ゴールディコヴァとハットトリック

日曜日、フランスとアイルランドでパターン・レースが行われました。先ずフランスのドーヴィル競馬場から。

この日の注目はロッシルド賞 Prix Rothschild (GⅠ、3歳上、1600メートル)、英語風に読めばロスチャイルド賞ですね。かつてはダスタルテ賞 Prix d’Astarte として親しまれてきたマイルのGⅠです。
ドーヴィルでは5つのGⅠ戦が行われますが、ロッシルドはその第一弾。GⅠに格上げされたのは2004年から。

今年は8頭立て、馬場状態は good 。ロイヤル・アスコットのクィーン・アン・ステークスではキャンフォード・クリフス Canford Cliffs に敗れたものの、GⅠ13勝の女傑ゴールディコヴァ Goldikova が2対5の圧倒的1番人気。ニューマーケットのフォルマス・ステークス(GⅠ)で1・2着したタイムピース Timepiece とサプレーザ Sahpresa が相手でしょう。

レースはゴールディコヴァのペースメーカーを務めるフラッシュ・ダンス Flash Dance が逃げ、オリヴィエ・ペリエ騎乗のゴールディコヴァは2番手。これをタイムピースが3番手でマークし、サプレーザは後方待機策。
ゴール前600メートル、ペリエ騎手のゴーサインが出ると本命馬は一気に先頭に立ち、後続を2馬身ほど引き離します。そこからペリエはムチを使うことなく独走、最後は馬を緩めたためサプレーザに短首差まで詰め寄られましたが、未だ余裕のある優勝でした。タイムピースは更に2馬身差で3着。

ゴールディコヴァは、これでGⅠは記録更新の14勝目。ロッシルド賞は4年連続制覇となり、同一レース4連覇はパターン・システム導入以来フランスでは初の快挙です。(イギリスではイェーツ Yeats のゴールド・カップ4連覇があります)
彼女の14勝をもう一度復習すると、3歳時3勝(ロッシルド、ムーラン、BCマイル)、4歳時4勝(フォルマス、ロッシルド、ムーラン、BCマイル)、5歳時5勝(イスパハン、クィーン・アン、ロッシルド、フォレ、BCマイル)、そして今年はこれまで2勝(イスパハン、ロッシルド)で合計14勝という内訳。

管理するフレディ・ヘッド師は、“何も言うことは無いね。アスコットは少し調教が足りなかったかも。彼女はドーヴィルが大好きなんだよ”とコメント、次走は馬場が重くならなければジャック・ル・マロワ、その後はフォレ賞からBC4連覇を目指す予定です。
また騎乗したペリエにとっても記念すべき勝利、100勝目のGⅠ制覇となりました。彼も、“着差は僅かだったが未だ余裕十分、ムチは一度も使わなかったしね。彼女はドーヴィルの雰囲気が大好きなのさ” と。

一方2着のサプレーザ、もちろん勝つに越したことはありませんが、僅差で負けた相手がゴールディコヴァならロッド・コレ師も満足です。フォルマスは超スローペースのためタイムピースに1馬身4分の1差で負けましたが、今回は2馬身差で逆転。この後は2連覇しているサン・チャリオット(GⅠ)まで休み、再び日本遠征が計画されています(オーナーは吉田照哉也)。

ロッシルド賞は日本に関係の深い馬が大健闘しましたが、その前に行われたカブール賞 Prix de Cabourg (GⅢ、2歳、1200メートル)でも我が国に朗報が伝わりました。

8頭が登録してきましたが、マック・ロウ Mac Row がゲート前で暴れて発走除外、7頭立てで行われました。牡馬4頭、牝馬3頭の内訳。
英国から遠征した2頭が先行、ビー・フィフティー・トゥー B Fifty Two が最後の200メートルまで先頭で粘っていましたが、最後方から進んだダバーシム Dabirsim の末脚が爆発。ビー・フィフティー・トゥーを1馬身捉え、17対10の1番人気に応えました。
3着は更に2馬身半差で牝馬のチカ・ロカ Chika Loca 。

これで無傷の3戦3勝となったダバーシムは、クリストフ・フェルランド厩舎、フィリップ・ソゴーブ騎乗。共に聞き慣れない名前ですが、フェルランド師はボルドー近郊ラ・テステ La Teste で44頭を管理する調教師、G戦は初勝利となります。

ところでダバーシムの父は、日本産のハットトリック Hat Trick 。サンデーサイレンス Sunday Silence の10年目の産駒で、日本ではマイルチャンピオンシップ(GⅠ)などG戦に3勝した名マイラー。香港に遠征して香港マイルも制したワールド・クラスの一頭。現在はケンタッキーのウォルマック・スタッドで供用中で、ダバーシムが初産駒に当たります。
今のところハットトリックの産駒は日本では走っていないようですね。

いずれにしても、日本産種牡馬の産駒がヨーロッパでパターン・レースを制したのは快挙。競走馬として海外の大レースに勝つことも大事ですが、「日本産」ブランドの馬が海外で認知されることはもっと大切でしょう。次走のモルニー賞で初GⅠ制覇を目指すダバーシムに注目あれ!

最後はアイルランドのコーク競馬場からギヴ・サンクス・ステークス Give Thanks S (GⅢ、3歳上、1マイル4ハロン)、馬場は good to firm 、所により good の発表です。

1頭取り消しがあり11頭立て。前走ブルー・ウインド・ステークス(GⅢ)で2着したオブライエン厩舎の3歳馬スピン Spin が5対2の1番人気に支持されていましたが、スタートで躓いた上、あと100ヤード地点で他馬と激しく接触して失速、結果7着に敗退してしまいます。

優勝は8対1の4歳馬ピンク・シンフォニー Pink Symphony 、1馬身4分の1差2着にハジーナ Haziyna 、短頭差3着がオブライエン厩舎のアメージング・ビューティー Amazing Beauty の順。2・3着は共に3歳馬でした。

馬場の中央から伸びて快勝したピンク・シンフォニーは、アイルランドのデヴィッド・ワッチマン師の元に転厩してきたばかり。それまではイギリスのポール・コール厩舎に所属していた馬で、パターン戦とリステッド戦で好走はしていましたが、今回がG戦初勝利でした。
本来はこれまでの流れを継いでジェイミー・スペンサーが騎乗する予定でしたが、前日レポートしたグッドウッドでの落馬の影響を考慮し、大事を取ってジョセフ・オブライエンに乗り替わっていました。ジョセフがワッチマン厩舎の馬で勝つのは、これが初めてのことになります。

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