ケンタッキー・オークスはプラム・プリティー
いよいよアメリカ競馬のクライマックス、いや春競馬の祭典と言った方が相応しいでしょうか、ケンタッキー・ダービーの週末を迎えました。5月第1土曜日がケンタッキー・ダービー当日です。
何時の頃からか詳しくは知りませんが、ダービーを中心に様々なジャンルのG戦が集中するようになり、今年も前日の金曜日からG戦大会の様相を呈しています。金曜日のメインは何と言ってもケンタッキー・オークス。牝馬の日ということもあって、競馬場を訪れた淑女たちによるファッション・コンテストなども開催されるようです。
オークス・デイ最初のG戦は、第6レースのラ・トロワイエンヌ・ステークス La Troienne S (GⅡ、3歳上牝、8.5ハロン)。1986年からチャーチルダウンズのダービー開催で行われてきましたが、歴史はやや複雑。実は現在のこのレースは、かつてルイヴィル・ディスタッフ・ハンデと呼ばれていたGⅡ戦で、去年からの改名。当時から行われていた「ラ・トロワイエンヌ・ステークス」は、現在はこの後行われるエイト・ベルズ・ステークスと名を変えているのです。こんなこと初めて知りましたワ。昔の資料を紐解くときには要注意、3歳戦なのか3歳上戦なのかで区別するしかありませんね。ラ・トロワイエンヌは米競馬史上最も高名な繁殖牝馬の名から。
ということで今年の勝馬はブラインド・ラック Blind Luck 。8頭立て。去年のチャンピオン3歳牝馬のブラインド・ラックが、スタートの躓きを克服して1番人気に応えました。このところ2着続きでしたが、最後の叩き合いを制してライヴァルのアンライヴァルド・ベル Unrivaled Belle に半馬身差を付けての雪辱です。彼女は、正に去年のこの日、ケンタッキー・オークスに勝ったことを思い出したのかもしれませんね。
調教師はジェリー・ホーレンドルファー。オークスはベジャラノが騎乗していましたが、今回はギャレット・ゴメス。
第8レースのエイト・ベルズ・ステークス Eight Belles S (GⅢ、3歳牝、7ハロン)。先に紹介した通り、これが昔の「ラ・トロワイエンヌ・ステークス」。ケンタッキー・オークスに行けなかった馬、あるいは行かなかった馬のための一戦です。名前の変更は2009年からで、エイト・ベルズは、牝馬ながら2008年のケンタッキー・ダービーに挑戦して入着した馬の名前。
今年の勝馬はヴィクトリアズ・ワイルドキャット Victoria’s Wildcat 。10頭立て。直線で外から追い込み、逃げたホーム・スイート・アスペン Home Sweet Aspen に2馬身4分の1差を付ける快勝です。1番人気のアリエンザ Arienza は良い所なく8着惨敗。
調教師はロバート・ヘス、騎手はケント・デザーモ。
この競馬祭りに最も新しく加わったのがアリシバ・ステークス Alysheba S (GⅢ、3歳上、8.5ハロン)だそうで、2004年が第1回の由。レース名のアリシバは、言わずと知れた1987年のケンタッキー・ダービー馬。アリシバはダービーに勝った翌年もチャーチルダウンズに復帰し、ブリーダーズ・カップに勝っています。数あるダービー馬の中からこの馬の名前が選ばれているのもそんな理由からなんですね。GⅢに格付けされたのは2007年から。
今年の勝馬はファースト・デュード First Dude 。9頭立て。最後は大接戦で、2着リーガル・ランソム Regal Ransom との着差はハナでした。去年GⅠで好走(5連続入着)していた馬ですが、これで2連勝、ステークスもG戦も初勝利です。1番人気のミッション・インパジブル Mission Impazible は7着敗退。
調教師は、今年初めから同馬を預かっているボブ・バファート、騎手はマーチン・ガルシア。
第10レースはアメリカン・ターフ・ステークス American Turf S (芝GⅡ、3歳、8.5ハロン)。詳しいことは判りませんが、1992年から行われているようです。この日唯一の芝コースのG戦。
今年の勝馬はバンド Banned 。12頭立て。直線一気の末脚で2着クローズ・アリー Close Ally に4馬身半差を付けましたが、最後は抑える余裕で、着差以上に強い勝ち方でした。去年ブリーダーズ・カップ・ジュヴェナイル・ターフで期待されながら5着に終わっていた馬で、今回は1番人気に応えての優勝。意外なことにステークスは初勝利となります。これで6戦3勝、まだまだこれからが期待される3歳馬ですね。
調教師はトーマス・プロクター、騎手はギャレット・ゴメス。
そしてこの日の第11レースが、
ケンタッキー・オークス Kentucky Oaks (GⅠ、3歳牝、9ハロン)。その名の通り、アメリカの3歳牝馬チャンピオンを決める重要な一戦の一つ。第1回はダービーと同じく1875年に行われ、今年は137回目に当たります。シンボルとなっているのが百合の花であることも有名。
この日の観客は11万122人、ケンタッキー・オークス史上3位の記録だそうで、去年の11万6千人、2005年の11万1千人に続く由。事前にはアール・ヒート・ライトニング R. Heat Lightning が本命視されていましたが、脚部に発熱があって取り消し、結局は13頭が顔を揃えました。
ファンタジー・ステークスに勝ったジョイフル・ヴィクトリー Joyful Victory (1番枠)が2対1の1番人気、レーチェル・アレクサンドラ・ステークス勝ちのカスマンブルー Kathmanblu とラス・ヴィルジェネスを制したザズー Zazu がこれに続く人気。いずれにしても混戦であることは間違いない所でした。
今年の勝馬は、6対1のプラム・プリティー Plum Pretty 。外12番枠からスタート良く飛び出し、逃げるサマー・ソワレー Summer Soiree を2番手でマーク。3コーナー過ぎでサマー・ソワレーを交わして直線では大きくリードを広げ、最後は追い縋るセント・ジョンズ・リヴァー St. John’s River を首差抑えて優勝。
1番人気のジョイフル・ヴィクトリーは4着、ザズーは最後で追い込みましたが3着、カスマンブルー6着という結果になっています。
勝ったプラム・プリティーは、3月末にニュー・メキシコのサンランド・オークスを25馬身差で勝った実績はありましたが、G戦は初優勝となります。これで5戦3勝3着2回。サンタ・イネズ・ステークス(GⅡ)ではカリフォルニア・ネクター California Nectar とザズーに続く3着、ラス・ヴィルジェネス(GⅠ)でもザズーの3着でした。
勝馬の父メダリア・ドロ Medaglia d’Oro は、2009年のレーチェル・アレクサンドラ Rachel Alexandra に続いて2頭目のケンタッキー・オークス制覇。
調教師ボブ・バファートは、1999年のシルヴァーバレットデイ Silverbulletday に続く2度目のオークス優勝となります。騎手マーチン・ガルシアはオークス初優勝。惜しかったのは2着セント・ジョンズ・リヴァーに騎乗したロージー・ナプラヴニクで、勝てば初の女性騎手によるオークス制覇でした・・・。大外から出て直ぐに馬を内に入れてロスを無くす騎乗が、最後の末脚に活きていましたね。惜しかったぁ~。
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