メモリアル・デイのアメリカ

昨日はアメリカの祝日、メモリアル・デイ。いつもなら土・日に行われるビッグ・レースも月曜日に纏めて行われる慣習です。6つの競馬場で合計9つのグレード戦。結果が入ってきたものから順次レポートして行きましょう。注目はGⅠの2レースです。

先ずベルモント競馬場のG戦は2鞍。サンズ・ポイント・ステークス Sands Point S (芝GⅡ、3歳牝、8.5ハロン)は1995年創設の新しいレースで、一時9ハロンで行われていたようですが、現在は創設時の距離に戻っています。
今年の勝馬はウインター・メモリーズ Winter Memories 。6頭立て。スローペース。大外スタートから前半は3番手、直線入り口で2頭の外を通って抜け出すと後は独走、2着セレスティアル・キッテン Celestial Kitten に3馬身差を付ける楽勝で1番人気に応えました。これで5戦4勝、全て芝コースと言う芝のスペシャリストです。同馬の目標はあくまでも10月キーンランドのクイーン・エリザベスⅡ世ステークスの由。
調教師はジェームス・トーナー、騎手はホセ・レズカノ。

そして愈々メトロポリタン・ハンデキャップ Metropolitan H (GⅠ、3歳上、8ハロン)。イギリスのエプサム競馬場にも同名のレースがありますが、知名度はアメリカの方が上でしょう。1891年創設の歴史ある一戦で、“ザ・メット・マイル”の愛称で親しまれています。所謂ニューヨークのハンデ三冠の第一弾に位置付けられるレースで、この後に続くサバーバン・ハンデ、ブルックリン・ハンデで構成される三冠は春のアメリカ競馬を代表するビッグ・イヴェント。これまで三冠を達成したのは4頭。このレースに勝った馬には自動的にブリーダーズカップ(ダート・マイル)の出走権が与えられます。
今年は中心馬不在を反映して11頭立て。混戦が予想されましたが、勝馬はティズウェイ Tizway 。逃げるタックルベリー Tackleberry をピタリと2番手でマーク、直線入り口で先頭に立ち、内から追い込むロッドマン Rodman に2馬身4分の3差を付ける鮮やかな勝利。終わって見れば強かったという印象です。押し出されるようにして得た3対1の1番人気でしたが、これが念願のGⅠ初制覇。去年のメットは3着でしたが、6歳にして漸く頂点に立ちました。
調教師はジェームス・ボンド、騎手はラジーヴ・マラー。

チャーチル・ダウンズ競馬場のウイニング・カラーズ・ステークス Winning Colors S (GⅢ、3歳上牝、6ハロン)。このレースの詳細は良く判りませんが、レース名のウイニング・カラーズはケンタッキー・ダービーに勝った牝馬として競馬殿堂入りした名牝の名。
今年の勝馬はサッシー・イメージ Sassy Image 。9頭立て。前半は5~6番手、直線では3コーナーから早目に先頭に立ったビート・ザ・ブルース Beat the Blues との一騎打ちとなり、最後は首差捉えて優勝。今月初めのGⅠ戦フマーナ・ディスタッフは圧勝でしたが、GⅢでは辛勝です。G戦はこれが4勝目ですが、全てチャーチル・ダウンズでのもの、余程コーストの相性が良いのでしょう。
調教師はデール・ロマンス、騎手はコーリー・ラネリー。

ゴールデン・ゲート・フィールズ競馬場のバークリー・ステークス Berkeley S (GⅢ、4歳上、8.5ハロン)。これまでは秋開催の目玉でしたが、2009年からメモリアル・デイのプログラムに組み込まれているようです。
今年の勝馬はアー・オー・バンゴー Uh Oh Bango 。8頭立て。2番手から抜け出し、最後は1番人気ボールド・チーフテン Bold Chieftain との激しい叩き合いを頭差制して優勝。ここはむしろ勝った馬より2着馬が話題で、ボールド・チーフテンはこのレース3年連続で頭差2着という珍しい結果になりました。直線で一度は先頭に立ちましたが、差し返されての悔しい2着です。アー・オー・バンゴーはステークス初勝利。
調教師はコリー・オーウェンズ、騎手はアーロン・グライダー。

ハリウッド・パーク競馬場は2鞍。先ずロサンジェルス・ハンデキャップ Los Angeles H (GⅢ、3歳上、6ハロン)。1938年創設の短距離戦。
今年は荒れました。6頭立て。マイク・スミス騎乗のアマゾンビー Amazonbie が先頭でゴールしましたが、馬群を割るときに外のエム・ワン・ライフル M One Rifle に接触、それが更に大外のキャンプ・ヴィクトリー Camp Victory にも影響を与えたため、審議の結果3着に降着。結局2番手でゴールしたキャンプ・ヴィクトリーが繰り上がって優勝となりました。
勝ちを拾った調教師はマイク・ミッチェル、騎手はヨーゼフ・タラモ。

