メモリアル・デイのGⅠ4鞍
アメリカは月曜日がメモリアル・デイで休日、3連休でした。株も為替も無かったのはそのため。逆に競馬は大賑わいで、ニューヨークとカリフォルニア、合わせて4鞍のGⅠ戦が行われました。
他に3つの競馬でしょうでもG戦が行われましたので、順次大急ぎでレポートして行きましょう。毎年同じようなスタイルになるのは、競馬である以上は当然ですが・・・。
ということで最初に取り上げるベルモント・パーク競馬場は、去年と全く同じのプログラム。豪華GⅠ3連発です。ですが最初はサンズ・ポイント・ステークス Sands Point S (芝GⅡ、3歳牝、8.5ハロン)から。内の芝コースを使って行われるG戦、firm のコースに6頭が出走してきました。ダート変更時のみ登録の1頭は当然取り消しとなります。2対1の1番人気は、ステークスに2勝しているワッツダチャンシズ Watsdachances 。
東京競馬場の2000メートル戦のようにポケットからのスタート、2番枠を利して2番人気(5対2)のディスクリート・マーク Discreet Marq が先頭に立ち、ワッツダチャンシズは3番手からの競馬。直線に入ってもディスクリート・マークの逃げ足は衰えず、内ラチ沿いから外に出して追い込むウエーヴ・セオリー Wave Theory に4分の3馬身差を付けての逃げ切り勝ち。ワッツダチャンシズも早目に仕掛けながら前を追走しましたが、直線は思ったほど伸びずに1馬身4分の1差3着に終わりました。
勝ったディスクリート・マークを管理するのは、同馬の3人目の調教師となるクリストフ・クレメント。ジム・レイソン、ジェーン・シベリと受け継がれ、今回はクレメント師の管理下では初レースでした。鞍上はホセ・レズカノ。去年夏のサラトガで2戦目に未勝利を脱し、全て芝コースで走り、一般ステークスも含めて3勝目。G戦は初勝利です。
ベルモントのGⅠ第一弾は、古馬牝馬のオグデン・フィップス・ハンデキャップ Ogden Phipps H (GⅠ、3歳上牝、8.5ハロン)。fast のダート・コースに6頭立て。イーヴンの1番人気には今年サンタ・マルガリータ・ステークス(GⅠ)を制した5歳馬ジョイフル・ヴィクトリー Joyful Victory が推され、去年のケンタッキー・オークス馬ビリーヴ・ユー・キャン Believe You Can は僅かに4番人気(9対2)という強力なメンバーが揃いました。
ナプラヴニク騎乗のジョイフル・ヴィクトリーがハナに立ちましたが、これにマイク・スミス騎乗のオーセンティシティー Authenticity が競り掛けてハイペースに。これを利して内の3番手でマークしていた2番人気(4対1)の一角ティズ・ミズ・スー Tiz Miz Sue が外に出しながら捉え、粘るオーセンティシティーを半馬身差し切っての番狂わせ。1馬身差で後方から最低人気(19対1)のセントリング Centring が食い込み、ジョイフル・ヴィクトリーは5着と期待を裏切ってしまいました。ビリーヴ・ユー・キャンも最下位6着と敗退。
スティーヴ・ホビー厩舎、ジョセフ・ロッコ騎乗のティズ・ミズ・スーは、これで32戦8勝。前走アップル・ブロッソム・ハンデ(GⅠ)は半馬身差で惜しい2着でしたが、アゼーリ・ステークス(GⅢ)を2連覇した馬。6歳にして念願のGⅠ初制覇となります。
続いてエイコーン・ステークス Acorn S (GⅠ、3歳牝、8ハロン)。3歳牝馬クラシック戦線の一つですね。出走馬は6頭、ケンタッキー・オークス5着馬のミッドナイト・ラッキー Midnight Lucky がイーヴンの1番人気に支持されていました。
伏兵(32対1)モメンタリー・マジック Momentary Magic の逃げを3番手でマークしたミッドナイト・ラッキー、徐々に進出すると直線では独り舞台。後方から追い上げる3番人気(3対1)クローズ・ハッチェス Close Hatches に何と6馬身4分の1差を付ける圧勝です。2着クローズ・ハッチェスもケンタッキーでは7着した馬で、結果はオークス組が強かったということでしょう。4分の3馬身差で3着は2番人気(8対5)のカウアイ・ケイティー Kauai Katie 。
ボブ・バファート師が管理、ロージー・ナプラヴニクが騎乗したミッドナイト・ラッキーは、前走のオークスが僅かに3戦目。サンランド・パーク・オークスを8馬身差で圧勝してケンタッキーに臨み、逃げてGⅠ制覇は果たせなかった馬。今回も大差の圧勝(デビュー勝ちも7馬身以上の大差)で、これも念願のGⅠ初制覇となりました。
