フォスターも吃驚、36対1の大穴
三冠レースを終えたアメリカ競馬。夏の開催を控え、今は比較的静かな時期と言えましょうか。今週は土曜日の4場、8鞍のG戦が組まれているだけです。
先ず、ベルモント競馬場のヒル・プリンス・ステークス Hill Prince S (芝GⅢ、3歳、8ハロン)。1975年創設。3歳馬による芝のマイル戦で、現在では国際レースの一つ。レース名は1991年に競馬殿堂入りした名馬の名に因むもの。ケンタッキー・ダービーは2着でしたが、プリークネス・ステークス(1950年)を制してクラシック・ホースの仲間入りを果たしています。
今年の勝馬はストリート・ゲーム Street Game 。9頭立て。2着エア・サポート Air Support (1番人気)に7馬身4分の1の大差を付ける圧勝。馬場が重かったこともあるでしょうが、一方的な逃げ切り勝ちでした。これがステークスのデビュー戦。5月7日に初勝利を挙げたばかりで、これで6戦3勝の成績です。
調教師はフィリップ・サープ、騎乗したライアン・キュラトロ騎手にとっても、これがステークス初勝利。
もう一鞍がオグデン・フィップス・ハンデキャップ Ogden Phipps H (GⅠ、3歳上牝、8.5ハロン)。1961年に創設された時はヘムステッド・ハンデ Hempstead H と呼ばれていたレースで、2002年にアメリカのオーナー・ブリーダーとして君臨していたオグデン・フィップスに因んで改名されたもの。オグデン・フィップスは、日本ではむしろ往年のテニス選手として名が知られているかもしれません。
今年の勝馬はオウサム・マリア Awesome Maria 。5頭立て、うち3頭がプレッチャー厩舎という独占状態。去年のブリーダーズ・カップ・レディーズ・クラシックの覇者アンライヴァルド・ベル Unrivaled Belle がパドックで暴れて肩を痛めて取り消したのが残念でした。アンライヴァルド・ベルはそのまま引退が発表されています。
2番手から余裕の抜け出し勝ち。2着ペイトン・ドロ Payton d’Oro に3馬身差。今シーズンはこれで4戦4勝とパーフェクト、初のGⅠタイトルを手にしました。
調教師は、もちろん今年のロイヤル・アスコットにも挑戦したトッド・プレッチャー、騎手はジョン・ヴェラスケス。プレッチャー師は3度目のオグデン・フィップス。
チャーチル・ダウンズ競馬場は4鞍のG戦、第一弾はジェファーソン・カップ・ステークス Jefferson Cup S (芝GⅢ、3歳、8.5ハロン)。1977年に創設されましたが、去年から賞金が大幅にダウンしてGⅡからGⅢに格下げ。施行距離も様々に変更されてきた芝コースの3歳戦です。
今年の勝馬はバンド Banned 。予定の半数が取り消して4頭立てと寂しいメンバー。前半は2番手に付けた圧倒的1番人気のバンド、3コーナーを過ぎる辺りから先頭に立ち、最後方から追い込んだベナージー Benergy に2馬身差を付けて快勝。ケンタッキー・オークス当日に行われたアメリカン・ターフ・ステークスに続いてチャーチル・ダウンズの芝コース3歳戦を連勝、今シーズンは3戦2勝と絶好調です。
調教師はトーマス・プロクター、騎手はホセ・レズカノ。
続いてマット・ウイン・ステークス Matt Winn S (GⅢ、3歳、8.5ハロン)。2004年に創設されたばかりの新しいレースで、名前の「マット・ウイン」が何なのか、今のところ調べが付いていません。
今年の勝馬はスコータス Scotus 。7頭立て。前半3番手、直線半程で先行馬を捉え、後方から追い込むインフラティーニ Infrattini に1馬身差を付けて優勝。ステークスは初挑戦での初勝利です。今年デビューした3歳で、通算成績は5戦2勝となります。この日は5番人気でした。
調教師はケネス・マクピーク、騎手はアラン・ガルシア。
続いてリグレット・ステークス Regret S (芝GⅢ、3歳牝、9ハロン)。1970年創設。レース名のリグレットは、1915年に牝馬として初めてケンタッキー・ダービーに勝った女傑で、チャーチル・ダウンズ競馬場のレースは、ダービーに関係が深い命名のものが多いようです。
