ファーブル/グィヨン、驚異のGレース独占

昨日の日曜日、シャンティー競馬場で仏オークスをメインとするプログラムが開催されました。一日8レース、パターン・レースは4鞍で、公式発表の馬場状態は good to soft でした。

先ずはG戦のトップを切って行われたディアーヌ賞 Prix de Diane (GⅠ、3歳牝、2100メートル)、通称フランス・オークスから。

9頭立て。仏1000ギニーを制したゴールデン・ライラック Golden Lilac が出走してきましたが、人気は13対5の2番人気。クラシック馬を差し置いてイーヴンの1番人気に支持されていたのは、今シーズン、クレオパトラ賞(GⅢ)を含めて2連勝中のガリコヴァ Galikova でした。実績以上にゴールディコヴァ Goldikova の半妹という血統に期待が集まっていたのでしょう。

レースは、そのガリコヴァのペースメーカーを務めるポールミック Polemique が逃げ、人気馬は4~5番手でお互いの動きを見る展開。
しかし勝負は決定的、内から外に出したゴールデン・ライラックが最後の1ハロンで繰り出した末脚は他馬を凌ぎ、ガリコヴァの追走を抑えて1馬身差の優勝。2着ガリコヴァと3着に粘り込んだグローリアス・サイト Glorious Sight との着差は首。以下ハヤ・ランダ Haya Landa 4着、アンドロメダ・ギャラクシー Andromeda Galaxy 5着の順。
3番人気を集めたアガ・カーン期待のシャリータは7着、サン=タラリ賞に勝ったウェイヴァリング Wavering (ダービーのプール・モア Pour Moi チームにも拘わらず人気は意外に無く、5番人気)は6着に終わっています。3着に入ったグローリアス・サイトは仏1000ギニーの2着馬。ギニーではゴールデン・ライラックとは3馬身差でしたが、ここではほぼ1馬身、好走と言えるでしょう。

ゴールデン・ライラックは、今年の英愛仏クラシックでは初めての2冠達成。毎回クラシック優勝馬の血統プロフィールを書いているメリーウイロウとしては、ホッと一安心です。
仏牝馬2冠は、かつてザルカヴァ Zarkava が歩んだ道。ザルカヴァは秋に凱旋門賞を制して頂点に立ちましたが、当然ながらゴールデン・ライラックにも同じ偉業が期待されます。昨日出された凱旋門賞のオッズは10対1。
彼女の母がクラシック入着馬であったことは、仏1000ギニーのレポートでも、クラシック馬のプロフィールでも触れました。母グレイ・リラス Grey Lilas は2004年の仏オークス3着馬、ギニーに続いて母の無念を晴らしたことになります。
それは母娘のオーナーであるゲステュート・アルマランドを代表するドイツのディートリッヒ・フォン・ベッチャー氏も同じこと。レース後のインタヴューに答えて、“こういう馬を生産し、所有するのが長年の夢でした” と喜びを表現しています。オーナーにとっては、昨年のロぺ・デ・ヴェーガ Lope De Vega に続く2冠でもあります。

勝馬を管理するアンドレ・ファーブル師にとっては、1985年のリファリタ Lypharita 、1992年のジョリファ Jolypha 、2003年のネブラスカ・トルネード Nebraska Tornado に続く4度目の仏オークス、騎乗したマクシム・グィヨンは仏オークス初制覇となります。

ところで今年66才のファーブル師、去年を含めて22回もフランスのリーディング・トレーナーを獲得している名伯楽ですが、この日は新たな偉業を達成しました。それは、この日組まれたパターン・レース4鞍の完全制覇です。
パターン・レース4勝は、騎乗したマクシム・グィヨンも同じ。エプサム・ダービーでは同じファーブル厩舎のプール・モアに乗った19歳のバルザロナに先を越されてしまいましたが、グィヨンも弱冠22歳。これからのヨーロッパ競馬を背負って立つ俊英であることにかわりはありません。

