今日の1枚(173)

今日からこのカテゴリーを復活することにしました。最近の報道を見ていると、「自粛」は明らかに行き過ぎだと思います。原発が危機的状況にあるのは確かですが、農産物や水道水に対する一般の行動は過剰反応。これ、薬の効き過ぎだと思慮します。買い占めや買い控えは生業に対して失礼ではないか。
ということで抗議の意も籠めて、小欄は普通の対応に戻すことにしました。

しかしながら節電には協力が必要でしょう。アンプやCDプレイヤーのコンセントは抜いた代わり、バッテリーで稼働可能な手段にチャレンジしてみました。息子が薦めてくれたのが、ipod。CDのデータをパソコンに取り込んでipod に落とす方法を取得しました。やってみると存外面白いし、古い録音を聴く分は差支えありません。
とは言っても据置型のオーディオ・システムには及ぶべくもありません。余り細かい点には言及できませんので悪しからず。

さて、前回で「トスカニーニ・ベスト・セレクション」は終了しましたが、BMGジャパンは直ぐにその続編を出しました。名付けて「トスカニーニ・エッセンシャル・コレクション」。K2レーザーカッティング、オリジナル・デザイン使用のジャケットも同様で、全20タイトルが含まれます。全部ではないものの、大半は手元にありますので、今回から順次このシリーズを取り上げていきましょう。
先ずはその第1集で、モーツァルト作品を集めた BVCC-9701 というアルバムです。

①モーツァルト/交響曲第35番ニ長調K385「ハフナー」
②モーツァルト/ファゴット協奏曲変ロ長調K191
③モーツァルト/ディヴェルティメント第15番変ロ長調K287
④モーツァルト/歌劇「魔笛」序曲
⑤モーツァルト/歌劇「ドン・ジョヴァンニ」序曲

トスカニーニのモーツァルト録音は少ないので、前シリーズの三大交響曲と合わせて主要な録音はほぼ揃うことになりますね。
録音はいずれも1940年代と古く、以下の記録。

①1946年11月4日 NBC 3-Aスタジオ
②③1947年11月18日 NBC 8-Hスタジオ
④1949年11月26日 NBC放送録音 NBC 8-Hスタジオ
⑤1946年1月27日 NBC放送録音 NBC 8-Hスタジオ

①~③はSP用のセッション録音で、序曲2つは聴衆を入れた放送用ライヴ・コンサートの収録です。古い録音で限界はありますが、トスカニーニのモーツァルト演奏を知る上では鑑賞に差し支えるものではありません。
録音会場としては①が珍しいもので、今まで取り上げてきたトスカニーニ録音では初登場のロケーションだと思います。

新シリーズの特徴は、ブックレットに毎回トスカニーニの写真に添えてモーティマー・フランク氏の短いコメントが紹介されていること。日本語解説より遥かに得るところが大きい情報ですね。
第1回はウィーン・フィル奏者の述懐が掲載され、トスカニーニ自身が①の旧録音(1929年、ニューヨーク・フィルとの録音)との比較を語った一文も載せられています。

①はSPで初出。ヴィクターの 11-9901/3 の3枚5面に収められていました。第6面にフィルアップされていたのは、グルックの歌劇「オルフェオとエウリディーチェ」から精霊の踊り。
因みに、ブックレットに紹介されたニューヨーク・フィルとの旧録音は、HMVの D 1782/4 という3枚6面。このことからも旧盤のテンポの方が遅かったことが想像されるでしょう。
冒頭にはトスカニーニの唸り声も聞かれます。第2楽章前半の繰り返しは実行、後半は省略。第3楽章の繰り返しは慣習通り実行。

②のファゴット・ソロはレナード・シャロウ Leonard Sharrow 。解説にはプロフィールが一切ありませんが、恐らくNBC交響楽団の首席ファゴット奏者でしょう。
こちらの初出もSPで、HMVの DB 20182/3 という2枚4面。第1楽章に2か所、第2・第3楽章に1か所づつあるカデンツァの作者は判りません。(WERMによると、当時出ていたウーブラドゥーが吹いたものはウーブラドゥーが、ハーティーが指揮した盤はハーティーが書いたカデンツァの由。トスカニーニ盤にはカデンツァの作者に関する記載がありません)
第3楽章冒頭の繰り返しは実行。

②と同じ日に収録された③は、HMVの DB 9563/6 という4枚8面のSPが初出。弦合奏にホルン2本のみという編成の作品で、NBCの弦楽アンサンブルの見事さを証明する一品です。
全曲演奏ではなく、第5楽章に当たる第2メヌエットはカットされています。
繰り返しについては、第1楽章は前半も後半も省略。
第2楽章(主題と変奏)は、主題のみ前半も後半も実行、各変奏(第1から第6まで)は全て前半実行、後半省略で統一されています。
第3楽章メヌエットは慣例通り実行。
第4楽章(アダージョ)は前半も後半も省略し、最後にはコンサートマスターによるカデンツァを挿入。この楽章は、かつてNHKラジオの音楽番組のテーマとして使われていた有名なものでしょう。
第6楽章には基本的に繰り返し記号はありませんが、中間にある10小節の繰り返しは実行。また最初と最後に登場するレシタティーヴォ風楽句は第1ヴァイオリン全体の合奏で弾かれています。

④と⑤は放送用の収録で、WERMには発売記録はありません。トスカニーニの死後に一般公開されたものと思われます。①~③に比べてもやや音質的に物足りない感じ。
⑤は演奏会用の終結部が付けられた演奏ですが、どの版かは不明。少なくともオイレンブルク版全曲スコアに参考として掲載されているモーツァルト自身のアレンジではありません。
(アンドレ版かと思われますが、この版は手元にないので現時点では不明)

参照楽譜
①ユニヴァーサル(フィルハーモニア) No.51
②オイレンブルク No.784
③オイレンブルク No.73
④オイレンブルク No.912(歌劇全曲版)
⑤オイレンブルク No.918(歌劇全曲版)

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