今日の1枚(182)

「トスカニーニ・エッセンシャル・コレクション」第10集はフランスものを集めたオムニバス。BVCC-9711の品番で、

①ビゼー/「カルメン」組曲(トスカニーニ編)
②ビゼー/「アルルの女」組曲
③デュカス/交響詩「魔法使いの弟子」
④サン=サーンス/交響詩「死の舞踏」
⑤フランク/交響詩「プシュケ」~第4曲「プシュケとエロス」
⑥ベルリオーズ/劇的交響曲「ロメオとジュリエット」~マブ女王のスケルツォ
⑦ベルリオーズ/序曲「ローマの謝肉祭」

かなり盛り沢山の楽しい1枚です。録音は比較的新しいものが多く、

①1952年8月5日 カーネギーホール
②1943年9月10日 NBC放送録音 NBC-8Hスタジオ
③1950年3月19日 NBC-8Hスタジオ
④1950年6月1日 NBC-8Hスタジオ
⑤1952年1月7日 カーネギーホール
⑥1951年11月10日 NBC放送録音 カーネギーホール
⑦1953年1月19日 カーネギーホール

②と⑥が聴衆を入れたライヴ・コンサートの収録ですが、両者で会場が異なっているのが聴きどころ。
その他は全てセッション録音ですが、③④がスタジオなのに対し、①⑤⑦はカーネギーホール。

最初に初出の記録を纏めておくと、①はヴィクターの LRM 7013 のようで、トマのミニョン序曲などと共に。②は放送録音のためWERMには記録無く、③④は新しい録音ながらSP末期に出ていて、③はヴィクターの DM 1416 3面で、④は同じく DM 1505 2枚4面。
⑤はHMVのLP、ALP 1218 でムソルグスキーの「展覧会の絵」の余白に。⑥は全曲演奏の放送録音の一部ながら他のフランス作品と共にヴィクターのLP、LM 6026 に含まれ、⑦はHMVのLP、ALP 1235 に管弦楽小品集の一部として含まれていました。

当盤のエッセイはサミュエル・アンテックの「ディス・ワズ・トスカニーニ」からの1節で、指揮の姿などに関するもの。フランス音楽とは無関係です。
また、表裏共にオリジナル・デザインが印刷されているのも特徴で、裏面は③④の他にスメタナの「モルダウ」がフィルアップされたLP盤のデザインが使われています。

①は単にオペラの間奏曲を並べたものではなく、トスカニーニ編となっているのがミソ。トラックは一つに纏められていますが、曲順は(1)アラゴネーズ→(2)前奏曲の後半→(3)3幕への間奏曲→(4)アルカラの竜騎兵→(5)第4幕の行進の場面、となっています。
(2)と(3)の間にハープのカデンツァ(オリジナル)が入るのと、(5)が全曲のナンバーで第26番、エスカーミリョの歌が入る直前までを全て演奏しているのがトスカニーニのアレンジです。(5)では合唱のパートの一部を金管に吹かせたり、最後に短いエンディングを加えているのも面白い編曲でしょう。

②は第1組曲の第3曲まで演奏し、第2組曲の「田園曲」を続け、最後に第1組曲の「鐘」で閉じるという構成。これもトスカニーニならでは。何故か「田園曲」の後で客席から拍手が起き、“未だ未だ”というような制止する声も聞かれます。トスカニーニ本人かどうかは不明。

③は他の演奏に比べて速目なのに対し、④は逆に遅目なのが特徴。
⑤は作品が素晴らしく、当盤中最大の聴きものでしょう。現在ではコンサートで取り上げる機会がほとんど無くなりましたが、ブルックナーやマーラーの同じような作品を繰り返し演奏するくらいなら、フランクの濃厚なロマンティシズムを時々は紹介して欲しいと思います。トスカニーニの名演聴くべし。

録音は②がやや古いものの、全体としてはモノラル録音の最高水準と言って良いでしょう。繰り返しますが、⑤が聴ける貴重な音源。

参照楽譜
①インターナショナル・ミュージック・カンパニー No.2000(歌劇全曲ウィーン版)
②オイレンブルク No.828 及び No.829
③デュラン D&F 6660
④デュラン D&F 6661
⑤ヘフリッヒ No.336
⑥ペータース No.E424(交響曲全曲版)
⑦オイレンブルク No.620

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