今度はチェスターでオブライエン父子ダブル

昨日はチェスター競馬場メイ・ミーティングの最終日、2鞍のパターン・レースが行われました。馬場は連日の soft 、所によって heavy という力のいる馬場で、多くの馬が出走を取り消しています。

最初はダービー・トライアルの一つ、ディー・ステークス Dee S (GⅢ、3歳、1マイル2ハロン75ヤード)。6頭が登録していましたが、2頭が取り消して4頭立てという寂しいメンバーになってしまいました。
とは言っても内容は中々濃いもの。4頭の内3頭に跨るのは、イギリスでリーディング・ジョッキーのタイトルを獲得したことのある名手たちです。即ち、2番人気(3対1)のユライアー・ヒープ Uriah Heep にはライアン・ムーア、3番人気(10対3)のキングズディザイアー Kingsdesire がジェイミー・スペンサー、そして最低人気(7対1)のオックスフォード・チャーリー Oxford Charley にキーレン・ファロンと。
では1番人気(11対10)は何かと言うと、エイダン・オブライエン厩舎、ジョセフ・オブライエンが騎乗するアストロロジー Astrology です。ヴェテランの名手に混じって19歳のオブライエンがどう伍すか? それも見ものでした。

レースは一方的、スタートから先手を奪ったアストロロジーが終始ペースをリードし、そのペースを上げるごとに追走馬が次々と脱落する展開。先ずはムーアのユライアー・ハープ、次にスペンサーのキングスディザイア―。ファロンのオックスフォード・チャーリーは最後まで食い下がっていましたが、結局はアストロロジーが2着オックスフォード・チャーリーに11馬身差の圧勝。3着は更に5馬身でキングスディザイア―、4馬身半差でユライアー・ヒープがしんがり。

アストロロジーは2歳時、レパーズタウンで新馬勝ちしたあとカラーのフューチュリティー・ステークス(GⅡ)で3着、ニューマーケットのオータム・ステークス(GⅢ)でも3着。これがシーズン・デビュー戦、ガリレオ Galileo 産駒で母はサンタラリー賞に勝ったアスク・フォー・ザ・ムーン Ask For The Moon という良血馬だけに、ダービーが楽しみになってきました。
この勝利でダービーへのオッズは20対1、オブライエン師も典型的なガリレオ産駒と評しています。

続いてはオーモンド・ステークス Ormonde S (GⅢ、4歳上、1マイル5ハロン89ヤード)。ここも5頭が登録していましたが、残念ながら出れば圧倒的な本命と思われていたスタウト厩舎のシー・ムーン Sea Moon が取り消し、4頭立てとなってしまいました。
替って断然の1番人気(イーヴン)に推されたのは、又してもオブライエン厩舎、息子ジョセフが騎乗するメンフィス・テネシー Memphis Tennessee 。去年のセントレジャー2着馬でファロンが騎乗するブラウン・パンサー Brown Panther が6対5の2番人気で続きます。

レースはディー・ステークス同様本命のメンフィス・テネシーが好スタートからハナに立と、前半は先頭で流れを作ります。しかし小回りコース、最初のスタンド前でブラウン・パンサーが仕掛けて前に出ると、スタンドからは一斉に喝采が起きました。続けてオブライエンにしてやられるか、という意地でしょうか。
これにスペンサー騎乗の6歳牝馬ヴィヴェイシャス・ヴィヴィエンヌ Vivacious Vivienne が競り掛けて最後のコーナーを回ります。ヴィヴェイシャス・ヴィヴィエンヌは、ほぼ1年前にレパーズタウンのリステッド戦(マグラス・メモリアル)でフェイム・アンド・グローリー Fame And Glory に半馬身まで迫った馬、2頭の一騎打ちになるかと思われました。
しかし一旦3番手に下げていたメンフィス・テネシーは、実は死んだふり。外に持ち出して馬場の良いコースを選ぶとグイグイと脚を伸ばし、2着ヴィヴェイシャス・ヴィヴィエンヌに4馬身差を付ける完勝。4歳にしてこれが初出走というカリコ・キャット Calico Cat が、2着に1馬身4分の1差まで迫る3着。競り合いで馬体に支障を来したのか、ブラウン・パンサーは15馬身も遅れて失望のドン尻負け。

エイダン・オブライエン調教師、ジョセフ・オブライエン騎手の両者にパターン・ダブルをもたらしたメンフィス・テネシーは、去年3歳時は3戦しか経験せず未勝利でしたが、ダービーで4着、愛ダービーでも3着に食い込んだ馬。
オブライエン師によれば、同馬は3歳から4歳にかけて大きく成長中、大柄な馬で仕上げにも時間がかかる由。今回は重い馬場でしたが、良馬場ならもっと力を出せるタイプだそうです。今後はコロネーション、キングジョージなどを目標にするでしょうが、より短い距離への適応も課題と言えましょう。

チョッとした話題になっているのが、いきなりのデビュー戦にパターン・レースを選んであわや2着と驚かせた(オッズは66対1でした)カリコ・キャット。アステリア・リッダーデールという方が調教し、騎乗していたのは女流ジョッキーのカーチャ・スコーラン。彼女にとっては最も注目を浴びた一日だったようです。

さて昨日はフランスでもG戦が一鞍組まれていました。シャンティー競馬場のギッシュ賞 Prix de Guiche (GⅢ、3歳牡、1800メートル)。仏ダービーのトライアルですが、ダービーと同じシャンティーで行われる唯一のトライアル戦であることが注目されます。

こちらも馬場状態は soft 、6頭が出走してきました。2対1の1番人気に支持されたのは、アガ・カーンの持ち馬でロワイヤー=デュプレ厩舎、メゾン=ラフィットの2000メートル戦で初勝利を挙げたマンドゥーア Mandour 。

ルメール騎乗のマンドゥーアは果敢に逃げ、残り1ハロンまで先頭を死守していましたが、そこからはラフなレースに一転、後続馬が雪崩れ込んでの混戦となります。
ゴール板では3頭が横一戦、3番手を進んだ4番人気(37対10)のサン・ボードリーノ Saint Baudolino が5番手から伸びた2番人気(5対2)のソーファスト Sofast に短首差先着、更に首差で本命マンドゥーアが粘って3番手の順。
1馬身4分の3差の4着で入線した3番人気(3対1)ザナドゥー Xanadou は、ゴール前の接戦でクリストフ・スミオン騎手が落馬寸前の不利。このアクシデントに関係した勝馬のマキシム・グィヨン騎手とスミオン騎手が裁決に呼ばれて審議になりましたが、最終的には接触が無くてもザナドゥーの4着は変わらなかったという判断。着順通りで確定しました。日本では降着になったでしょうね。

勝ったサン・ボードリーノはアンドレ・ファーブル厩舎の管理馬。ファーブル師にとってギッシュ賞は5勝目ですが、1999年のヴァル・ロイヤル Val Royal 以来13年振りの優勝でした。グィヨン騎手は初勝利。
最初に紹介したように、ギッシュ賞は距離は短いながら仏ダービーと同じコース。これまでここからダービーを制したのは14頭、最も新しい事例は2007年のロウマン Lawman です。上位に食い込んだ馬たちは、更に伸びる300メートルへの適性があるか否かが課題でしょう。

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