母の無念はらしたゴールデン・ライラック

昨日の日曜日、ロンシャン競馬場でフランス最初のクラシックが行われました。しかもダブルで。

先ず牝馬のためのプール・デッセ・デ・プーリッシュ Poule d’Essai des Pouliches (GⅠ、3歳牝、1600メートル)。通称フランス・1000ギニーですね。英愛の1マイルに比べると9メートルほど短い計算になります。

最終登録どおり16頭が出走し、先月のトライアル(グロット賞)に勝ったゴールデン・ライラック Golden Lilac が6対4の1番人気。未だこれが3戦目とキャリアの浅い馬ながら、無敗と底を見せていない魅力も手伝っていたでしょう。
2歳牝馬チャンピオンのエレボリーヌ Helleborine はトライアル(アンプルーダンス賞)の負けて人気を落としていましたが、それでも53対10の2番人気。以下、フレッド・ダーリング・ステークスに勝って英国(コール厩舎)から挑戦したリムス Rimth が3番人気で続きます。

しかしレースは一方的でした。ペースメーカーのグロリアス・サイト Glorious Sight が2番枠から飛び出して淡々とした逃げ。これを2番手でピタリとマークしたゴールデン・ライラックが捉えると、鞍上オリヴィエ・ペリエはムチを使うこともなく2着以下に3馬身差を付ける楽勝で見事人気に応えました。
あれよあれよと逃げ粘ったグロリアス・サイトが2着(36対1!)、半馬身差3着も終始3番手を追走したオブライエン厩舎のワイルド・ウインド Wild Wind (27対1!)が流れ込み、結局は「行った行った」の競馬になってしまいました。
巻き返しが期待されたエレボリーヌは後方のまま13着惨敗、リムスも9着と不発でした。本命馬は楽勝したものの、入着は穴馬ばかりという結末です。

これで3戦全勝のゴールデン・ライラックは、グロット賞のときにも紹介したように、父ガリレオ Galileo 、母グレイ・リラス Grey Lilas の良血。母自身もグロット賞に勝ち、1番人気で臨んだ仏1000ギニーは惜しくも2着に敗れていました。その母の無念を見事にはらした娘は、当然ながら仏オークスに向かうでしょう。因みに母は仏オークス3着、秋にはムーラン・ド・ロンシャン賞を制したGⅠホースなのですね。
父ガリレオにとっても新たな勲章。今年は既にフランケル Frankel が2000ギニーを制しており、早々と2頭目のクラシック・ホースを誕生させました。

ゴールデン・ライラックを管理するアンドレ・ファーブル師は、1990年のハウスプラウド Houseproud 、2003年のミュージカル・チャイムス Musical Chimes に続き仏1000ギニーは3勝目。ゴールデン・ライラックの母も同師が調教していた馬です。
また騎乗したオリヴィエ・ペリエは二度目の仏1000ギニー。前回は2004年のトレストレラ Torrestrella で、何とも皮肉なことに勝馬の母を破った張本人でもありました。

続いて牡馬によるプール・デッセ・デ・プーラーン Poule d’Essai des Poulains (GⅠ、3歳牡、1600メートル)。所謂フランス・2000ギニーです。

こちらは最終登録から1頭が取り消し、14頭立て。2対1の1番人気には、5戦無敗で既にロンシャンでジャン=リュック・ラガルデール賞に勝っている英国のウットン・バセット Wootton Bassett 。有力馬の何頭かとは既に決着を付けていましたが、大外(14番枠)を引いたのが不安材料です。
トライアル(フォンテンブロー賞)に勝ったグラスヴェーギアン Glaswegian が11対2の2番人気で続き、クリテリウム・インターナショナル2着のサルト Salto が3番人気。我がバロッチ Barocci は18対1と人気薄の1頭です。

