今週もトライアル

昨日の土曜日(9月17日)、イギリスとフランスで合計6鞍のパターン・レースが行われています。その半分は2歳戦、残り3鞍の内2鞍はトライアルの意味を持つ内容でした。何のトライアルかは使う側の意向ですが、イギリスから順に見ていきましょう。

先ずはスコットランドのエア競馬場 Ayr から、ファース・オブ・クライド・ステークス Firth Of Clyde S (GⅢ、2歳牝、6ハロン)。
このところイギリス北部は雨続き、馬場もタップリと水分を含み、soft 、所によっては heavy という重い状態。当初12頭が登録していましたが、馬場を嫌って2頭が取り消し、10頭立てで行われました。

9対4の1番人気に支持されたミス・ワーク・オブ・アート Miss Work of Art は、デビューから3連勝したもののパターン・レースでは壁にぶつかっていた馬。前走のセール戦で復調の気配が見え、相手関係からここならと期待されています。
そのミス・ワーク・オブ・アートは好走したものの、意外な伏兵(14対1)ロジャー・セズ Roger Sez が桁違いの脚で抜け出しました。終始追っ付け気味に後方から進んだ同馬、外に出すと一気に伸び、ミス・ワーク・オブ・アートに4馬身の大差を付ける圧勝です。更に3馬身4分の1差3着にメリー・フィルデス Mary Fildes の順。

勝ったロジャー・セズは、ティム・イースタービー厩舎、デヴィッド・アラン騎乗。2戦目の未勝利戦に勝ってから3連勝したものの、その後はリステッド戦も含め低調、今回同様の重馬場(ヨーク)でもサッパリの成績でした。
今回はどうやら初めて着用したブリンカーが功を奏したようで、苦手(な筈の)の馬場も苦も無く克服しています。師によれば、調教では全く動かないタイプだそうで、“私が管理した中では最も Lazy な馬” と評していたほど。

なお、このレースで6着入線のべシート Besito に騎乗したエディー・エイハーン騎手はレース終了後検量室に戻らず(6着までの騎手は後検量に臨むのがルール)、馬は失格となり最下位(10着)に降着となりました。更にエイハーン騎手には3日間の騎乗停止処分も。エイハーンくん、“ウッカリしてました。直ぐに次のゴールド・カップに乗る準備に行っちゃったもんで・・・” と言い訳頻り。

続いてはイングランド南部のニューバリー競馬場から3鞍。こちらの馬場は good 、所により goot to soft で、時折陽も射す天候でした。
この日はドバイがスポンサーとなる一日で、最初はアーク・トライアル Arc Trial (GⅢ、3歳上、1マイル3ハロン5ヤード)。アークとはもちろん凱旋門賞のことですが、ここから凱旋門賞に向かう馬はほとんどいないと思います。

今年は8頭立て。2対1の1番人気に支持されたグリーン・デスティニー Green Destiny が見事期待に応えました。半馬身差2着はアル・カジーム Al Kazeem 、2馬身4分の3差3着にはシー・オブ・ハートブレーク Sea Of Heartbreak 。2・3着は共にロジャー・チャールトン厩舎の馬です。
去年の勝馬デンジャラス・ミッジ Dangerous Midge は最後で脚を失くし、7着敗退に終わりました。

ウイリアム・ハッガス厩舎、キーレン・ファロン騎乗のグリーン・ディスティニーは、前走ヨーク競馬場のストレンソール・ステークス(GⅢ)を勝っていたため3ポンドのペナルティーが課せられていましたが、後方から外に出し、最後の20ヤードで突き抜けた脚は真に鮮やかでした。
この後はチャンピオン・ステークスでGⅠに初挑戦しますが、現在のオッズは16対1が相場のようです。

続いては2歳戦のミル・リーフ・ステークス Mill Reef S (GⅡ、2歳、6ハロン8ヤード)。
9頭立て、ここも1番人気(15対8)に支持されたカスパー・ネッチャー Caspar Netscher の順当勝ちです。半馬身差2着にリダクト Redact 、首差3着がサイゴン Saigon 。

前のアーク・トライアルと同様、勝ったカスバー・ネッチャーは前走パターン勝ち(ヨークのジムクラック・ステークスGⅡ)のペナルティー3ポンドがありましたが、これを克服してのGⅡ2連勝です。
アラン・マッケイブ厩舎の管理馬で、騎乗したキーレン・ファロンはアーク・トライアルに続きダブル達成。少し早目に先頭に立ったため右に寄れる場面もありましたが、ファロンの剛腕で直ぐに軌道修正、事なきを得ました。
ファロンによれば、カスパー・ネッチャーは調教より本番で走るタイプの由。陣営ではミドル・パーク・ステークスからブリーダーズ・カップ(ジュヴェナイル・ターフ)を目指したい意向のようです。

