ソー・ユー・シンク、何処へ行く?

昨日はイギリスとアイルランドで夫々GⅠ戦が行われました。どちらを先に取り上げるか迷うところですが、アイルランドから行きましょうか。

レパーズタウン競馬場(馬場状態は good)のパターン戦は3鞍、内二つがGⅠという豪華カードでした。
先に紹介するのは後で行われたアイリッシュ・チャンピオン・ステークス Irish Champion S (GⅠ、3歳上、1マイル2ハロン)の方。豪州から来た怪物ソー・ユー・シンク So You Think と英国を代表する古馬牝馬スノー・フェアリー Snow Fairy の対決に注目が集まります。

6頭立て。エクリプス・ステークス以来となるソー・ユー・シンクが1対4という圧倒的な1番人気。日本流に言えば単勝1.25倍。大したことないじゃないかと思われるかもしれませんが、ヨーロッパではブックメーカーが出すオッズ。単勝が2倍を切れば1本被りの人気となります。
対するスノー・フェアリーは6対1(単勝7倍)で2番人気。既にエクリプスでは4着に負けていますが、彼女にとってシーズン初戦、敗因は明らかに休養明けでした。今回は鞍上にデットーリを迎え、一発逆転を狙います。

例によって3頭出しのエイダン・オブライエン厩舎、愛2000ギニー馬ロデリック・オコンナー Roderic O’Connor がペースメーカーと言わんばかりに飛ばします。ヘファーナン騎乗のソー・ユー・シンクはピタリとこれを2番手でマーク。デットーリのスノー・フェアリーも離されず3番手で追走する展開。
直線に入り、ヘファーナンがゴー・サインを出すと、ソー・ユー・シンクは並ぶ間も無くロデリック・オコンナーを交わします。同時に動いたスノー・フェアリー、2頭が他を引き離して一騎打ちに持ち込みますが、両者の差は縮まりませんでした。
結局ソー・ユー・シンクがスノー・フェアリーに半馬身差を付けて快勝。3着は6馬身差が付いてフェイマス・ネイム Famous Name の順。ロデリック・オコンナーは5着に沈みました。

さてソー・ユー・シンクの次走は何処か? これが問題でしょう。スピードとスタミナを兼ね備えた同馬、1マイル(クィーン・エリザベスⅡ世ステークス)でも1マイル4分の1(チャンピオン・ステークス)でも行けますし、もちろん1マイル半(凱旋門賞)もOK。
陣営では未だ差し迫った問題とは考えていないようで、最終決定は暫く先、オーナーと調教師の合議で決定されるとのことでした。

チャンピオンの前に行われたGⅠは、フサイチペガサス・メイトロン・ステークス Fusaichi Pegasus Matron S (GⅠ、3歳上牝、1マイル)。メイトロン(貴婦人)の名の通り、牝馬の頂上決戦です。
8頭立て、クラシック世代6頭が4歳馬2頭に挑む構図、古馬が5ポンド重い負担重量を背負います。

6対4の1番人気は、ここも3頭出しオブライエン厩舎のクラシック馬(愛1000ギニー)ミスティー・フォー・ミー Misty For Me 。前走プリティー・ポリー(GⅠ、10ハロン)を制しましたが、距離を1マイルに戻したのが不安材料。
イギリスとアイルランドの両ギニーで共に2着した同厩のトゥギャザー Together が3対1の2番人気、古馬を代表してエミュラス Emulous が9対2の3番人気で続きます。

バリーバッカ・レディー Ballybacka Lady の逃げを捉えてミスティー・フォー・ミーが一瞬先頭に立ちますが、馬がズブくなったか瞬発力は見られず。替って最後方から一気の瞬発力で抜け出したのが古馬エミュラスでした。
結局ゴールでは3馬身の大差を付けてエミュラスが優勝。2着にはトゥギャザーが脚を伸ばし、ミスティー・フォー・ミーは更に1馬身差で3着に終わりました。

エミュラスはデルモット・ウェルド厩舎、パット・スマーレン騎乗。オーナーはカーリッド・アブダッラー殿下で、今期絶好調の氏に又してもGⅠのタイトルが転がり込みました。
ウェルド師によれば、既にGⅢを3勝しているエミュラスはGⅠに勝てる器と信じていた由。次走はサン・チャリオット・ステークスでGⅠ連勝に挑みます。

レパーズタウンはもう一鞍、キルターナン・ステークス Kilternan S (GⅢ、3歳上、1マイル2ハロン)も行われています。7頭立て。ここにもオブライエン勢が3頭顔を揃え、エース格のヴァイカウント・ネルソン Viscount Nelson が13対8の1番人気。