そして愈々メインとも言うべきメトロポリタン・ハンデキャップ Metropolitan H (GⅠ、3歳上、8ハロン)。アメリカ競馬でも最も名誉となる一戦で、マイラーはもちろん、スプリンターから中距離馬までが参戦することで毎年スリリングなGⅠとなります。今年は120回目、9頭の精鋭が顔を揃えました。5対2の1番人気に支持されたフラット・アウト Flat Out は、ジョッキー・クラブ・ゴールド・カップ(GⅠ)2勝で、ベルモント競馬場は4戦して負け知らずの強豪。出走馬9頭のうち7頭がGⅠかGⅡ勝というメンバーの中でも、最も勝つチャンスがあると見做されていました。
レースを引っ張ったのは、これが未だ生涯で4戦目という2番人気(5対2)のクロス・トラフィック Cross Traffic 。フラット・アウトは後方2番手に待機します。内ラチ沿いを快調に飛ばすクロス・トラフィックを追って4番人気(5対1)のマーク・ヴァレスキ Mark Valeski が迫り、2頭の争いと見えた時、最後方で待機していた3番人気(9対2)のサハラ・スカイ Sahara Sky が2頭の外から鋭く伸び、写真判定に持ち込みます。内外が馬2頭分離れていたため微妙でしたが、結果はサハラ・スカイがハナ差でクロス・トラフィックを捉えていました。3馬身半差3着には、行き足がついたところで他馬と接触する不利があった本命フラット・アウトが入り、ベルモントでの初黒星です。4着にマーク・ヴァレスキの順。
勝馬を管理するのは、これがメトロポリタン初勝利となる名匠ジェリー・ホーレンドルファー師。南カリフォルニアからの遠征でビッグ・タイトルを手にしました。鞍上はジョエル・ロザリオ。サハラ・スカイは、前回のニューヨーク遠征はカーター・ハンデ(GⅠ)での惜しい2着(カーター勝馬スワッガー・ジャック Swagger Jack も出走していましたが、7着)。サハラ・スカイは1月にパロス・ヴェルデス・ハンデ、2月にはサン・カルロス・ステークスと何れもGⅡ戦を制していましたが、GⅠは嬉しい初タイトルです。
次にチャーチル・ダウンズ競馬場に向かいましょう。ウイニング・カラーズ・ステークス Winning Colors S (GⅢ、3歳上牝、6ハロン)。fast の馬場、取り消しが2頭あり、僅か5頭立て。4対5の断然1番人気に支持されたのは、2歳時にプライオレス・ステークス(GⅠ)でハナ差2着惜敗のジュディー・ザ・ビューティー Judy the Beauty 。
しかしレースは3番人気(9対2)ビート・ザ・ブルース Beat the Blues の逃げ切り勝ち。本命ジュディー・ザ・ビューティーも3~4番手から追い上げましたが4分の3馬身差と届かず2着。更に4馬身4分の1差が付いて3着にはヴィトン Vuitton が入っています。
ブレット・カルホウン厩舎、ミグェル・メナ騎乗のビート・ザ・ブルースは、去年も一昨年もこのレースで2着に甘んじていた馬で、今回は三度目の正直での優勝。今年は一般ステークスで二度続けて2着のあとの勝利で、その意味でも三度目の正直となった形です。
さてゴールデン・ゲート・フィールズ競馬場に飛びましょうか。オール・アメリカン・ステークス All American S (GⅢ、3歳上、8.5ハロン)。去年は秋開催(11月23日)でしたが、今年はメモリアル・デイに変更、例年とは若干意味合いも変わってきています。fast のタペタ・コース、8頭が出走し、前走芝コースのサン・フランシスコ・マイル(芝GⅢ)で2着したサマー・ヒット Summer Hit が6対5の1番人気に支持されています。
スタートから先手を取った本命サマー・ヒット、4番手から追い込む去年の勝馬ハドソン・ランディング Hudson Landing を4分の3馬身抑えてG戦初制覇です。4馬身半差3着には後方からアドミニスター Administer の追い込み。
勝馬を管理するジェリー・ホーレンドルファー師は、このレースのほぼ1時間前にメトロポリタン・ハンデを制したばかり。鞍上ラッセル・ベイズの絶妙なペースにも助けられ、クロス・カントリー・ダブルを達成しました。
ローン・スター・パーク競馬場のメインは、その名もピッタリのローン・スター・パーク・ハンデキャップ Lone Star Park H (GⅢ、3歳上、8.5ハロン)。fast の馬場に1頭が取り消して4頭立て。いわゆる複勝馬券は販売されていません。イーヴンの1番人気は、2連勝中のマスター・リック Master Rick 。
