オブライエンのワン・ツー! ガリレオのワン・ツー!
昨日の日曜日、前日に続いてアイルランドのカラー競馬場でアイルランド1000ギニー Irish 1000 Guineas S (GⅠ、3歳牝、1マイル)が行われました。
今年の出走馬は15頭、英1000ギニー出走組からは3頭が参加し、2着のトゥギャザー Together が4対1の1番人気に支持されていました。トライアルのアサシ・ステークスに勝ったエミーナ Emiyna が9対2で2番人気。
この日も good の馬場の中央を通ってムーア騎乗のトゥギャザーが抜け出しましたが、スタンドから遠い内ラチ沿いに3番人気(5対1)に落ちていたミスティー・フォー・ミー Misty For Me が鋭く追い込み、トゥギャザーに4分の3馬身差を付けて復権を果たしました。
更に1馬身差3着には後方から追い込んだラーフィング・ラッシズ Laughing Lashes が入り、以下ボルジャー厩舎のクライム・ソラス Claiomh Solais (何と読むか判りませんでしたが、アイルランドのアナウンサーは「クライム・ソラス」と言っているように聞こえました)が4着、同じボルジャー厩舎のバニンパー Banimpire 5着。
2番人気のエミーナは10着惨敗。終わって見れば英1000ギニー出走組の3頭が1着から3着までを独占しています。
勝ったミスティー・フォー・ミーも2着のトゥギャザーも共にエイダン・オブライエン厩舎の馬。前日はファミリー制覇を成し遂げたオブライエン師のワン・ツー・フィニッシュです。
ワン・ツーと言えば、1・2着両馬はいずれもガリレオ Galileo の仔。ガリレオにとってもワン・ツー・フィニッシュでした。ここまで英仏愛で6つのギニーが行われましたが、内4勝がガリレオ産駒!
ガリレオの快進撃ばかりが目立ったギニー戦線、この種牡馬はスタミナ系を代表するだけに、これに続くダービー・オークス戦線はどうなるのでしょうか。
ミスティー・フォー・ミーは、2歳時に既にGⅠ戦に2勝していた馬。英1000ギニーは期待されながらも11着に惨敗し、株式に譬えれば売注文が殺到していました。
ところが前日の愛2000ギニーでは、同様に英惨敗のロデリック・オコンナー Roderic O’Connor が見事に復活していたため、ミスティー・フォー・ミーにも買戻しが入ってオッズも5対1にまで復帰していた経緯があります。
この日はシーマス・ヘファーナンが騎乗していましたが、彼は既にGⅠ(モイグレア・スタッド・ステークス)でミスティー・フォー・ミーに騎乗していました。それだけに、オブライエン師共々英ギニーでの惨敗は信じられなかったとのこと。
その敗因は馬場状態ではあり得ず、単に“燃えなかった”ということでしょう。オブライエン師は、ミスティー・フォー・ミーもロデリック・オコンナーも敗因は休み明け、どちらも一叩きしないとレース感覚が戻らないタイプだろうと結論付けたようです。
この日のレース振りから、ミスティー・フォー・ミーはより長い距離もOKと判断され、エプサム・オークスに向かうことが明らかにされました。オッズは一気に7対1に上がっています。
一方2着のトゥギャザーはマイル路線に留まり、ロイヤル・アスコットのコロネーション・ステークスに向かう由。
この日、カラー競馬場のGⅠはギニーだけではありません。トトソルズ・ゴールド・カップ Tattersalls Gold Cup (GⅠ、4歳上、1マイル2ハロン110ヤード)はオーストラリアの怪物登場が話題です。
前走ムーアズブリッジ・ステークスでヨーロッパ初見参し、その実力の片鱗を見せ付けたのがオブライエン厩舎のソー・ユー・シンク So You Think 。彼を恐れてか5頭立てのレース、ソー・ユー・シンクは1対7という1本被りの人気に支持されていました。
レースもソー・ユー・シンクの独壇場。同厩のペースメーカー、ウインザー・パレス Windsor Palace の直後に付け、あと2ハロンでライアン・ムーアが特に押し出すまでもなく自らペースを上げ、キャンターのまま2着カンパノロジスト Campanologist に4馬身半差の大楽勝。更に2馬身半差3着はフェイマス・ネーム Famous Name 。
騎乗したムーアによれば、ソー・ユー・シンクはマイル戦でも勝てるスピードもあり、今後のローテーションは白紙と言って良いでしょう。さしあたってはロイヤル・アスコットのプリンス・オブ・ウェールズ・ステークスが考えられますが、ムーアが惚れ込んでいるだけに、同騎手の騎乗予定が重要な鍵になると思われます。
この日はもう一鞍、二つのGⅠ戦に先立ってガリニュール・ステークス Gallinule S (GⅢ、3歳、1マイル2ハロン)も行われました。
10頭立て、3対1の1番人気に支持されたアレキサンダー・ポープ Alexander Pope が期待に応えて快勝しています。1馬身4分の3差2着はモリアーティー Moriarty 、頭差3着にスマートシティー Smartcity の順。
