2011皐月賞馬のプロフィール

日本のクラシック第2弾、先週行われた皐月賞馬の血統を振り返りましょう。レース前は混戦という評判でしたが、終わってみればオルフェーヴルの強さが抜き出ていた一戦でしたね。

さていつもなら勝馬の牝系を取り上げていくのですが、今回は先ず馬名を話題にしましょう。

日本馬の名前と言えば、少し前まで(今でも多いのですが)は屋号を付けるのがほとんどでした。屋号が「サクラ」であったり「トウショウ」であったり「シンボリ」であったりと。これに如何にも馬をイメージするような単語を重ねるというもの。
ところで英国には“名馬は良い名前を持つ” という格言(のようなもの)があります。馬主を代表するような屋号はほとんど無く、主に血統から連想されるような名前を付けるのですね。クラシックに勝つような能力を秘めた馬には、特にオーナーは頭を捻って名馬に相応しい名前を考える。

今年の皐月賞馬は、「オルフェーヴル」(Orfevre)。これはフランス語で「金細工師」(きんざいくし)の意味。オーナーの命名の意図を代弁すれば、父ステイ「ゴールド」と母オリエンタル「アート」からの連想でしょう。父母両方の名前から捻り出した何とも素晴らしい馬名ではありませんか。

更に2代母エレクトロ「アート」からも名前を受け継ぎ、「オリエンタル」は4代母ダウ Dhow からも流れを引いています。「Dhow」とは元来アラビア海で使われていた帆船の一種で、広くアラビア船の総称ともなっている言葉。アラビアが東洋を連想させるのは当然です。(西洋目線ではありますが)
ダウは、その母コースタル・トレード Coastal Trade (沿岸貿易)からの繋がりであり、オルフェーヴルの全兄「ドリームジャーニー」も単に「夢追い旅」という意味以上のものが感じられます。

繰り返しますが、これほど素晴らしい名前を持つクラシック馬は、英国でも数が少ないのではないでしょうか。オーナーは社台牧場系の組織だと思いますが、かつては「シャダイ」の屋号で統一していた彼らが、ここまで馬名に真剣に取り組みようになったことに敬意を表したいと思います。
馬名は、仔馬が生まれた時点では当面「何々の五」などという血統名が与えられますが、馬主が決まり、所属厩舎が決まってから正式に競走馬名が登録されます。その時点では馬の能力はある程度見えてくるもの。クラシックに駒を進められそうな馬に良い名前を付けるのは、馬主の責務とも言えるでしょう。

さて「金細工師」の牝系を一通り見ていきましょうか。

先ず母オリエンタルアート(1997、栗、父メジロマックィーン)は23戦3勝。特別クラス以上の勝鞍はありませんが、7ハロンから9ハロンまでのダート・コースでの勝ち星です。社台ファームの生産馬で、オーナーはオルフェーヴルと同じ㈲サンデーレーシング。これも池添謙一が騎乗していたことはご存知でしょう。
5歳まで走り、繁殖に上がってからの成績は以下の通り。

2004 ドリームジャーニー(鹿、牡、父ステイゴールド) 30戦9勝 1400~2500まで、GⅠは3勝(朝日杯フューチュリティー、宝塚記念、有馬記念)
2005 アルスノヴァ(鹿、牝、父ダンスインザダーク) 3戦2勝 エリカ賞(阪神2000メートル良)
2006 グッドルッキング(芦、牝、父クロフネ) 17戦3勝 浅口特別(阪神1200メートル良)
2007 ジャポニズム(鹿、せん、父ネオユニヴァース) 13戦1勝 勝鞍は阪神のダート1800メートル
2008 オルフェーヴル(栗、牡、父ステイゴールド)

初産駒と5番仔が、いずれもステイゴールドとの配合でGⅠ制覇。今後もこの配合に期待が集まるのは当然でしょう。そして産駒の名前も大注目です。

2代母エレクトロアート(1986、栗、父ノーザンテースト Northern Taste)もまた社台ファームの生産馬で、22戦4勝。特別競走は3勝していて、順にサフラン賞(東京8ハロン良)、下北半島特別(函館6ハロン良)、道新スポーツ杯(函館6ハロン重)。桜花賞にも出走しましたが、11着に終わっています。
彼女の繁殖成績の主なものは、オリエンタルアートの全兄に当たるシュペルノーヴァ(1995、芦、せん、父メジロマックィーン)の4勝で、戎橋特別(阪神ダート9ハロン稍重)と白鷺特別(阪神2500メートル良)に勝っています。他には2勝したエレクトラム(1996、栗、せん、父ドクター・デヴィアス Dr Devious)がいる程度。

3代母グランマスティーヴンス Grandma Stevens (1977年、栗、父レフテナント・スティーヴンス Lt Stevens)はアメリカで12戦1勝。アメリカで初産駒(Majestic Traveller 牡)を残した後に社台ファームに輸入されました。
日本での子供たちは、エレクトロアートの他にはミヤギローマン(1992、鹿、牡、父ブレイヴェスト・ローマン Bravest Roman)が秋川特別(東京ダート6ハロン良)など5勝したのが目立つ程度で、特記するような活躍馬は出していません。ただ彼女の娘にはサクラチャンス、リアルプリンセス、ラブリーグランマもあり、いずれは彼女たちの後継から活躍馬が出てくる可能性もあるでしょう。

既に紹介したように4代母はダウ Dhow 。彼女は未出走のようで、これと言った活躍馬は出ていません。
更に5代母コースタル・トレード Coastal Trade まで遡ると、彼女の産駒からフラミンゴ・ステークス、ファウンテン・オブ・ユース・ステークス、トレモント・ステークスなどG戦に3勝したワイズ・エクスチェンジ Wise Exchange (父プロミスト・ランド Promised Land)が出ています。

以上私が調べた範囲では、この牝系からは最近ではドリームジャーニー/オルフェーヴル兄弟を凌ぐほどの馬は出ていないようです。
またこの兄弟の血統は、ノーザンテーストの3×4という配合になることも付け加えておきましょう。エレクトロアートの父がノーザンテーストで(3代)、ステイゴールドの2代母の父が同馬(4代)なのですね。

ファミリー・ナンバーは、8-C。

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