そのファーブル/グィヨンの快進撃をザッと見ていきましょう。

ポール・ド・ムーサック賞 Prix Paul de Moussac (GⅢ、3歳牡せん、1600メートル)は1頭取り消しがあり10頭立て。

11対5の1番人気に支持されたカーリッド・アブダッラー所有のミューチュアル・トラスト Mutual Trust がファーブル/グィヨンのコンビ。見事期待に応えて優勝です。
2着は4分の3馬身で Ch’Tio Bilote 、以前に話題にした読み方の判らない馬ですね。そして1馬身差3着がブルー・ソアーヴ Blue Soave 。日本産馬バロッチ Barocci も出ていましたが、5着に終わっています。

勝ったミューチュアル・トラストは今年5月にデビューしたばかり、これで無敗記録を「3」に伸ばしました。シャンティーとサン=クルーの1マイル戦に勝ってきて、もちろんパターン・レースは初挑戦。
ファーブル厩舎はこのレース8勝目。このあとミューチュアル・トラストはジャン・プラ賞でGⅠ制覇を目指します。

続いてリス賞 Prix du Lys (GⅢ、3歳牡せん、2400メートル)。仏ダービーの距離が短縮されたので、言わば隠れダービーの趣のある一戦です。来るパリ大賞典のトライアルと位置づけられるGレース。

7頭立て。1対2と被った1番人気に支持されたサノ・ディ・ピエトロ Sano di Pietro が4着に敗れる波乱で、優勝は63対10、ファーブル/グィヨン・コンビのクレーム Kreem
短頭差2着にドイツから遠征してきたイビセンコ Ibicenco が入り、1馬身半差3着にボーリュー Beaulieu の順。
勝ったクレームの次走は、当然ながらGⅠのパリ大賞典です。

ファーブル/グィヨンの重賞独占の締めは、シュマン・デュ・フェル・デュ・ノール賞 Prix du Chemin de Fer du Nord (GⅢ、4歳上、1600メートル)。「北鉄道」賞という意味ですね。

8頭立て。9対10の圧倒的1番人気に支持されたのは、ムーサック賞のミューチュアル・トラストと同じファーブル/グィヨン/アブダッラー・チームのバイワード Byword 。去年のロイヤル・アスコットでプリンス・オブ・ウェールズ・ステークスに勝ったGⅠ馬の貫録、GⅢとは言いながらペナルティーの無いここでは期待に応えての優勝です。
2着は4分の3馬身差でヴァガボンド・シューズ Vagabond Shoes 、3着も4分の3馬身でビーコン・ロッジ Beacon Lodge 。

2着との着差は4分の3馬身ですが、グィヨン騎手は最後は馬を抑える余裕、着差以上の完勝でした。
ウイナーズ・サークルに戻ってきたグィヨン君、観客に指を4本立てて見せ、パターン・レース完全制覇をアピールしていましたっけ。

ところでファーブル師、この日は第1レースのアマチュア女性騎手による2000メートル戦も制しており、一日5勝という固め打ちでした。
因みにこのレースに勝ったサリー・アン・グラシック嬢は、クールモア・スタッドのマネージャーを務めるクリスティー・グラシックの娘さんとか。女性アマチュア騎手のレースがあるということ自体、日本人の我々には驚きですな。

さて、日曜日はアイルランドのコーク競馬場でも細々とパターン・レース一鞍が行われました。ノーブレス・ステークス Noblesse S (GⅢ、3歳上牝、1マイル4ハロン)。馬場は good 。

9頭立て。6頭が3歳馬というメンバーで、7対4の1番人気に支持された3歳馬のバニンパー Banimpire が順当に抜け出しています。
3馬身差2着に逃げたセンス・オブ・パーパス Sense of Purpose が粘り切り、更に1馬身4分の3差3着にアメイジング・ビューティー Amazing Beauty の順。

バニンパーは愛1000ギニーで5着した馬で、これが既に今シーズン4勝目。管理するジム・ボルジャー師は、次走は今週木曜日に行われるロイヤル・アスコットのリブルスデール・ステークスと明言。
中3日での挑戦ですが、騎乗したケヴィン・マニングもその点を問われて、“ぜ~んぜん問題ないよ。今日なんてほとんど競馬していないからね” と、余裕の表情。さすがヨーロッパの馬は鍛え方が違うぞ…。

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