今日の1枚(185)

「トスカニーニ・エッセンシャル・コレクション」の総本山とも言うべきヴェルディの歌劇全曲録音シリーズ、第2弾は、BVCC-9717/8は歌劇「アイーダ」全曲。CD1枚目に第1幕と第2幕、2枚目に第3幕と第4幕が収められています。
コレクションの第15集にあたる2枚組。

配役は以下の通り、

アイーダ/ヘルヴァ・ネルリ Herve Nelli (ソプラノ)
アムネリス/エヴァ・ギュスターヴソン Eva Gustavson  (メゾ・ソプラノ)
ラダメス/リチャード・タッカー Richard Tucker (テノール)
アモナスロ/ジュゼッペ・ヴァルデンゴ Giuseppe Valdengo (バリトン)
ランフィス/ノーマン・スコット Norman Scott (バス)
エジプトの王/デニス・ハーバー Dennis Harbour (バス)
使者/ヴィルジニオ・アッサンドリ Virginio Assandri (テノール)
巫女の長/テレサ・シュティッヒ=ランダル Teresa Stich-Randall (ソプラノ)
合唱/ロバート・ショウ合唱団(合唱指揮/ロバート・ショウ)

録音は1949年3月26日と4月2日、NBC放送録音で、会場はNBCの8-Hスタジオ。「仮面舞踏会」同様、聴衆を入れたライヴですが、拍手は厳禁されていたのか一切収録されていません。
「仮面」より古い録音ですが、ほとんど時代を感じさせない優秀録音。このオペラは舞台裏から聴こえてくる場面が多いのが特徴ですが、どのように歌手や演奏者を配置していたのかを想像しながら聴くのも楽しみ。
例えば、例のアイーダ・トランペットの斉奏ですが、最初のラ♭は眼前で吹いているのに対し、次のシ♮は遠くから聴こえてきます。

当録音はWERMには記載が無く、どのような形で発売されたのかは判りません。マエストロの没後「遺産」としてLP化されたと想像されますが、他の全曲と違って何故長い間「お蔵」になっていたのかの経緯も不明です。

「アイーダ」はトスカニーニにとって指揮者になる切っ掛けとなった重要な作品。当盤の解説者ハーヴェイ・サックスも触れているように、テンポ、フレージング、ヴェルディ作品の相対的な実現という点で他に比肩するもののない、規範と言える歴史的名盤です。

ラダメスが冒頭で歌う「清きアイーダ」、シの高音を響かせた後、“vicino al sol!” を低く繰り返すのが珍しいと思います(楽譜にはそのような指示はありません)。

またアイーダの「勝ちて帰れ」の最後の台詞、スコアでは“Numi pieta, del mio sofrir!” となっていますが、“Numi pieta, pieta, pieta” に変え、第2幕でアムネリスと腹の探り合いをした後の同じフレーズをスコアの“Numi pieta, pieta, pieta”から“Numi pieta, del mio sofrir!”に変更しています。つまり歌詞の入れ替え。
私はオペラはほとんど素人で慣習など不案内ですが、これが通常行われていることなのか、手元のリコルディ版の印刷ミスなのか、トスカニーニの指示による入れ替えなのか全く判りません。詳しい方のご教示を・・・。

例によって当CDには歌手についてのプロフィールは一切紹介されていませんが、私にはアムネリスの歌唱が特に素晴らしいと感じられました。ギュスターヴソンというメゾ・ソプラノは、手元のオペラ辞典(オックスフォード)にも掲載がありませんでした。

参照楽譜
リコルディ P.R.153

Pocket
LINEで送る

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください