ヨーク・メイ・ミーティング始まる

先週のチェスター、リングフィールドに続いて、昨日から3日間に亘る英国北部のヨーク競馬場で伝統の5月開催が始まりました。
オークスとダービーに向けたトライアル、短距離と長距離のパターン戦を含む多彩なプログラムです。

昨日のパターン・レースは2鞍で、先ずオークスのトライアルとなるミュジドラ・ステークス Musidora S (GⅢ、3歳牝、1マイル2ハロン88ヤード)。オークスより若干短い距離というのがキーポイントになりそうな結果でした。
このレースは過去にヘンリー・セシル師が9勝も挙げている得意のレースで、今年出走した5頭の中で11対8の1番人気に支持されたのもセシル厩舎(今年絶好調のカーリッド・アブダッラーの勝負服)のアリゾナ・ジェウェル Arizona Jewel です。前走サンダウンでの未勝利戦に勝ったばかり。

レースはチェスターでメインを総嘗めしたオブライエン厩舎から遠征したアメイジング・ビューティー Amazing Beauty (ムーア騎乗)が逃げ、他の4頭も差無く続く展開。
直線でアメイジング・ビューティーが後退、代わって抜け出した2番人気のベアフット・レディー Barefoot Lady (1000ギニー5着、ハナガン騎乗)とウイリアム・ビュイック騎乗のジョヴィアリティー Joviality との激しい叩き合い。最後は2頭のマッチ・レースとなり、首の上げ下げでゴール。
写真判定の結果、ジョヴィアリティー(5対1)がベアフット・レディー(2番人気)を頭差捉えていました。見た目にはもっと際どい着差に思えましたね。3着は9馬身もの大差が付いて芦毛のウェイ・ソース Whey Sauce が飛び込み、本命アリゾナ・ジェウェルは2番手を進むも伸び脚を欠き、4着敗退です。

勝馬の調教師はジョン・ゴスデン師。ジョヴィアリティーはこれが3戦目での初勝利です。師によれば、今春は雨が少なく調教は遅れ気味、今日の馬場(good)は同馬にとって硬過ぎず理想的だった由。
オークスに向けて14対1のオッズが出されましたが、師はジョヴィアリティーの距離適性は2000メートルが限界と考え(父はケープ・クロス Cape Cross)、オークスには向かわず仏オークスを目指す旨のコメントを出しました。

ゴスデン師にとってミュジドラ・ステークスは2勝目。1993年に勝ったマリイェット Marillette にはパット・エデリーが騎乗していて、本番のオークス(イントレピディティー Intrpidity の8着)ではレスター・ピゴットが騎乗していたのですから、随分と昔のことになります。

ところでこのレースで3着したウエイ・ソースにも注目しましょう。実はこの馬は日本産馬で、父はクロフネ(Kurofune)、母はイストワール(母の父サンデーサイレンス)。母は美浦の古賀厩舎に所属して一般戦に3勝(8~10ハロン)した馬で、兄弟にはBSN杯に勝ったストロングメモリーがいる血統。
今年のヨーロッパでは、ディープインパクト産駒など何頭かの日本産馬を目にすることが多くなっています。日本のマスコミももう少し海外の競馬に関心を持ってくれると良いのですが…。
ウエイ・ソースはチャップル=ハイアム厩舎の管理馬、馬主はA.ブラック氏といい、先日紹介したサンデー・べス Sunday Bess の馬主でもあります。どういう経歴の方なんでしょうか。

続いてはデューク・オブ・ヨーク・ステークス Duke of York S (GⅡ、3歳上、6ハロン)。ここは14頭と多頭数が揃いましたが、1番人気が勝って実力馬が2着と順当な結果になっています。

5対1の本命で優勝したのは、ゴドルフィンのデレゲイター Delegator 。半馬身差2着にはGⅠ2勝(ベットフェア・スプリント・カップとモーリス・ド・ギースト賞)で2番人気のリーガル・パレード Regal Parade 、更に半馬身差3着にティッドリウィンクス Tiddliwinks の順。
レースはマーカブ Markab (結果9着)の逃げで始まり、ゴール前2ハロン辺りでは9頭がコース一杯に広がって並ぶ混戦となりましたが、最もスタンドに近い外ラチ沿いから抜け出したデレゲイターが、その内側に付けたリーガル・パレードを差し切っての優勝。9番枠から出て巧く外に回したランフランコ・デットーリの冴えた騎乗が光っていました。

デレゲイターは一昨年の2000ギニーでシー・ザ・スターズ Sea The Stars の2着した実力馬で、その後ゴドルフィンが購入して現在のサイード・ビン・スロール厩舎に転厩。主にマイル戦で走っていましたが(前走は去年のブリーダーズ・カップ・マイル)、短距離戦に対応できるスピードのある馬。今回は6ハロン戦への初挑戦でした。
以後は陣営の描いた青写真通りスプリント戦線に向かう予定で、当面はロイヤル・アスコットのゴールデン・ジュビリーを目指すでしょう。

さて昨日はもう一つ、アイルランドのナース競馬場でもパターン・レースが一鞍行われています。ブルー・ウインド・ステークス Blue Wind S (GⅢ、3歳上牝、1マイル2ハロン)。
1頭取り消して10頭立て。6対4の1番人気には、3月にレパーズタウンの新馬戦に勝ったばかりのメサリーヤ Mesariya (アガ・カーン所有、オックス厩舎、ムルタ騎乗)が推されていました。10頭のうち7頭が3歳、1番人気も3歳馬です。

しかし優勝は5対2の3歳馬バニンパー Banimpire 。既に今シーズンはバリーサックス・ステークスでダービー候補リサイタル Recital 以下の牡馬を蹴散らしていた牝馬で(4月11日の日記参照)、4番手追走からスムーズに抜け出しての快勝です。
4分の3馬身差2着は前半逃げ、一旦は馬群に沈みながら差し返してきたスピン Spin (4頭だしオブライエン厩舎の1頭)が入り、更に4分の3馬身差3着は最後方から追い込んだ6歳馬ミッド・モン・レディー Mid Mon Lady 。

勝馬を管理するジム・ボルジャー師は、去年のアクダレナ Akdarena に続く2連覇。同馬は今シーズン既に4戦して3勝の実績となり、この後は愛1000ギニーから愛オークスの路線を歩んでクラシック制覇を目論む予定。同馬は調教師ボルジャー夫人の持ち馬でもあります。
ボルジャー厩舎は、ブルー・ウインド・ステークス4勝目でオックス厩舎と並びました(不思議なことにオブライエン厩舎は未だ1勝)。いずれもケヴィン・マニング騎手とのコンビです。

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