ニューバリーの最後は、最短距離のワールド・トロフィー World Trophy (GⅢ、3歳上、5ハロン34ヤード)。
最初から予告されていたようにキングスゲート・ネイティヴ Kingsgate Native が取り消して10頭立て。5対4の1番人気には3連勝中のディーコン・ブルース Deacon Blues が推されていました。

本命ディーコン・ブルースは、これまでデビューしてから今日の4歳まで徹底して6ハロン戦でのみ闘ってきた馬。初挑戦の5ハロンでも見事に後方からの差し足を発揮、スタンドに近い側から鮮やかに抜けてマサーマー Masamah に1馬身差を付ける快勝です。4分の3馬身差3着はディンカム・ダイアモンド Dinkum Diamond 。
ジェームズ・ファーンショウ師の管理、ランフランコ・デットーリ騎乗の同馬は、ワーキンガム・ハンデ、ハックウッド・ステークス(GⅢ)、フェニックス・スプリント(GⅢ)と4連勝、パターン戦は3連勝と絶好調。せん馬ながら、若きスプリンターとして今後の活躍に期待が掛かります。

さて、ここでフランスに飛びましょう。good の馬場状態のロンシャン競馬場。
2鞍のパターン・レースのうち、最初はシェーヌ賞 Prix Chenes (GⅢ、2歳、1600メートル)。牝馬には出走資格がない一戦です。
今年のフランスの2歳戦はチョッとした異変。ここまで行われてきたパターン戦では、シャンティーをベースにした大厩舎の馬が勝てないのです。どれも地方に本拠を置く比較的マイナーな厩舎の馬ばかり。昨日のシェーヌ賞もその一つとなりました。

6頭立て。1対2の圧倒的1番人気には3連勝中のセント・ペレリン Saint Pellerin が推されていましたが、優勝は36対5のヴィジール・ベール Visir Bere でした。
セント・ペレリンが順調に逃げましたが、2番手に付けたヴィジール・ベールが楽に抜け出し、本命馬に4分の3馬身差を付けて快勝。3馬身差3着にはカディニー Kadyny が入っています。

勝ったヴィジール・ベールは、メゾン=ラフィットをベースにして35頭を管理するディディエー・プロドム師の管理馬。クリストフ・スミオンが騎乗していました。プロドム師のパターン制覇は2勝目。
この後はサン=クルー競馬場のクリテリウム・インターナショナルに向かう予定です。

最後は凱旋門賞のトライアル最終便でもあるプランス・ドランジュ賞 Prix Prince d’Orange (GⅢ、3歳、2000メートル)。
8頭立て。人気は割れて、2対1に2頭が並んで1番人気を集めていました。仏ダービー2着のバブル・シック Bubble Chic と、これまで3戦無敗の新星デザート・ブラン Desert Blanc 。

しかし優勝は93対10のカサメント Casamento 。去年のレーシング・ポスト・トロフィーの勝馬で、今年は英2000ギニーと仏ダービーの2戦のみ、いずれも凡走していた馬の復活です。
1馬身差2着は大混戦で、写真判定と審議の結果、2着にバロッチ Barocci 、ハナ差3着にデザート・ブラン、短頭差4着がバブル・シック。審議はデザート・ブランの行き場が無くなったことについてでしたが、結局は入線通りで確定しました。

カサメントはゴドルフィンの馬。マームド・アル・ザローニの管理馬で、ミケール・バルザロナが騎乗していました。前半は最後方で待機、直線では馬場の中央を通って追い上げ、あと50ヤードで先頭に立つ鮮やかな差し切り勝ち。
今シーズンは、このレースを含めて未だ3戦のみ。このあとの大レースには全て登録があり、何処を目指すかは陣営の協議次第でしょう。

シーズン初戦を勝って以来結果を出せずにいたディープ産駒のバロッチが2着したことは、ファンにとって朗報となるでしょうか・・・。

一方でバブル・シックが敗退したことにより、今年の仏ダービーのレヴェルが改めて問題になっています。先のトライアルに勝ったリライアブル・マン Reliable Man の実力は如何に、と。

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