真夏のヨーロッパ、GⅠ三連発

昨日の日曜日、ヨーロッパ各国で行われたパターン・レースのレポートです。

先ずはアイルランド、カラー競馬場では4鞍のパターン・レースが組まれていました。この日の直線コースは good to yielding 、長距離戦で使われるラウンド・コースは good という渋った馬場状態。レース順に回顧していきましょう。

ロイヤル・ホイップ・ステークス Royal Whip S (GⅡ、3歳上、1マイル2ハロン)は6頭立て。ここ数年は古馬が優勢なレースですが、今年は大半の5頭が3歳、クラシック・ジェネレーションに有力な馬が集まりました。
4対5の断然1番人気に支持されたのは、前走愛オークス2着のバニンパー Banimpire 、実力に加えタフさに於いても第一級の牝馬です。

レースはココーザ Cocozza とジェムストーン Gemstone の逃げ、最後方で悠然と構えたケヴィン・マニング騎乗のバニンパーは半マイル地点から進出し、2着ダンボイン・エクスプレス Dunboyne Express (愛ダービー5着馬)に4分の3馬身差を付けて人気に応えました。ムターディー Mutahadee が3馬身離された3着。
バニンパーは当日記の常連、今シーズンは既に9戦し、パターン・レースだけでも5勝。GⅡクラスはアスコットのリブルスデール・ステークスに次いで2勝目となります。

同馬を管理するジム・ボルジャー師は次走にロンシャンのオペラ賞を挙げ、来年も現役に留まることが濃厚であることを明らかにしました。

この日二つ目のパターン・レースはデビュタント・ステークス Debutante S (GⅡ、2歳牝、7ハロン)。1頭取り消して9頭立て。
5対4の1番人気は、これまで3戦無敗、前走レパーズタウンのシルヴァー・フラッシュ・ステークス(GⅢ)を半馬身差で制したエイダン・オブライエン厩舎のメイビー Maybe です。

レースはチーム・オブライエンのチーフテス Chieftess が引っ張り、オブライエン師の子息ジョセフ・オブライエン騎乗のメイビーは2番手待機。残り2ハロン、メイビーがスパートするとレースは決定的。前走ではやや鈍く感じられた末脚も今回は鋭く、2着イエロー・ローズバド Yellow Rosebud に2馬身半差を付ける完勝でした。頭差3着はライトニング・パール Lightning Pearl 。

これでメイビーは4戦4勝、これまでも来年の1000ギニーの本命に挙げられていましたが、今回の鮮やかな勝ち方によってオッズは更に4対1に上昇。ガリレオ Galileo 産駒という魅力も手伝って、来年の牝馬クラシックをリードする馬としての地位を確立した感があります。
オブライエン師によれば、次走はモイグレア・スタッド・ステークス(GⅠ)。連勝を何処まで伸ばすかが注目です。ところでオブライエン父子、この日のダ1レースに続きダブル達成でした。

三つ目は愈々GⅠのフェニックス・ステークス Phoenix S (GⅠ、2歳、6ハロン)。英愛仏で行われるシーズン最初の2歳馬によるGⅠ戦、この日は同じ条件の牝馬戦があるにも拘わらず2頭の牝馬が7頭の牡馬に挑戦、9頭立てで行われました。
7対4の1番人気は、デビュタント・ステークスのメイビー同様エイダン・オブライエン厩舎の3戦無敗馬パワー Power 、ロイヤル・アスコットでコヴェントリー・ステークス(GⅡ)を制した馬です。

レースはゴール前でゴチャゴチャする荒れた展開、2番人気のフレデリック・エンゲルス Frederick Engels がラチ沿いに抜けようとした瞬間に外のパリッシュ・ホール Parish Hall と接触、不運な6着という結果になっています。
比較的前、混戦の影響を受けなかった本命パワーが先行するリルボーン・ラッド Lilbourne Lad を捉えて勝利を目前にした瞬間、残り1ハロンでは後から二つ目、前のトラブルを避けるように馬群を縫ったラ・コリーナ La Collina が目の覚めるような瞬発力で襲い掛かり、首差で33対1のサプライズを現出しました。1馬身4分の3差3着にタフ・アズ・ネイルズ Tough As Nails 。

