今日の1枚(190)

愈々「アルトゥーロ・トスカニーニ/エッセンシャル・コレクション」の最終回です。シリーズ第20集はトスカニーニとしては珍しいレパートリーと言えるショスタコーヴィチの交響曲第7番、BVCC-9725 の品番。

当番に使用されているオリジナル・デザインのジャケットには“NBC Broadcast of Luly 19, 1942 (US Premiere)” の文字が印刷され、当曲のアメリカ初演の放送録音であることが判ります。
録音データはジャケット表記の通り、

1942年7月19日 NBC放送録音で、NBC-8Hスタジオで行われたもの。最後には客席の拍手も収録されています。

当盤に付けられたジョン・フリーマンのコメントによると、演奏に先立ってショスタコーヴィチからトスカニーニに宛てられた無線電報が朗読された由。
オーケストラは通常の94名から110名に増員されたというのは興味深い指摘ですね。後にトスカニーニは、自分がこれを暗譜していたことに対し、“気が狂っていたにちがいないよ” と語ったエピソードも面白い読み物です。

この録音はトスカニーニ生存中には発売されなかったようで、WERMには一切の記録がありません。
演奏は円盤に録音されていたようで、盤に付いた傷と思われるスクラッチ・ノイズが時折聴かれます。年代が古いこともあって、あくまでも記録として鑑賞すべきものでしょう。それにしては破綻の少ない音で、音量のバランス・コントロールを巧みに処理していたことが判ります。

トスカニーニはこうした現代作品についてもスコアを良く読んでいて、第3楽章の練習番号109の3小節目を1小節そっくりカットしています。この後2度登場する同じフレーズに整合させるためで、書かれた音符をそのまま演奏していないところが如何にもトスカニーニ。
また同じ第3楽章では、練習番号130の1小節前に置かれているシンバルのff 打撃を1小節後にずらせて、他のパートのff と合致させているのも聴き取れます。

更に第4楽章では、練習番号191の7小節目をカットし、練習番号193の4小節目と5小節目の間に1小節追加するという興味深い変更を施しています。ここは低弦が同じ動きなので、他のパートを全体で1小節前倒ししているとも読めるでしょう。

オーケストラは現代のスーパー・アンサンブルに比べれば聴き劣る個所もありますが、アメリカ初演で暗譜で演奏したトスカニーニはやはり只者ではありません。

参照楽譜
ペータース Nr.5727

トスカニーニの音盤は未だ他にもありますが、今回で一応の切りとします。節電が叫ばれる折、CDを聴く時間もほとんど無くなってしまいました。

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