続いてゲームリー・ステークス Gamely S (芝GⅠ、3歳上牝、9ハロン)。1939年にロング・ビーチ・ハンデとして創設されましたが、1976年に名牝ゲイムリーに因んで改名されたレース。GⅠに格上げされたのは1983年から。
今年の勝馬は英国産のデュバウィ・ハイツ Dubawi Heights 。8頭立て。ブラジル産馬のセルティック・プリンセス Celtic Princess が絶妙なペースで逃げましたが、終始2番手を追走したデュバウィ・ハイツが最後は頭差これを捉えての優勝。先に行った馬の競馬になりました。GⅠは初挑戦でしたが、28歳のサイモン・キャラガン調教師に初GⅠ勝利をプレゼントしています。同馬は、4月30日にウィルシャー・ハンデで初Gに勝ってのG戦連勝です。
騎手はジョエル・ロザリオ。

ローン・スター・パークからはウイジャ・ボード・ディスタッフ Ouija Board Distaff (芝GⅢ、3歳上牝、8ハロン)。これも同じく1997年創設のメモリアル・デイに組まれるプログラム。2003年からGⅢ。名前が度々変更された一戦で、2004年にブリーダーズ・カップ・牝馬ターフに勝ったウイジャ・ボードの名を冠するようになったのは2007年から。
タイミングよく、5月27日に英国のヘイドック・パーク競馬場でウイジャ・ボードの初産駒が初勝利を挙げています。産駒の名前はヴードゥー・プリンス Voodoo Prince 、父キングマンボ Kingmambo の3歳で、馬主はウイジャ・ボードと同じダービー卿。
今年の勝馬はウェイステッド・ティアーズ Wasted Tears 。7頭立て。スタート良く飛び出し、一旦は2番手に控えましたが、再び先頭を奪い返すとそのまま独走、2着カテゴリー・セヴン Category Seven に5馬身差を付けて圧倒的1番人気に応えました。ウェイステッド・ティアーズはこのレース3連覇達成。これが今シーズンのデビュー戦でしたが、休養明けも問題になりませんでした。一昨年は1馬身差、去年は首差でしたから、今年の強さは圧巻です。これで19戦12勝。
調教師はバート・エヴァンス、同馬の生産者であり、オーナーでもあります。騎手はジュリアン・ルパルー。

もう一つローン・スター・パーク競馬場のローン・スター・パーク・ハンデキャップ Lone Star Park H (GⅢ、3歳上、8.5ハロン)。1997年に創設され、2000年からGⅢに格付けされた新しいレース。同じ競馬場のテキサス・マイル・ステークスと組で「ザ・テキサス・ツー・ステップ」として出走を奨励する習慣になっているようです。
今年の勝馬はオウサム・ジェム Awesome Gem 。5頭立て。前2頭、後ろ2頭の真ん中をポツンと進み、3コーナーで外から捲り気味に先頭に立つと追い込む♭フラット・アウト Flat Out に1馬身差を付けて優勝。
調教師はクレイグ・ドラーズ、騎手はロビー・アルバラード。

最後はモンマス・パーク競馬場のヴァイオレット・ステークス Violet S (芝GⅢ、3歳上牝、8.5ハロン)。このレースについては詳細不詳。今シーズンのモンマス競馬場で行われる最初のG戦です。モンマス・パークはニュージャージー州を代表する競馬場で、1870年開設。何度かの閉鎖を乗り越え、1946年に再開され今日に至っています。2007年にはブリーダーズ・カップの開催地にも選ばれました。
ということで今年の勝馬はデノミネーション Denomination 。7頭立て。前半は5番手、直線で内から脚を伸ばし、最後は大外から追い込むアンブライドルド・エッセンス Unbridled Essence との接戦をハナ差制するスリリングなレースでした。今年3月12日にヒルスボロー(タンパ・ベイ競馬場)に勝った時は震災直後で詳しい報告は差し控えましたが、デノミネーションはフランスでパターン・レース(ヴァントー賞、GⅢ)にも勝っている馬、名調教師だったアレック・ヘッド夫人の持ち馬で、フランスではクリケット・ヘッド=マーレク姉御が調教していました。これがアメリカでのG戦2勝目。前走はポリトラックコースで力を出せませんでしたが、やはり芝が合っているようですね。
調教師はクリストフ・クレメント、騎手はジョー・ブラーヴォ。

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