アメリカ競馬 3月第4週

先週末のアメリカは、フェア・グラウンズ競馬場にビッグ・レースが集中していました。即ち彼の地のダービーとオークス、加えて当競馬場最大の呼び物である古馬によるニューオーリーンズ・ハンデ。更に古馬の芝コースのGⅡ戦と。
先ず今回はフェア・グラウンズからレポートして行きましょう。

≪3月26日(土)≫

フェア・グラウンズ競馬場のニュー・オーリーンズ・ハンデキャップ New Orleans H (GⅡ、4歳上、9ハロン)。ルイジアナ州を代表する古馬のハンデ戦。創設は1924年ですが、格付けはGⅢとGⅡを行ったり来たりして今日に至っています。
今年の勝馬はミッション・インパジブル Mission Impazible 。8頭立て。去年のこの日、ここフェアー・グラウンズでルイジアナ・ダービーを制したミッション・インパジブルの復活。同馬はケンタッキーダービー9着のあと膝を故障してその後のシーズンを全休。今シーズンは復帰して二度2着の後で結果を出した形です。
調教師はトッド・プレッチャー、騎手はギャレット・ゴメス。

続いてフェア・グラウンズ・オークス Fair Grounds Oaks (GⅡ、3歳牝、8.5ハロン)。ルイジアナ・ダービーのオークス版ですが、創設は比較的新しく1966年。ダービーと違ってここからケンタッキー・オークスを制した馬はこれまで7頭。それもあってか、当初はGに格付けされていませんでしたがGⅢ、GⅡと重要度を加えている一戦です。
今年の勝馬はデイジー・ディヴァイン Daisy Devine 。9頭立て。同馬はこれで5戦3勝、ステークスは初勝利です。ケンタッキーオークスの伏兵となるか。
調教師はアンドリュー・マッキーヴァー、騎手はジェームズ・グレアム。

三つ目のメルヴィン・H.ミュニッツ・ジュニア・メモリアル・ハンデキャップ Mervin H. Muniz Jr. Memorial H (芝GⅡ、4歳上、9ハロン)。1992年創設の比較的歴史が新しいレース。最初はエクスプルーシヴ・ビッド・ハンデと呼ばれていましたが、2004年から同競馬場の参事を務めていた故人に因んで改名されたレースです。
今年の勝馬はスマート・ビッド Smart Bid 。8頭立て。2番人気の同馬が写真判定の接戦をハナ差で制しました。Gレースは初勝利。
調教師はグレアム・モーション、騎手はエドガー・プラード。

この日のメインとなるルイジアナ・ダービー Louisiana Derby (GⅡ、3歳、9ハロン)。言うまでもなくケンタッキー・ダービーを目指すルイジアナ州のチャンピオンを選出する一戦。歴史は古く1898年創設で、過去にここからケンタッキー・ダービーを制覇したのは1924年のブラック・ゴールド Black Gold と1996年のグラインドストーン Grindstone を数えるのみですが、1988年の勝馬リズン・スター Risen Star は、プリークネスとベルモントを制して2冠馬になりました。
今年の勝馬はパンツ・オン・ファイア Pants On Fire 。12頭立て。トライアルとなるリズン・スター・ステークスを制したムチョ・マチョ・マン Mucho Macho Man が1番人気に支持されていましたが、16対1の伏兵パンツ・オン・ファイアが人気薄のネーロ Nehro を首差抑えて優勝、本命ムチョ・マチョ・マンは3着に終わりました。
同馬はリズン・スターではスタートに失敗して6着敗退して人気を落としていましたが、この日は本来の好スタートから2番手に付け、スピードを生かしての快勝。ステークス初勝利でケンタッキーダービーへの切符を手にしました。
調教師はケリー・ブリーン。同馬に初騎乗したアン・ロージー・ナプラヴニクは、このレース98年の歴史の中で女性騎手として初優勝。この開催のリーディングを突っ走る彼女は、この日も1日5勝の快進撃を続けています。

ガルフストリーム・パーク競馬場のパン・アメリカン・ステークス Pan American S (芝GⅢ、4歳上、12ハロン)。グレード・システムが導入された時はGⅠ戦でしたが、次第に格付けが下がり、現在はGⅢ。パンナムの凋落に呼応しているのでしょうか。
今年の勝馬はラヒーズ・アトーニー Rahy’s Attorney 。7頭立て。2番手から抜け出し、ムスカティー Musketier の追い込みを4分の3馬身抑えての優勝。同馬は最初カナダで走っていた7歳せん馬で、これで37戦13勝、Gレースは5勝目となります。前走のマック・ディアルミダでラヒーズ・アトーニーを破ったプリンス・ウィル・アイ・アム Prince Will I Am は今回は3着に敗退。
調教師はイアン・ブラック、鞍上はカナダ出身の女流騎手で、女性として史上二人目となるエクリプス賞を受賞したエマ=ジェーン・ウイルソン。