仏1000ギニーの結果を見ていた本命馬のポール・ハナガン騎手、先行馬有利と踏んで逃げることに心を決したようです。外から出て一気に先頭に立ちましたが、内に切れ込むことでエネルギーを使ってしまい、最後の1ハロンではスタミナが残されていませんでした。
2番手を追走したハヴァナ・スモーカー Havane Smoker (35対1!)がバテたウットン・バセットを交わして一旦先頭に立ちましたが、4番人気(83対10)のティン・ホース Tin Horse が後方から追い込み、最後は2着以下に2馬身差を付けて快勝。
2着以下は大荒れで、2着ハヴァナ・スモーカーと3着ヴェノマス Venomous (25対1!、これも後方差し)との差は短頭。それから1馬身半でタンゾ・タン Temps Au Temps (53対1!)が4着、あと短首・短首で5着に本命ウットン・バセット、6着バロッチの順。2番人気のグラスヴェーギアンは8着、3番人気のサルト9着という結果に終わりました。

勝ったティン・ホースは、前記ジャン=リュック・ラガルデールではウットン・バセットに2馬身半差の3着に敗れていた馬。トライアル(フォンテンブロー賞)も3着で、これがほぼ1年ぶりの勝利となります。
管理するディディエ・ギルマン師、手綱を取ったティエリー・ジャルネ騎手共に仏2000ギニーは初制覇。陣営は強気で、次はロイヤル・アスコットに遠征してフランケル Frankel と一騎打ちの意向だそうです。
 

ところでこの日のロンシャンは全部で8レース、仏1000ギニーが第3レース、仏2000ギニーは第5レースとして行われましたが、他に2鞍のパターン・レースも組まれていました。
クラシックの前、第2レースに行われたのはオカール賞 Prix Hocquart (GⅡ、3歳、2200メートル)です。ギニーは回避して仏ダービーからパリ大賞典を狙う馬たちのトライアル。

5頭立てと寂しいメンバーでしたが、17対10の1番人気に支持されたプレーリー・スター Prairie Star が写真判定の接戦ながら順当に勝っています。ハナ差2着に前走ノアイユ賞勝ちのグランド・ヴェント Grand Vent 、更に1馬身半差でゴドルフィンのジーニアス・ビースト Genious Beast の順。
前走サンダウンのクラシック・トライアルに勝ったジーニアス・ビーストがデットーリ騎乗で逃げ切りを図りましたが、直線入り口でプレーリー・スターに捕まり、その後もしぶとく食い下がりましたが3着まで。レース前はエプサム・ダービーに33対1のオッズが出されていた同馬ですが、この敗戦により陣営はダービー不参加を表明しています。

勝ったプレーリー・スターは、前走のラ・フォース賞では1番人気になりながら2着敗退していた馬で、今日は2番手から早目先頭、最後方から追い込むグランド・ヴェントをハナ差凌いての優勝です。
エリー・ルルーシュ厩舎、クリストフ・スミオン騎乗で、この後は仏ダービーよりは距離の長いパリ大賞典が目標とのこと。馬主ウイルデンシュタイン家には仏ダービーはバロッチで、グランプリをプレーリー・スターで、という青写真があるようです。

二つのクラシックに挟まれた第4レースは、短距離戦のサン=ジョルジュ賞 Prix de Saint-Georges (GⅢ、3歳上、1000メートル)。
直線の最短距離で行われる一戦は、2頭が取り消して11頭立て。1着から5着までがハナ・短頭・短首・短頭という大接戦、写真判定の結果、最内を通った21対10の1番人気イングザイル Inxile が期待に応えました。2着キャプテン・ダン Captain Dunne 、3着スプリット・トロワ Split Trois の順。

逃げたのは2着に粘ったキャプテン・ダン、勝ったイングザイルは2番手に付けゴール寸前でこれを捉えた形。3着は後方からの追い込み馬です。
デヴィッド・ニコラス厩舎、エイドリアン・ニコラス騎乗の同馬、実は2年前のこのレースでも1着でゴールインしたのですが、裁決で進路妨害と判定され3着降着となっていた経緯があります。今回は問題なく1着で確定。
陣営では、冬場をドバイで使ったのが好結果に繋がったとの見解で、この日はゲートの中でボーッとしていたための出遅れを克服しての優勝でした。

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