勝ったラ・コリーナは、敢えてこちらに回った牝馬の1頭。これが未だ3戦目ですが、前走シルヴァー・フラッシュ・ステークスでは上記メイビーに半馬身差で2着だった馬。前走はメイビーの脚が鈍く感じられたものですが、結果を見るとラ・コリーナは世評以上に強い馬なのかもしれません。
ケヴィー・ブレンダーガスト厩舎、デクラン・マクダナー騎乗の同馬、次走はモイグレア・スタッドということで、メイビーとの再対決が話題の中心になることは間違いなさそうですね。こちらも1000ギニーには8対1のオッズが出されました。

カラー競馬場の最後のパターン戦はフェニックス・スプリント・ステークス Phoenix Sprint S (GⅢ、3歳上、6ハロン)。1頭取り消して8頭立てで行われました。
ここは4対11の被った1番人気に支持されたディーコン・ブルース Deacon Blues がオッズを裏切らないスピードを見せ付けて圧勝しています。何と2着エンパワーリング Enpowering に7馬身差。更に1馬身で3着はアークティック Arctic 。

ジェームス・ファーンショウ師が管理する同馬は、前走シャドウェル・ステークス(GⅢ)を含めて3連勝。ハンデキャップ・クラスを卒業したばかりですが、短距離界の王者を目指して階段を一気に駆け上ってきた感があります。
ファーンショウ陣営には後述する通りソサエティー・ロックというスプリンターがおり、同じ日にドーヴィルのGⅠ戦で2着。師にとっては恰好なコンペンセーションになりました。
また騎乗したジョニー・ムルタは、一つ前のレースに続いてこの日ダブル達成です。

そのフランスはドーヴィル競馬場で行われた唯一のパターン・レースが、ドーヴィルのGⅠ第2弾となるモーリス・ド・ギースト賞 Prix Maurice de Gheest (GⅠ、3歳上、1300メートル)。
毎度紹介しているようにスプリンターは英国が強く、ここ2年も英国勢が勝利。今年の1番人気(13対10)も英シムコック厩舎所属、ジュライ・カップを鮮やかに差し切ったドリーム・アヘッド Dream Ahead でした。

レースはリブランノ Libranno とウットン・バセット Wootton Bassett (どちらも英国勢)の逃げ。ドリーム・アヘッドは抜け出す機会がありながら前走のような末脚は不発、原因不明の7着に敗退してしまいます。
優勝は、最後方待機、最後の3ハロンで進出し、残り1ハロンで鮮やかに抜け出した83対10のムーンライト・クラウド Moonlight Cloud 。2着ソサエティー・ロック Society Rock (上記ファーンショウ厩舎の英国馬、アスコットのゴールデン・ジュビリー勝馬)に4馬身差を付ける完勝です。3着は首差で古豪マルシャン・ドール Marchant d’Or が復活。4着も英国のゲンキ Genki 、5着がウットン・バセットという結果でした。2番人気のゾッファニー Zoffany (愛のオブライエン厩舎)は12着惨敗。

ムーンライト・クラウドを管理するフレディー・ヘッド師は、かつてマルシャン・ドール(今回3着)でこのレースを2006年から2008年まで3連覇しており、これが4勝目。鞍上はティエリー・ジャルネ。
勝馬は1000ギニーで1番人気に支持されながら7着に敗れていたクラシック世代、2~4着の古馬勢を打倒した形です。どうも1マイルをステイするスタミナに不足するようで、今後もスプリント路線に活路を見出すことが期待されます。

以上が当ブログの守備範囲ですが、今回はやはり日曜日に行われたドイツ・オークスにも触れましょう。ディアナ賞 Preis der Diana (GⅠ、3歳牝、2200メートル)が正式な名称、デュッセルドルフ競馬場で行われたドイツのクラシックを何故レポートするかと言うと、英オークスを逃げ切ったダンシング・レイン Dancing Rain がここでも鮮やかな逃げ切り勝ちを演じたから。
オークスをムルタ騎手で制したダンシング・レインは愛オークス(5着)こそ不発でしたが、敢えて挑戦したドイツで地元の牝馬たちに影を踏ませぬ楽勝。今回はアイルランドで乗っているムルタに替ってキーレン・ファロンが逃走劇の主役でした。

同馬を調教するウイリアム・ハッガス師、何とこの日はスコットランドでゴルフに興じていたとかで、馬に付き添ったのはハッガス夫人。
夫人によれば、“何でもゴルフはずっと前から決まっていた約束なんだって。今日はモバイルで中継を見ていた、なんて言ってましたわ” とのこと。管理するクラシック馬が海外遠征して二つ目のクラシックを狙うというのに、何だかねェ~。

ということで、日曜日のGⅠ3連発でした。

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