アレキサンダー・ホープもまたエイダン・オブライエン厩舎の馬で、オブライエン師はこの日のパターン・レース総なめ。第1レースでの勝利も含めて1日4勝の正にオブライエン・デイを演出しました。
しかもガリニュール・ステークスは、2006年から通算6連覇。その前も含めれば11勝目と言う圧倒的な強さを見せ付けています。
ガリニュールに騎乗したのはカーム・オダナヒュー。この日のG戦を全て別の騎手で制するあたり、オブライエン軍団の層の厚さが判ろうというもの。
アレキサンダー・ホープは長い距離に適したタイプで、次走はロイヤル・アスコット(キング・エドワード7世ステークス)か仏ダービーになる予定。
日曜日はフランスのロンシャン競馬場でもGⅠのダブル・ヘッダー。早速ドーヴァー海峡を渡りましょう。
GⅠ第一弾は、オークスへの最重要トライアルであるサン=タラリ賞 Prix Saint-Alary (GⅠ、3歳牝、2000メートル)。ここ2年連続で仏オークス馬を生んでいるレースですね。
今年は12頭が出走、5対2の1番人気には前走ヴァントー賞(GⅢ)に勝って3戦2勝のエピック・ラヴ Epic Love が選ばれていました。
しかしレースは7頭が2馬身以内に雪崩れ込む混戦で、優勝は54対10のウェイヴァリング Wavering 。短首差2着に本命エピック・ラヴが惜敗、更に首差でナンサッチ・ウェイ Nonsuch Way の順。
逃げたドント・ハリー・ミー Don’t Hurry Me をエピック・ラヴが捉えたところ、大外から一気に急襲したウェイヴァリングが最後の一歩で本命馬を交わしていました。
ウェイヴァリングを管理するアンドレ・ファーブル師は、このレース何と8勝目。この前に行われたリステッド戦に続いてロンシャン・ダブル達成です。騎乗したのは、今年19歳の新星ミカエル・バルザロナ。嬉しいGⅠ初制覇です。
勝ったウェイヴァリングは、前走クレオパトラ賞(GⅢ)でゴールディコヴァの妹ガリコヴァ Galikova の3着していた馬。当然ながら仏オークスに向かいます。
仏オークスではガリコヴァ、仏1000ギニーを制したゴールデン・ライラック Golden Lilac との3強を構成するでしょう。おっと、今日は惜敗したエピック・ラヴも忘れちゃいけませんね。
今年の仏オークス、役者が揃ってきました。
続いてのGⅠは、イスパハン賞 Prix d’Ispahan (GⅠ、4歳上、1850メートル)。スーパー・スター、ゴールディコヴァ Goldikova のシーズン・デビュー戦です。
9頭立て。去年もこのレースでシーズン・デビュー戦を飾ったゴールディコヴァが、3対5の断然1番人気。
今年も期待に応えましたが、レースの評価は割れています。2着は首差で追い込んだシリュス・デ・ゼーグル Cirrus Des Aigles 。4分の3馬身差3着にラジサマン Rajsaman が続きます。
去年の2着馬で2番人気に支持されたバイワード Byword は5着、英国から挑戦した2頭、ディック・ターピン Dick Turpin とランサム・ノート Ransom Note は夫々9・8着とどん尻争いに終わりました。
ゴールディコヴァはこれがGⅠ戦13勝目。最後は燃料切れの感があり、これが彼女のスタミナの限界でしょう。去年はバイワードに半馬身差、このあとアスコットのクィーン・アンでパコ・ボーイ Paco Boy の追い込みを首差凌ぎましたが、今年の着差は更に縮まって首。2着馬は距離が長い方が適しているタイプだけに、もう少し距離が長かったら逆転されていた可能性もあります。
しかし管理するフレディー・ヘッド師の目標はあくまでもブリーダーズ・カップの4連覇。シーズン初戦勝ちが辛勝であったことは余り問題にしていないようです。鞍上はいつものようにオリヴィエ・ペリエ。
ロンシャンもパターン・レースはもう一鞍、長距離戦のヴィコンテッス・ヴィジエ賞 Prix Vicomtesse Vigier (GⅡ、4歳上、3100メートル)。
6頭立て、9対10の1番人気は前走バルべヴィユ賞に勝ったデュナデン Dunaden で9対10。
しかしレースは92対10の伏兵ブリガンティン Brigantin がスローに落として逃げ、直線で一気に加速してまんまと逃げ切ってしまいました。
本命デュナデンも懸命に追い込みましたが、短頭差届かず2着、更に2馬身差でマリノース Marinous が3着で続きます。このレースももう少し距離があれば逆転していたでしょう。
勝馬を管理するアンドレ・ファーブル師はこの日3勝目。ハットトリック達成ですが、もう1頭の出走馬マシューア Mashoor が第1コーナーでコースを外れて脱落してしまい、気持ちは複雑です。
ブリガンティンは前走バルべヴィユ賞が本命デュナデンの4着。3歳時にはスイス・ダービー(ノン・グレード戦)を制した馬で、GⅢにも勝っていますがGⅡ戦は初勝利。騎乗したピエール=シャルル・ブード騎手にとってもGⅡクラスは初勝利です。
1・2着馬とも、このあとアスコット・ゴールド・カップに向かうか否かが注目点でしょう。
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