レースはチーム・オブライエンのペースメーカー、フリーダム Freedom が飛ばしましたが、ヴァイカウント・ネルソンは直線入口で3番手も何故かバテ、7着どん尻に惨敗。
優勝を攫ったのは、直線入口で先頭を奪った13対2のガリレオズ・チョイス Galileo’s Choice 。1馬身4分の1差2着がオブライエンの副将格ルック・アット・ミー Look At Me 、更に2馬身半差の3着にフリーダムが逃げ残りました。

ガリレオズ・チョイスはデルモット・ウェルド厩舎、パット・スマーレン騎手のコンビで、メイトロンと合わせてパターン・レースのダブル達成。前々走はゴルウェイ競馬場の障害戦に勝ち、前走もキラーネイ競馬場の長距離戦(17ハロン)に勝っていた馬。
今や順応力の高さが売り物で、メルボルン・カップにも登録があるそうな。

続いてはイギリスのGⅠ戦に飛びましょう。ヘイドック・パーク競馬場(馬場状態は good to firm)の名物、ベットフレッド・スプリント・カップ Betfred Sprint Cup (GⅠ、3歳上、6ハロン)。

混戦の続く短距離界。役者揃いの13頭、人気は割れました。押し出されるように1番人気(4対1)に挙がったのは、ジュライ・カップに勝ちながら前走ドーヴィル(モーリス・ド・ギースト賞)では7着と凡走した3歳馬ドリーム・アヘッド Dream Ahead 。差の無い2番人気(5対1)は2頭が分け合い、共に4歳のベイテッド・ブレス Bated Breath とフーフ・イット Hoof It が続いていました。

如何にも波乱が予想されましたが、終わって見ればゴール前は上位人気3頭の叩き合い。早目先頭で馬場中央のドリーム・アヘッドを外からベイテッド・ブレス、内からフーフ・イットが挟むように追い込んで、3頭が鼻面を並べて写真判定に。
フーフ・イットの進路が狭くなった場面もあって審議にもなりましたが、結局はドリーム・アヘッド1着、ハナ差でベイテッド・ブレス2着、3着は頭差でフーフ・イットのまま確定しました。4着にゲンキ Genki の順。

ドリーム・アヘッドはデヴィッド・シムコック師の管理馬。ジュライ・カップは女流ヘイリー・ターナーが乗り替わって優勝しましたが、今回は本来の主戦騎手ウイリアム・ビュイック騎乗。ところでターナー騎手は、先のバース競馬場でゲート内の事故で足指を骨折し目下入院中。
ビュイックによれば、ドリーム・アヘッドは頭が大きい馬で、今回はそれが有利に働いたとか。いずれにしても前走の凡走を立て直したシムコック師の手腕は讃えられるべきでしょう。

ドリーム・アヘッドの次走は、距離が延びるフォレ賞(7ハロン)か、ランクを下げるブリティッシュ・チャンピオンズ・スプリント・ステークス(アスコット、GⅡ)になる予定。

土曜日のイギリスは、ケンプトン競馬場でもパターン戦が2鞍行われました。通常の芝コースではなく、ポリトラック。このコースでは数少ないパターン・レースです。この場合の馬場状態は standard と発表されていました。

最初はセプテンバー・ステークス September S (GⅢ、3歳上、1マイル4ハロン)。1頭取り消して7頭立て。
15対8の1番人気に支持されたハリス・トゥイード Harris Tweed が逃げ作戦に出ましたが、直線で本命馬の内を衝いて伸びた2番人気(2対1)モーダン Modun の差し切り勝ち。1馬身半差2着にはブロンズ・キャノン Bronze Cannon が追い込み、更に1馬身4分の3差でハリス・トゥイードの順。

モーダンはサー・マイケル・スタウト厩舎、シェーン・ケリーが騎乗していました。前走イボア・ハンデで4着していた馬で、G戦は初挑戦で初勝利となります。

最後は、同じくポリトラックのサイレニア・ステークス Sirenia S (GⅢ、2歳、6ハロン)。2頭取り消して7頭立て。
こちらは9対4の1番人気に支持されたシュムース Shumoos の順当勝ち。頭差2着に逃げたヴォケーショナル Vocational 、半馬身差3着がサイゴン Saigon の順。

シュムースはブライアン・ミーハン厩舎、マーチン・ダイヤー騎乗。前半は掛かり気味ながら4番手からの差し切り。1・2着馬は何れもロイヤル・アスコットのクィーン・メアリー・ステークス(優勝はベスト・タームズ Best Terms)に出走していて、前者が2着、後者は8着という結果でした。
シュムースの次走はチーヴリー・パーク・ステークスになる予定。

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