ボブ・バファート師、東西GⅠを制覇!

日曜日のアメリカ競馬、サラトガとデル・マーに加え、モンマスパーク競馬場でも賑やかにグレード戦が行われました。
GⅠ戦は3つの競馬場で仲良く1鞍づつ組まれていましたが、最も注目されたのはクラシック馬が激突したハスケル・インヴィテーショナルでしょう。東から西へ、順序を追って紹介していきましょう。

先ずはサラトガ競馬場のフォースターデイヴ・ハンデキャップ Fourstardave H (芝GⅡ、3歳上、8.5ハロン)。1985年にダリルズ・ジョイ・ハンデ Daryl’s Joy H として創設されたレースで、1997年に現在のレース名に改名された一戦。フォースターデイヴは、旧名時代にこのレースを2連覇した馬で、1987年から1994年まで何と8年間もサラトガ競馬場で何かしらのレースに勝った名馬。2002年に亡くなった同馬は、サラトガ競馬場に埋葬された由。この栄誉はこれまで3頭にしか与えられていないそうな。
今年の勝馬はシドニーズ・キャンディー Sidney’s Candy 。7頭立て。行く馬がいない流れでスンナリ先頭に立ったシドニーズ・キャンディー、スローペースに落として逃げ切り勝ち。1馬身4分の1差2着のブラジル産馬モライバ Moryba も2番手追走の馬。典型的な「行った行った」の競馬でした。これまでカリフォルニアのサドラー厩舎(サンタ・アニタ・ダービーを制す)で管理されていた馬ですが、プレッチャーの元に転厩、サラトガでのデビューを勝利で飾っています。
調教師はトッド・プレッチャー、騎手はジョン・ヴェラスケス。

そしてラフィアン・インヴィテーショナル Ruffian Invitational (GⅠ、3歳上牝、9ハロン)。これまた競馬殿堂入りした名牝ラフィアンに因んで命名されたレース。無敗のまま10連勝した後でマッチ・レースで骨折、そのまま安楽死となった悲劇の女王でもあります。私が競馬に首を突っ込んで間もないころの出来事で、大変なショックを受けたことを思い出します。1976年創設の頃はベルモント競馬場で秋口に行われたレースでしたが、去年からサラトガの夏開催に移行されたそうです。
今年の勝馬はアスク・ザ・ムーン Ask the Moon 。7頭立て。これまた逃げ切り勝ち。1番枠から好スタートで先手を奪い、ペースを緩めることなく、追い込むスーパー・エスプレッソ Super Espresso に5馬身4分の3差を付ける圧勝でした。最後は少し寄れたり尻尾を振っていましたが、18対1の大番狂わせ。先月クレイミング戦に走っていた馬で12連敗中、これがG戦デビューというから驚きです。
調教師マーチン・ウルフソンはモンマスパークに遠征中、全て電話で指示していました。騎手ハヴィエル・カステラノは同馬に初騎乗でした。

そのモンマスパーク競馬場はオーシャンポート・ステークス Oceanport S (芝GⅢ、3歳上、8.5ハロン)。1947年創設当時はダートコースのスプリント戦でしたが、1964年に芝コースのレースに変わりました。同日に行われるマッチメーカー・ステークスと対になった一戦。レース名のオーシャンポートは、モンマス・パーク競馬場があるニュージャージー州の地名。
今年の勝馬はヤンミー・ウィズ・バター Yummy With Butter 。7頭立て。2番手に付け、直線で逃げたサイーフ Sayif を1馬身4分の1差捉えて優勝。カナダで勝って以来ほぼ2年振りの「バターをつけたら美味しい」勝利でした。
調教師はイヴォン・ベルスール、騎手はパコ・ロペス。

