今日の1枚(177)

「トスカニーニ・エッセンシャル・コレクション」第5集は、再びNBC交響楽団との録音に戻って BVCC-9705 のアルバム。引き続きベートーヴェンですが、当盤は協奏曲作品をカップリングした1枚です。

①ベートーヴェン/ピアノ協奏曲4番
②ベートーヴェン/ピアノ協奏曲1番

ピアノのソロは、①が巨匠ルドルフ・ゼルキン Rudolf Serkin 、②はアニア・ドーフマン Ania Dorfmann 。
録音データは、

①1944年11月26日 NBC放送録音 NBC-8Hスタジオ
②1945年8月9日 カーネギーホール

このシリーズはオリジナル・デザインのブックレットを使用しているのも売り物ですが、当盤は表裏ともにジャケット・デザインが印刷されていて、特に裏面は①がLPとして初めて世に出た時のジャケットが使われているようです。左上隅に“Treasury of Immortal Performances, Never Before Released” の文字が見えます。

また当盤のコメントにはサミュエル・アンテック氏の『レコーディング・ウィズ・トスカニーニ』という著作からの引用が紹介されていて、トスカニーニのレコーディングの様子が綴られています。例によって解説にはソリストの情報などは一切ありません。

①はデータにもあるように、聴衆を入れた放送用演奏会のライヴ収録。最後には盛大な拍手も収録されています。SP時代にはリリースされたことが無く、恐らくトスカニーニの没後にアーカイヴの形でLP発売されたものでしょう。ジャケットに使われているのがその時のデザインと思われます。
録音は戦時中のものだけに限界があり、堅い音質でやや耳障りな印象。ゼルキンについては説明の必要は無いでしょう。流石に堂々たるベートーヴェンを完璧に弾き切っています。
カデンツァは第1・3楽章共にベートーヴェン自身のものを使用。特に第1楽章のカデンツァは二種類のものが残されていますが、ゼルキンは長い方のカデンツァを弾いています。

②は①の翌年に行われたSP用のセッション録音で、初出はHMVの DB 6460/3 の4枚8面。
ドーフマン(私はドルフマンの方が耳に馴染んでいますが、当盤の表記はドーフマン)は1899年にオデッサで生まれ、1984年にニューヨークで没したロシアの女流ピアニスト。ゼルキンより4歳年上に当たります。若い頃はハイフェッツともリサイタルを行っていました。
録音は、①と同年代のもので似たり寄ったり。
ドーフマンもカデンツァは第1・3楽章ともベートーヴェンの自作。3種類ある第1楽章のカデンツァは、最も長く難しい3番目のものを弾いています。ただし最後の10数小節を端折っていますが、SP面の時間切れの所為でしょうか、やや拍子抜けの感は否めません。

私はピアノに疎いので詳しいことは判りませんが、手元のペータース版スコアのピアノ・パートには所々二通りの譜面が記されており、ドーフマンが弾いているのはほとんどが大文字で書かれたパートの方だと思います。

参照楽譜
①オイレンブルク No.705
②ペータース Nr.602

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