今日の1枚(181)
ライヴ・コンサートが続くと中々音盤には手が出ません。加えて最近ではオーディオを楽しむスタイルがすっかり様変わりしてしまい、通常のアンプやCDプレイヤーは埃を被ったまま、「トスカニーニ・エッセンシャル・コレクション」も遅々として進みません。さて第9集はブラームスです。BVCC-9710。
①ブラームス/交響曲第1番
②ブラームス/セレナード第2番
①は以前に取り上げた所謂新録音とは別のもので、各曲の録音データは、
①1941年3月10日、5月14日&12月11日 カーネギーホール
②1942年12月27日 NBC放送録音 NBC-8Hスタジオ
データの通り、①はSP用のセッション録音、②は聴衆を入れたコンサートのライヴ収録です。
①の初出はHMVの DB 6124/8 の5枚10面。一方②はSPとしての発売記録は無く、LPになってからライヴ録音の発掘の形で世に出たものでしょう。WERMには記録がありません。
モーティマー・フランクによる当盤のエッセイは正に①に関するもので、元来トスカニーニの75才の誕生日を記念してリリースされたものの由。当盤に使用されたオリジナル・ジャケット・デザインにもその旨の表記があります。“第1楽章の管楽器パートの変更や終楽章におけるティンパニ・パートの追加は、トスカニーニの常であり” と書かれていますが、この古い録音からでは第1楽章の管楽器パートの変更は具体的には聴き取れませんでした。
また終楽章のティンパニは、原則としては新録音と同じですが、434小節と438小節の3連音の省略は無く、この点は当旧盤の方が違和感がありません。
②は最近ではほとんど演奏されなくなった作品。ヴァイオリンを欠くという地味な編成や、5楽章という珍しい形式が現在では馴染み難く感じられるのかも知れません。
しかし何度も聴いているととても美しい音楽で、交響曲ばかりに偏る最近の風潮に聊か文句を付けたくもなります。トスカニーニがこの演奏を残しておいてくれたのは幸いでしょう。しかも第2楽章(スケルツォ)と第4楽章(メヌエット風)にある繰り返しを全て楽譜通り実行しているのが嬉しい1枚です。
録音は古いながらも聴き易いもの。例えば終楽章にはオーケストレーションに華やかさを加えるためにピッコロが使われますが、この高音が自然に録られているのに感心。尚、演奏後の拍手はカットされています。
参照楽譜
①ユニヴァーサル(フィルハーモニア版) No.130
②オイレンブルク No.862
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