サンタ・アニタ競馬場のトーキョー・シティ・カップ Tokyu City Cup (GⅢ、4歳上、12ハロン)。サンタ・アニタ競馬場のステークスはほとんどが「サンタ」乃至「サン」の接頭語が付きますが、これは珍しい例外の一戦。実は大井競馬場との友好記念レースで、今年で16年目を迎えます。例年この日は日本の伝統文化を紹介するイヴェントも数多く開催され、特に今年は大地震の被災者への義援金運動なども予定されている由。海外の競馬界も挙げて日本へのエールを送っているのですね。
今年の勝馬はワース・リピーティング Worth Repeating 。5頭立て。これまで専ら芝コースで走っていましたが、今回はダート・コース初挑戦でステークス初勝利を手にしました。
調教師はリチャード・マンデラ、騎手はマーチン・ペドローザ。ペドローザは二つ前のレースで落馬、パナマの騎手学校での教訓を生かした勇気ある騎乗でメイン・イヴェントを勝ち取りました。

最後はターフウェイ・パーク競馬場の2鞍。この競馬場は当日記初登場のコースですね。ケンタッキー州北部、シンシナティー地区に位置する競馬場で、開場は1959年のこと。
さて、ヴィネリー・レーシング・スパイラル・ステークス Vinery Racing Spiral S (GⅢ、3歳、9ハロン)は、当競馬場のダービーに相当するレースで、1972年に創設された時は単にスパイラル・ステークスと呼ばれていました。1982年にバーボン・ウイスキーで有名なジム・ビームがスポンサーになった時にジム・ビーム・ステークスと改名。その後もスポンサーが変わる度に改名されている、ややこしい一戦です。今年からこの名前での開催。
今年の勝馬はアニマル・キングダム Animal Kingdom 。11頭立て。Gレースのデビューを見事に追い込んで制し、ケンタッキーダービー候補に顔を出してきました。
調教師はフェア・グラウンズでもメルヴィン・H.ミュニッツ・ジュニア・メモリアル・ハンデに勝ったグレアム・モーション、騎手はアラン・ガルシア。

同じくターフウェイ・パークのバーボネット・オークス Bourbonette Oaks (GⅢ、3歳牝、8ハロン)。名前の通りターフウェイ・パークのオークス版。創設は1983年。
今年の勝馬はサマー・ソワレー Summer Soiree 。10頭立て。2着以下に10馬身以上の大差を付ける逃げ切り勝ちで、ケンタッキーオークスの有力な1頭にのし上がってきた印象です。2歳時は目立たない存在でしたが、3歳になってから変身、これで2勝連続大差ぶっちぎりの圧勝で、大物感が漂います。
調教師はラリー・ジョーンズ、騎手はガブリエル・セーズ。

≪3月27日(日)≫

日曜日に行われたGレースはサンランド・パーク競馬場の一戦のみ。この競馬場も初登場です。ニューメキシコ州にある、カジノと併設されているコースで、開設は1959年のこと。長い間この地区で認可されている唯一のギャンブル・スポットでした。ベイリー、ヴァレンズエラ、アスムッセンといった数々のアメリカの名騎手がスタートを切った競馬場としても重要な場所ですね。
ということで、同競馬場のサンランド・ダービー Sunland Derby (GⅢ、3歳、9ハロン)は2003年の創設。去年からGⅢに格上げされ、ケンタッキー・ダービーの公式なトライアルとして認められる一戦です。
今年の勝馬はトゥワイス・ザ・アピール Twice The Appeal 。11頭立て。前走のステークス初挑戦となったターフ・パラダイス・ダービーでは2着に入線しながら進路妨害のため4着に降着となっていた馬。今日は速いペースを6番手に控えての追い込み勝ちでケンタッキーダービーへの切符を手にしました。
調教師はジェフ・ボンド、騎手はクリスチャン・サンチャゴ・レイズ。師によれば、同馬は遅生まれ(5月)で、ここへ来て漸く本格化して来た由。陣営では密かに期するところがある口ぶりでした。

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