続いてマッチメーカー・ステークス Matchmaker S (芝GⅢ、3歳上牝、9ハロン)。1967年にアトランティック・シティー競馬場に創設されたレース。1997年に現在のモンマス・パークに移管。
今年の勝馬はロマカカ Romacaca 。10頭立て。好スタートで先頭、一旦は2番手に控えましたが、早目に逃げ馬を捉えると、内から追い込むラヴィズ・ソング Ravi’s Song を1馬身4分の1抑えて優勝。これで5連勝と絶好調です。
調教師はニック・カナーニ、騎手はE.T.ベアード。

そして愈々ハスケル・インヴィテーショナル Haskell Invitational (GⅠ、3歳、9ハロン)。1968年にモンマス・パーク競馬場の議長だったアモリー・L・ハスケル氏を偲んで創設されたレース。最初は古馬のための一戦でしたが、後に現在の3歳戦に変更。レース名の通り、出走馬は招待によって選ばれます。三冠クラシックとブリーダーズ・カップの間に行われる3歳戦としては最も重要なもので、近年の勝馬も全て夫々のチャンピオンに選出された名馬ばかり。
注目の今年の勝馬はコイル Coil でした。ダービー馬アニマル・キングダム Animal Kingdom は故障休養中ですが、プリークネスのシャックルフォード Shackleford とベルモントのルーラー・オン・アイス Ruler On Ice を抑えての逆転劇です。8頭立て。1番人気のシャックルフォードは2番手、ルーラー・オン・アイスは6番手で待機する中、コイルは最後方。直線で早目に先頭に立ったシャックルフォードを向正面で徐々に進出したコイルが外から追い上げ、最後の叩き合いを首差制して優勝。ルーラー・オン・アイスは直線で一気に内ラチ沿いに切れ込んで2頭を負いましたが、2馬身4分の1差及ばず3着でした。
コイルは、これが未だ6戦目というキャリアの浅い馬。グレード・レースは6月にハリウッド・パークでアファームド・ハンデ(GⅢ)を制しただけですが、通算では4勝目。この日は2番人気、クラシック馬とは4ポンドの斤量差がありましたが、これでブリーダーズ・カップ・クラシックの出走権を獲得、3歳チャンピオンの座を狙う1頭に上がってきたことは間違いないでしょう。
調教師はボブ・バファート、師にとってハスケルは5勝目。コイルの父ポイント・ギヴン Point Given でも制しており、父子制覇を演出しました。騎手は去年に続いてマーチン・ガルシア。更にコイルのオーナー、マイク・ペグラム(パートナーとしてカール・ワトソン、ポール・ウエイトマン)にとっては去年のルッキン・アット・ラッキー Lookin At Lucky に続く2連覇でもありました。

デル・マー競馬場はビング・クロスビー・ステークス Bing Crosby S (GⅠ、3歳上、6ハロン)。1946年創設、60年以上の歴史ある短距離戦。ビング・クロスビーは説明するまでもなくアメリカの有名なエンターテイナーですが、デル・マー競馬場の創設と発展に寄与し、競走馬のオーナー、生産者としても活躍した競馬界の名士でもありました。そのクロスビーを記念した一戦。
今年の勝馬はユーロイヤーズ Euroears 。スタート・ダッシュ良く飛び出し、そのままトラック・レコード・タイムを樹立する圧巻の逃げ切り勝ち。1分8秒17は、2008年にコスト・オブ・フリーダム Cost of Freedom が記録したレコードをコンマ12上回るもの。去年の覇者で圧倒的1番人気に支持されたスマイリング・タイガー Smiling Tiger が1馬身4分の3差2着に追い上げましたが、スタートを失敗して出遅れたことが6ハロンでは致命的でした。ユーロイヤーズは3月26日にドバイのゴールデン・シャヒーンでロケット・マン Rocket Man の2着して以来の久々の実戦。休み明けながらそのスピードを遺憾なく発揮しました。
調教師はボブ・バファート、この日の東海岸と西海岸のGⅠ戦を両方とも制するという快挙を達成しました。騎手はラファエル・ベジャラノ。

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