2011クラシック馬のプロフィール(11)

今年のクラシック馬の血統紹介も、今回が最終回です。先日のセントレジャーを制したマスケッド・マーヴェル Masked Marvel がテーマ。マスクド・マーヴェルと綴っても良いと思いますが、それは読み方次第でしょう。

マスケッド・マーヴェルは、父モンジュー Montjeu 、母ヴァルトマーク Waldmark 、母の父マーク・オブ・エスティーム Mark Of Esteem という血統の鹿毛馬。セントレジャーでGⅠ初制覇を果たしました。
小欄は主に牝系にスポットを当てるコーナーですが、今回は先ず父・モンジューについて若干復習をしておきましょう。

モンジューは競馬ファンなら既にご存知のように、サドラーズ・ウェルズ Sadler’s Wells の代表産駒の1頭。現代のサラブレッドでは最も繁栄しているノーザン・ダンサー系の種牡馬で、同じサドラーズ・ウェルズの産駒ガリレオ Galileo の良きライヴァルと言えるでしょう。
競走馬時代は、フランスを本拠地に置くジョン・ハモンド師によって調教師され、フランスとアイルランドのダービー、凱旋門賞とキングジョージ、サン=クルー大賞典とGⅠに5勝した名馬です。
クールモアで種牡馬として供用され、その産駒は2歳から能力を発揮するものの、本領はクラシック、それも2400メートル以上の距離で発揮するタイプが多いのが特徴。マスケッド・マーヴェルは、モンジューの7年目の産駒に当たります。

モンジューが如何に長距離クラシックに強いか、年度順に代表産駒を列記することにしましょう。

2002年産 モティヴェイター Motivator  英ダービー
2002年産 ハリケーン・ラン Hurricane Run  愛ダービー、凱旋門賞、キングジョージ
2002年産 モンターレ Montare  仏セントレジャー
2002年産 スコーピオン Scorpion  パリ大賞典

2004年産 オーソライズド Authorized  英ダービー

2005年産 フローズン・ファイア Frozen Fire  愛ダービー
2005年産 モンマルトル Montmartre  パリ大賞典

2006年産 フェイム・アンド・グローリー Fame And Glory  愛ダービー
2006年産 ジュークボックス・ジャリー Jukebox Jury 愛セントレジャー(同着)

2008年産 プール・モア Pour Moi  英ダービー
2008年産 マスケッド・マーヴェル Masked Marvel  英セントレジャー

もう一つ、モンジューを特徴づけるものに、ドイツ牝系との相性の良さが挙げられるでしょう。上記代表産駒の内、ハリケーン・ランとフェイム・アンド・グローリーがその配合によりますが、今回のテーマであるマスケッド・マーヴェルもその一頭に加わりました。
そこでマスケッド・マーヴェルの牝系を見ていきましょう。

最初にお断りしますが、ドイツ競馬については主な記録しか調べが付きません。あるいは重要な漏れがあるかも知れませんが、当項は現時点で判明した範囲内での事実に限らせていただきます。

先ず母ヴァルトマークは、ドイツ系ながら英国でサー・マイケル・スタウト師が管理した馬で、7戦1勝。2歳時に7ハロン戦に勝ち、3歳時にはフォルマス・ステークス(GⅡ、1マイル)でマカダミア Macadamia の2着。この時は不利があっての2着、勝っていてもおかしくないレース内容でした。
彼女は父マーク・オブ・エスティームの距離適性を強く受け継いだようで、1マイルで最も能力を発揮、1マイル半は一度だけ走って結果は出せませんでした。
3歳で現役を終えたヴァルトマルクの、現在までの繁殖成績は以下の通り。

2005年 ウォーレス・セイディー Wallace Saddie 鹿毛・せん 父サドラーズ・ウェルズ Sadler’s Wells  未出走、2009年に死去。
2006年 ギフテッド・アイコン Gifted Icon 栗毛・牝 父パントル・セレーブル Peintre Celebre 3戦1勝、フランスで2000メートルの勝馬。
2007年 サドラーズ・マーク Sadler’s Mark 鹿毛せん 父サドラーズ・ウェルズ 12戦1勝(現在まで)、ダウン・ロイヤル競馬場(アイルランド)の10ハロン戦の勝馬。
2008年 マスケッド・マーヴェル
2009年 ヴァルダーチ Walderche 栗毛・牝 父モンスン Monsun 未出走(現在まで)
2010年 牡 父ロック・オブ・ジブラルタール Rock of Gibraltar

これまでのところ、セントレジャー馬が最も成功した産駒ですね。

次に2代母ヴルフタウベ Wurftaube (1993年、栗毛、父アカテナンゴ Acatenango)は純粋なドイツ産。10戦7勝の優れた競走成績を持ち、牝馬ながらドイツ・セントレジャー(GⅡ、2800メートル)に勝ったクラシック馬でもあります。
彼女はクラシックの他に2400メートルのGⅡ、2200メートルのGⅢに2勝し、クラシック距離を得意にしていました。

ヴルフタウベは繁殖に挙がってからも名前を残しています。
先ず1999年の娘ヴァルトベーレ Waldbeere は、19戦9勝(G戦は6勝)したヴィーゼンプファド Wiesenpfad の母となりましたし、2004年のせん馬ヴァルトフォーゲル Waldvogel は28戦4勝、母が勝ったドイツ・セントレジャーで3着に入りました。
そしてマスケッド・マーヴェルと同期になる2008年産まれのヴァルトパーク Waldpark (鹿毛、牡、父デュバウィ Dubawi)は5戦4勝、ドイツ・クラシックの最高峰であるドイツ・ダービー(GⅠ、2400メートル)を制したのです。
(ドイツ・セントレジャーは未だ行われていませんので、結果はどうなりますか・・・)

3代母のヴルフバーン Wurfbahn (1987年、黒鹿毛、父フロンタル Frontal)は6戦1勝。2002年の牝馬ヴルフシャイベ Wurfscheibe が11戦4勝、2200メートルまでのGⅢ戦に3勝したのが最も活躍した産駒でしょう。

この牝系は、更に遡っても暫くはドイツ、ハンガリー、オーストリアの血脈が続きます。
ボビンスキーのファミリー・テーブルを紐解けば、1942年のアイルランド三冠馬ウインザー・スリッパー Windsor Slipper に、19世紀まで遡れば三冠馬グラディアトゥール Gladiateur まで登場する牝系。どちらにしてもスタミナを誇るファミリーであることは間違いないでしょう。

ファミリー・ナンバーは、5-h 。アン・オブ・ザ・フォレスト Ann of the Forest を源流とするファミリーです。

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