が雁行するような展開になり、外3番手に付けたゲーム・オン・デュードが直線入り口で先頭。そこから追い込んだセツコ Setsuko と、真ん中を伸びた1番人気のトゥワーリング・キャンディ Twirling Candy との一騎打ちに。
ところが真ん中のトゥワーリング・キャンディが右に左に激しくよれ脱落。最後は一旦先頭に立ったセツコを内から二の足を使って差し返したゲーム・オン・デュードがハナ差捉えたところがゴール。ラフな結末となったレースは12分もの審議に。
結局、審判の判断はトゥワーリング・キャンディが自身の問題で斜行したのが原因と認め、着順通りで決定しました。
勝馬に騎乗したシャンタル・サザーランドは、ビッグ・キャップ74年の歴史で初めての女性騎手による勝利という快挙。勝利調教師ボブ・バファートとサザーランド騎手がウイナーズサークルに現れると、観客から一斉にブーイングが起きました。14対1という大穴を演出したからでしょうか。
バファート師は去年のミスリメンバード Misremembered に続いてサンタ・アニタ・ハンデ2連覇、通算では3度目の栄冠となります。
≪今日のポイント≫
1935年創設のサンタ・アニタ・ハンデキャップ。1973年のグレード制導入以来ずっとGⅠ格を維持してきたレースですね。創設当時は賞金が10万ドルで、当時は破格の賞金額として話題になったものです。
今年は女性騎手の初制覇という大きな話題が生まれましたが、ビッグ・キャップと言えばこの馬を忘れるわけにはいかないでしょう。そう、シービスケットですねぇ~。
映画でも有名になったシービスケット Seabiscuit は、三度目の挑戦(実質は四度目ですが)で栄冠を勝ち取ったことは、私がくどくどと書くより、こちらをご覧下になった方が手っ取り早いでしょう。↓
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B7%E3%83%BC%E3%83%93%E3%82%B9%E3%82%B1%E3%83%83%E3%83%88
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