無敗を守ったミューチュアル・トラスト
昨日はシャンティー競馬場でＧⅠ戦が行われています。この日のパターン・レースは３鞍、レース順にレポートして行きましょう。
先ずはボア賞 Prix du Bois (ＧⅢ、２歳、１０００メートル)から。フランスで行われる２歳馬最初のパターン・レースですね。
今年は５頭が出走。９対５の１番人気には、前走ロイヤル・アスコットのノーフォーク・ステークスで２着したブーメラン・ボブ Boomerang Bob が選ばれていました。英国のジョン・ヒルズ調教師が送り込んだ馬。
しかし、勝ったのは３７対１０のファミリー・ワン Family One 。本命ブーメラン・ボブは２馬身差２着に終わり、更に２馬身半差で逃げ粘ったパイマンズ・セオリー Pyman’s Theory が３着。
ファミリー・ワンはデビューから２連勝し、前走は１番人気になりながら２着に負けていた馬。これで４戦３勝となります。
同馬を管理するのは、元騎手のヤン・ベルベロ。所属馬の少ない小厩舎で、これが調教師としてパターン・レース初勝利。ベルベロ師は騎手時代にはパターン・レースに２勝、騎手としてもそれほど目立った活躍はしていなかった人です。
師によれば、ファミリー・ワンは前走で負けたものの、あくまでもここを目標に調整してきた由。次走、メゾン＝ラフィット競馬場のロベール＝パパン賞でパターン・レース連勝を狙います。
一方敗れたブーメラン・ボブ陣営も内容には満足、再度渡仏し、ロベール＝パパンでの雪辱を誓いました。
続いてがこの日のメイン、ジャン・プラ賞 Prix Jean Prat (ＧⅠ、３歳、１６００メートル)。ダービーも終わった時点で行われる３歳のみの１マイル戦、英国ならセント・ジェームズ・パレス・ステークスに相当するレースと見ればよいでしょう。
出走馬は７頭。イーヴンの１番人気は、そのセント・ジェームス・パレスでフランケル Frankel を追い詰めたゾッファニー Zoffany 、アイルランドからオブライエン厩舎が送り込んできた期待馬です。
レースはスタートから波乱含み。仏１０００ギニー５着馬のタンゾ・タン Temps Au Temps がゲートを出て直ぐに走ることを拒否、そのままレースを止めてしまいました。
これと言った逃げ馬が見当たらない中、それなら、と判断したリチャード・ヒューズ騎乗のストロング・スート Strong Suit (前走ロイヤル・アスコットのジャージー・ステークス勝馬)が前に出てスローペースに落とします。去年のこのレースを同じ手で制したディック・ターピン Dick Turpin を思い出させる展開。
その作戦が奏功したと思われた時、逃げ馬をマークしていた２頭の末脚が爆発。２番手で競馬していた２１対１０のミューチュアル・トラスト Mutual Trust が、３番手から追い込む本命ゾッファニーを頭差抑えて優勝。逃げたストロング・スートもハナ差で３着に粘り込みました。
スリリングなゴール前を制したミューチュアル・トラストは、これまで同じシャンティーのマイル戦ポール・ド・ムーサック賞を含めて３戦無敗だった馬。無敗の連勝記録を「４」に伸ばしました。
管理するのはアンドレ・ファーブル師、鞍上はマクシム・グィヨン。常勝ファーブル師にとって、意外にもジャン・プラ賞は１９８９年のローカル・タレント Local Talent 、１９９２年のキットウッド Kitwood に続いて３勝目となります。グィヨン騎手はもちろん初勝利、フランス馬の復権は３年振りのことでした。
最後はクロエ賞 Prix Chloe (ＧⅢ、３歳牝、１８００メートル)。前日行われたダフニス賞の牝馬版ですね。「ダフニスとクロエ」ですから。
７頭が出走、イーヴンの１番人気は前走サンドリンガム賞(ＧⅢ)３着のパンテュール・アブストレート Peinture Abstraite 。
しかしここまでのパターン・レース同様、１番人気馬は又しても２着敗退、優勝は英国から挑戦したベアトリス・オロール Beatrice Aurore でした。１馬身差２着にパンテュール・アブストレート、更に４分の３馬身差３着がドリーム・ピース Dream Peace 。
ジャン・プラ賞同様に逃げ馬不在の中、スローペースに落としたマリシア Malicia の逃げ。ベアトリス・オロールは３番手で待機、一旦は４番手に後退しましたが、最後で再び末脚を伸ばしての差し切り勝ち。本命馬は２番手から伸びましたが、最後は勝馬の末脚に屈しています。３着馬は後方からの追い込み。
ベアトリス・オロールはジョン・ダンロップ厩舎、エプサムのオークスは６着だった馬で、より短い距離に戻って結果を出しました。騎乗したオリヴィエ・ペリエはこのレース５勝目、ここ４年で３勝と得意にしているレースです。
最近のコメント