逃げたのは、3番人気(7対2)のイズント・ヒー・クレヴァー Isn’t He Clever 。これを2番人気(6対5)のプレイヤー・フォー・リリーフ Prayer for Relief が追って3番手以下を大きく引き離します。その3番手で待機したマスター・ロックが徐々に前との差を詰め、先頭で直線に向かうと、プレイヤー・フォー・リリーフに1馬身差を付けて優勝。3着以下は14馬身半の大差が付いてフォルマッジオ Formaggio が3着。1・2着は共にスティーヴン・アスムッセン師の管理馬で、アスムッセンのワン・ツー・フィニッシュ。尤もたった4頭立てですが・・・。
リカルド・サンタナが騎乗したマスター・リック、アローワンスから、前走もここローン・スター・パークのG戦テキサス・マイル・ステークス(GⅢ)も制して3連勝。競馬場のスターに上り詰めたことになりましょう。
最後はハリウッド・パーク競馬場。現地時間で午後2時半にスタートが切られたロサンジェルス・ハンデキャップ Los Angeles H (GⅢ、3歳上、6ハロン)は、fast の馬場に1頭取り消しての6頭立て。この取り消しが結果にも大きく影響します。というのも3対5の断然本命に支持されたコンマ・トゥー・ザ・トップ Comma to the Top は先行馬。取り消したファスト・バレット Fast Bullet とのハナ争いが熾烈になると予想されていましたが、この取り消しで一気に展開は楽に。
その通り、ハナを切ったコンマ・トゥー・ザ・トップの逃げ切り楽勝でした。後続に4馬身差を付けて直線に入り、最後は2着セントラルインテリジェンス Centralinteligence に1馬身4分の1差まで詰められましたが、両馬の負担重量差6ポンドを考慮すれば、内容は着差以上のもの。3着は2馬身4分の1差で2番人気(7対2)のキャンプ・ヴィクトリー Camp Victory 。
ピーター・ミラー厩舎、エドウィン・マルドナード騎乗のコンマ・トゥー・ザ・トップは、3月にトム・フール・ハンデ(GⅢ)に勝ったのに続き、5月には一般ステークスも連勝。2歳時にはGⅠのキャッシュコール・フューチュリティーも制した快速馬で、ミラー師も今後はスプリントに徹する旨を表明。目標はもちろん11月2日にサンタ・アニタ競馬場で行われるBCスプリント制覇です。
メモリアル・デイ最後のG戦は、GⅠのゲイムリー・ステークス Gamely S (芝GⅠ、3歳上牝、9ハロン)。現地時間の夜9時スタート、日本では5月28日早朝のレースとなりました。firm の芝コース、7頭が揃い、去年のBCフィリーズ・アンド・メア・ターフ2着以来の実戦となるマーケティング・ミックス Marketing Mix が5対2の1番人気。GⅠ2勝のレディー・オブ・シャムロック Lady of Shamrock と、サンタ・アナ・ステークス(GⅡ)勝馬ティズ・フラーテイシャス Tiz Flirtatious が2対1の2番人気で並びます。果たして3強の闘いになるでしょうか。
レースはレディー・オブ・シャムロックと同厩(ジョン・サドラー)で伏兵(50対1)のミス・エラネー Miss Ellany がまるでペースメーカーの様に飛ばし、マーケティング・ミックスは3番手、それをマークするように終始外からティズ・フラーテイシャスが追走します。レディー・オブ・シャムロックは両馬から離れた後方追走。直線、期待通り2頭の一騎打ちとなり、一旦はティズ・フラーテイシャスが先頭に立ちましたが、内ラチ沿いに進路を変えてマーケティング・ミックスが差し返した所がゴール。外ティズ・フラーテイシャスのジュリアン・ルパルー騎手が“どっちが勝った?”との問いに、内マーケティング・ミックス鞍上のゲーリー・スティーヴンスが“判らない!”との答え。写真判定の結果、頭差でマーケティング・ミックスに軍配が上がりました。最後猛然とレディー・オブ・シャムロックも追い上げましたが、4馬身4分の1差で3着まで。
トーマス・プロクター師が管理するマーケティング・ミックスは、去年9月サンタ・アニタでのイエロー・リボン・ハンデに続きGⅠ戦は2勝目。復帰して最初のプリークネス・ステークスをオックスボウ Oxbow で制したばかりのヴェテラン騎手ゲーリー・スティーヴンスは、何と1997年のダヴォナ・デール Davona Dale 以来のゲイムリー制覇となります。
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