フランスに新星現る

チェスターが終わると、舞台はすぐさまリングフィールドに飛びます。昨日の土曜日、リングフィールド競馬場の good to firm 馬場で2鞍のパターン・レースが行われました。

先ずこの日の第1レース、チャートウェル・フィリーズ・ステークス Chartwell Fillies S (GⅢ、3歳上牝、7ハロン)。7ハロンという距離はスプリンターの領域、3歳馬も出走してきますが、クラシックとは直接の関係はありません。

1頭取り消しがあり8頭立て。8対11の1番人気に支持されたフランボー Flambeau が逃げましたが、これをマークした12対1のパーフェクト・トリビュート Perfect Tribute の差し切り勝ち。2着に1馬身4分の3差で逃げたフランボーが粘り、更に同じく1馬身4分の3差でピラー Pyrrha の順。
勝ち時計の1分20秒05は、このコースの新記録です。
パーフェクト・トリビュートは、出走していた3頭の3歳馬の中の1頭。これまで何度かパターン・レースに挑戦してきましたが一息足りず、前回はリステッド戦に勝っての再挑戦。念願のパターン・レース初制覇を果たしました。

管理するのはクライヴ・コックス師。騎乗したルーク・モリスは、抜け出す時に結果3着となったピラーに接触する不注意騎乗が咎められ、2日間の騎乗停止処分を受けています。

続いては一つ置いてダービー・トライアル Derby Trial S (GⅢ、3歳、1マイル3ハロン106ヤード)。ダービー・トライアルとは言いながら近年はクラシックに縁遠い一戦で、2007年に勝ったアカーレム Aqaleem が本番でオーソライズド Authorized の3着したのが最も良い記録。
1頭取り消して6頭が出走してきましたが、ダービーに登録があるのは唯1頭。その馬も3着以内には入れませんでした。

堅実さを買われてメジャリング・タイム Measuring Time が5対4の1番人気に支持されましたが、優勝は10対1の伏兵ドドーニ Dordogne 、半馬身差2着にはハリケーン・ヒギンズ Hurricane Higgins が入り、更に6馬身の大差が付いて本命メジャリング・タイムの順。
1・2着共マーク・ジョンストン厩舎の馬で、ジョンストン師のワン・ツー・フィニッシュです。勝利騎手はニール・カラン、まんまの逃げ切り勝ちでした。

ドドーニはニューマーケットのリステッド戦に勝って注目された馬ですが、前走サンダウンでは期待を裏切って凡走。今回は本来の走りで名誉を回復しました。どうもサンダウンは馬場が思ったよりも重く、今日のような硬めの馬場がこの馬には適しているのでしょう。
陣営の期待はむしろ2着のハリケーン・ヒギンズの方で、今日はジョー・ファニングが騎乗して外から追い上げましたが、馬が未だ若く真っ直ぐに走れません。フラフラしなければ勝っていたというのが大方の見方で、ロイヤル・アスコットのキング・エドワード7世ステークスに向かう意向です。

いすせれにしても、このレースからダービーに向かう馬は出ないでしょう。

リングフィールドのパターン戦は以上ですが、二つのレースの間にリステッド戦のオークス・トライアル Oaks Trial (3歳牝、1マイル3ハロン106ヤード)が行われています。
9頭が出走しましたが、2着以下に6馬身差を付けて圧勝したザイン・アル・ボルダン Zain Al Boldan という馬に注目が集まりました。

5対1と人気は今一つでしたが、最後方から一気の差し足にはミックス・シャノン師もビックリ。陣営でも予想していなかった好走に、オークス挑戦の意欲が沸いてきたようです。ブックメーカーによりオッズは区々ですが、凡そ16対1というところ。

さて土曜日はフランスのサン=クルー競馬場でもクラシックへの重要なトライアルが2鞍行われました。

最初は仏オークス・トライアルに位置付けられるクレオパトラ賞 Prix Cleopatre (GⅢ、3歳牝、2100メートル)。
8頭立て。13対10の1番人気に支持されたガリコヴァ Galikova が見事期待に応え、2着アドヴェンチャー・シーカー Adventure Seeker に3馬身差を付けてオークス候補に名乗りを上げました。更に2馬身差で3着はウェイヴァリング Wavering 。

管理するフレディー・ヘッド師は、ペースメーカーとしてポールミック Polemique を出走させて万全を期していました。勝利騎手はオリヴィエ・ペリエ。
ガリコヴァは、名前から想像できるように、同じヘッド厩舎のスーパースターであるゴールディコヴァ Goldikova の半妹に当たります。ゴールディコヴァの父がダンジグ Danzig 系のアナバー Anabaa だったのに対し、ガリコヴァの父はサドラーズ・ウェルズ Sadler’s Wells 系のガリレオ Galileo 。
他の馬との能力関係は今一つ明確ではありませんが、この良血馬の素質に期待がかかるのは当然以上のことかも知れませんね。

ところでこのレースには社台所有のピリカ Pirika という馬も参戦していましたが、6着に終わっています。

さてサン=クルーのもう一つのトライアルは牡馬戦線です。グレフュール賞 Prix Greffulhe (GⅡ、3歳、2000メートル)。9頭が出走、4対5の被った人気には、アガ・カーンがダービーを密かに狙っているヴァダマール Vadamar が推されていました。

レースはバブル・シック Bubble Chic が逃げ、ヴァダマールは好位に待機しますが、道中スムーズに展開せず、結局は抜け出す機会を失って3着敗退。ダービー遠征の断念が発表されました。
優勝は本命馬とは正反対にスムーズに最後方から追い込んだ123対10のプール・モア Pour Moi 。逃げたバブル・シックを1馬身半差捉え、更に1馬身でヴァダマールが3着です。

プール・モアは、アンドレ・ファーブルが管理するクールモア・スタッドの馬。騎乗したマイケル・バルザロナ騎手も同馬に大きな手応えを感じ取ったようです。
グレフュール賞はここ6年で5勝という圧倒的な実績を誇るファーブル師、2006年の勝馬ヴィシンダー Visindar でエプサムに挑戦したこともあります。ヴィシンダーは1番人気に応えられませんでしたが、今年のプール・モアで雪辱なるか。

幸いプール・モアはダービーに登録もあり、大混戦必至の英クラシックならチャンスは充分に有りそう。オッズはブックメーカーによりバラバラですが、某社は同馬を極めて高く評価、何と8対1というオッズを出して周囲をアッと言わせています。

ダービーは“オレのために”あるのさ、とプール・モアが言ったかどうかは知りませんが、クールモアを代表するモンジュー Montjeu 産駒がダービーに向けて強烈なアピールをしたサン=クルーでした。

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