今年の勝馬はピッジー・キャロライン Bizzy Caroline 。8頭立て。前半は内々の3番手、直線で外に出し、2頭の外から追い込んで快勝。2着エクサイテッド Excited に2馬身4分の1差を付けていました。これがステークスのデビュー戦、見事勝利で飾っています。これで6戦3勝の通算成績。
調教師は前のレースに続いてケネス・マクピーク、G戦ダブル達成。騎手はマノエル・クルーズ。
チャーチル・ダウンズのメインはスティーヴン・フォスター・ハンデキャップ Stephen Foster H (GⅠ、3歳上、9ハロン)。1982年創設、GⅢからスタートして徐々に格を上げ、現在はGⅠ最高格に上り詰めた一戦。レース名のスティーヴン・フォスターは音楽に興味の無い人でも知っているでしょう。アメリカを代表する歌曲の作曲家。フォスターの「My Old Kentucky Home」がケンタッキー・ダービーの前に大合唱されるのは以前にも紹介しました。フォスターには「草競馬」という名曲もありますが、チャーチル・ダウンズ競馬場のことでは、もちろんありませんよ。
今年の勝馬はプール・プレイ Pool Play 。11頭立て。最低人気、36対1の大番狂わせです。28戦目のキャリアーにして初のダート・コース挑戦。それも最後方から直線だけで一気に差し切るスリリングなレースでした。2着は首差でミッション・インパジブル Mission Impazible 。GⅠは初勝利で、これまではカナダのポリトラック・コース、ここ3戦は芝コース(それも未勝利)で走っていた馬ですから、人気が無かったのも当然でしょう。これまでG戦はカナダのGⅢに勝っていただけ。これで通算28戦6勝となります。
調教師はマーク・キャッシー、騎手はミゲール・メナ。
ハリウッド・パーク競馬場のヴァニティー・ハンディキャップ Vanity H (GⅠ、3歳上牝、9ハロン)。1940年に創設された伝統ある招待レース。西海岸におけるシーズン前半の牝馬チャンピオンを決定するGⅠ戦。2008年から去年まで、ゼニヤッタ Zenyatta が3連覇したことでも知られるレース。
今年の勝馬はブラインド・ラック Blind Luck 。6頭立て。後方待機組の追込みが決まった一戦で、最後方に付けていたブラインド・ラックが5頭の外から追い込んで、2着スイッチ Switch (これも追い込み)に半馬身差を付けて優勝。去年の最強3才牝馬の貫録を見せ付けました。
調教師はジェリー・ホーレンドルファー、この日が65才の誕生日でした。騎手はギャレット・ゴメス。調教師、騎手共にヴァニティー・ハンデ初制覇。
最後にモンマス・パーク競馬場のペガサス・ステークス Pegasus S (GⅢ、3歳、8.5ハロン)。本来は1981年にメドウランズ競馬場に創設されたレースですが、一旦開催が中断されるなどの紆余曲折を経、現在行われているのは2005年にGⅢに降格され、2007年からモンマス競馬場で行われているもの。日本で種牡馬として成功したブライアンズ・タイム Brian’s Time が勝ったレースでもあります。
今年の勝馬はパンツ・オン・ファイア Pants On Fire 。5頭立て。前半外々を回る3番手から第3コーナーでスパートして先頭、2着コンシールド・アイデンティティー Concealed Identity に2馬身差を付けて1番人気に応えました。ルイジアナ・ダービー以来の勝利。パンツ・オン・ファイアのオーナーも調教師も今年のベルモント・ステークスをルーラー・オン・アイス Ruler On Ice で制したコンビ。こちらはケンタッキー・ダービー着外でしたが、両雄揃ってハスケル・インターナショナルに挑戦する可能性もあるそうです。
騎手はルイジアナ・ダービーでもコンビを組んだ女流のロージー・ナプラヴニク。
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