読売日響・第536回名曲シリーズ

昨日はコッソリとエヴァ・メイを聴いてきました。尤も何人かに見つかっちゃいましたけどね。最初は感想はパスする積りでしたけど、聴いてしまえば書くしかありませんな。
タイトルは読響の名曲シリーズとなっていますが、実質はイタリアの名花エヴァ・メイ Eva Mei のオペラ・コンサートです。

名曲シリーズの会員は前シーズンで辞めてしまいましたが、聴き逃せないと思ったのがこれ。定期も含めて全シーズンで最も聴きたかったのがこのコンサートでしたね。だからチケット発売当日にかぶりつき席をゲットしました。
メイ嬢、本来なら定期でも歌うはずでしたが、チューリッヒとの関係でキャンセルになったのは真に残念。これと予定だったモーツァルトを合わせれば、ほぼメイの全てを満喫できたでしょうに・・・。

私がエヴァ・メイを知ったのは、そのチューリッヒでのフィガロ(伯爵夫人、アーノンクールの指揮)で、確か1996年の公演でした。もちろん藤原歌劇団の「椿姫」(2005年、広上淳一指揮)も観ましたし、彼女の素晴らしさに打ちのめされたものです。

≪エヴァ・メイ=オペラ・アリアの夕べ≫
ヴェルディ/歌劇「シチリア島の夕べの祈り」序曲
ドニゼッティ/歌劇「ドン・パスクワーレ」~“その眼差しの魔力を”
ロッシーニ/歌劇「なりゆき泥棒」~“そのときが近づく”
ヴェルディ/歌劇「椿姫」第3幕への前奏曲
ヴェルディ/歌劇「椿姫」~“不思議だわ、ああ、そは彼の人か・・・花から花へ”
     ~休憩~
ロッシーニ/歌劇「ウイリアム・テル」序曲
ロッシーニ/歌劇「ウイリアム・テル」~“暗い森”
ロッシーニ/歌劇「結婚手形」~“この喜びを聞いて下さい”
ドニゼッティ/歌劇「連隊の娘」序曲
ドニゼッティ/歌劇「連隊の娘」~“高い身分と豪勢な暮らし・・・フランス万歳”
 指揮/ジェラール・コルステン
 ソプラノ/エヴァ・メイ
 コンサートマスター/小森谷巧
 フォアシュピーラー/鈴木理恵子

こういうコンサートは、一々細かいことを詮索する必要はありません。ただエヴァ・メイの見事な歌唱に酔えばよろしい。

先ずステージに出る姿が美しいの一言。背筋がピンと伸びていて、彼女がこれから披露する歌唱がどんなものか容易に想像が付くじゃありませんか。
完璧なベル・カント唱法、抜群な安定感、役柄を弁えた所作、絶妙な声量コントロール、聴衆を楽しませるサービス精神、どれを取っても超一流であり、現代最高のソプラノと激賞しても過言じゃないでしょう。One of the じゃなくて、The Best ですよ。
どんなにオーケストラの音量が大きくても歌詞が明瞭に聴き取れること。決して叫ばず、高音から低音まで均質な声で「歌う」。これができる人は、世界広しと雖も何人もいるものじゃありません。

「ウイリアム・テル」と「連隊の娘」はフランス語。ですから「ぎょーむ・てる」であり、「ふぃーゆ・ど・れじもん」。そういう歌になっている所が凄い!!

選ばれた作品は、全て彼女の最も得意とする、彼女の声質と音楽性に最高にフィットした作品ばかり。所謂ベル・カント芸術の極地です。

前半と後半で衣裳を変える心遣い、最後の「連隊の娘」ではズボン役に変身するなど、エンターテインメントもパーフェクトでした。

アンコールは3曲もあって、
プッチーニ/歌劇「ジャンニ・スキッキ」~“私のいとしいお父さん”
プッチーニ/歌劇「ラ・ボエーム」~ムゼッタのワルツ“私が町を歩くとき”
ヴェルディ/歌劇「椿姫」~“さようなら過ぎ去った日よ”

どれも出だしだけで何の曲か直ぐ判るほどの名曲ですが、どれも鳥肌モノでしたね。
プッチーニを歌ったのは意外でしたが、ラ・ボエームはミミじゃなくてムゼッタであるところが如何にもメイじゃありませんか。

完全に脱帽です。ブラァヴァの一言。

おっと、オケのこと。最初のヴェルディはやや音楽が硬い感じでしたが、徐々に調子を上げ、ドニゼッティの序曲では素晴らしい演奏を聴かせましたね。さすが世界に冠たる読響。

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