日本フィル・第267回横浜定期演奏会

横浜にペリー総督、じやなかった、ペリー・ソーが来るというので聴いてきました。この半期は定期会員になっている日本フィルの横浜定期です。
正直に告白すれば、定期会員になっていなかったならパスするコンサート。まるでN響の定期みたいなプログラムでしょ。如何にも横浜ならではの選曲でした。

ところが、ですね。やはり演奏会は聴いてみなければ判りません。

ウェーバー/歌劇「魔弾の射手」序曲
モーツァルト/ピアノ協奏曲第24番ハ短調K491
     ~休憩~
ブラームス/交響曲第2番
 指揮/ペリー・ソー Perry SO (蘇柏軒)
 ピアノ/横山幸雄
 コンサートマスター/木野雅之
 ソロ・チェロ/菊地知也

日本フィル@横浜は、今シーズンから≪輝け!アジアの星≫と題する企画をスタートさせました。その第2弾が今回の指揮者ペリー・ソーです。(第1回は山田和樹だったかしら?)
とてもN響では考えられない企画。
常々21世紀以降は東洋の時代と叫んでいるメリーウイロウにとって、これは真にグッド・タイミングなプロジェクト。知名度は今一つでも実力は第一級というアジアの新星は綺羅星の如く、今回のソー君も正に将来の世界を背負って立つ逸材たらん事を期待する若手です。

先ず経歴。ペリー・ソーは1982年香港生まれ、と言いますから私にしてみれば子供の世代ですな。
イェール大学で学び、在学中から大学の劇場(!)の音楽監督を務め、歌劇のプロダクションを手掛けてきた由。若いとは言っても相当に経験を積んだ熟練工なのでしょう。
アテネのミトロプーロス指揮者コンクールに優勝し、現在はデ・ワールトとサロネンに師事しているとか。デ・ワールトは当然ながら香港の音楽サークルとの繋がりと思われます。(現在は香港フィルのアシスタント・コンダクター)

今回はソーの日本デビューだそうで、登場するのは横浜の1回だけ(何とも、もったいない)。このまま年月が経過して現在を振り返るような時が来れば、“ソーの日本デビューに立ち会ったよ” と自慢できるコンサートになりそうな気がします。

細身のナイス・ガイ。颯爽と登場し、協奏曲以外は暗譜で振ります。指揮棒を用い、若手ならではの大きな動きでオケをドライヴしますが、無駄な動きはありません。棒捌きが実にしなやかで、一見するとクライバー+アバドみたいな振り方。この世代なら仕方ないかも知れません。

音楽も指揮のスタイルそのもの。とにかく音楽が良く流れ、聴いていても爽やかさに思わず頬も緩みます。最初にN響そっくりなプログラムと書きましたが、出てくる音楽は古老の振るN響とは正反対の音楽です。こういうことを言うと叱られそうですが、私は断然ソー君の音楽に軍配を上げますね。

ウェーバーにしてもブラームスにしても、日本フィルの管楽器を上手く引き立て、オーケストラ全体のバランスが実に整っています。耳の良い指揮者であること間違いなし。
この日は金管、特にホルンの妙技に感心しました。ウェーバー冒頭の四重奏も見事にハモっていましたし、ブラームスでの完璧なソロ(福川伸陽)には会場からも大喝采。

今回のプログラムは指揮者とオーケストラ互いの接点で決定したのでしょうが、ブラームスの第2は正にソーの音楽には最もフィットした作品でしょう。ソーは、第3楽章の最後でテンポを大きく落として旋律をタップリと謳わせるような洒落た一面も垣間見せていました。

残念なのは真ん中に置かれた協奏曲。もちろんソーは協奏曲も「振れる」ことを証明しましたが、私が苦手なのはソリストです。この有名なピアニストは、恐らく聴き手に刺激的な体験をさせないという配慮からでしょうか、何とも優しいモーツァルトを提供します。
音色にも音楽そのものにも深みが一切感じられず、ピアノの表面がコロコロと転がっていくだけ。重くなる瞼を堪えるのに懸命なモーツァルトでした。

アンコールも用意されていました。ソー君が客席に一言呼びかけて演奏したのは、モーツァルトの「魔笛」から第2幕冒頭の行進曲。珍しいアンコールですね。
あ、ソーが言ったのは、“マ・テ・キ”だったのか。

アジアの星第2弾、日フィルへの再登場が待たれますし、次は東京見参でしょう。

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