プレッチャー師の魔術

日曜日のフロリダ、ガルフストリーム・パーク競馬場でクラシックに向けた重要なトライアルが2鞍行われました。牝馬版と牡馬版、レース順に展望しましょう。

ガルフストリーム・パーク競馬場のフォワード・ギャル・ステークス Forward Gal S (GⅡ、3歳牝、7ハロン)。1981年創設。1970年のチャンピオン2歳牝馬フォワード・ギャルを記念して命名されたレースで、ケンタッキー・オークスへのトライアルの一つと見做されている一戦。1986年にGⅢに格付けされ、2004年(?)からGⅡに格上げされました。
今年の勝馬はブロードウェイズ・アリバイ Broadway’s Alibi 。6頭立て。スタートからゴールまでパーフェクトな逃げ切り勝ちです。雨でダートコースがぬかるんでいたいたこともありますが、直線ではリードをぐんぐん広げ、2番手のまま2着に流れ込んだセイ・ア・ノヴィーナ Say a Novena に何と16馬身4分の3の大差を付けていました。日本なら「大差」という表記になる着差です。新星ブロードウェイズ・アリバイはデビュー戦こそ2着だったものの、その後2連勝で臨んだ初ステークス、6対5の1番人気に支持されて見事に勝利で飾りました。ここまでの3連勝で付けた着差は合計で28馬身4分の3になるそうです。元旦に行われたオールド・ハット・ステークスの1・2着馬サクリシティー Sacricity とセイ・ア・ノヴィーナ、今回は3・2着と順位が逆転しました。両馬の着差は2馬身。
調教師はトッド・プレッチャー、騎手はジョン・ヴェラスケス。

ホーリー・ブル・ステークス Holy Bull S (GⅢ、3歳、8ハロン)。以前にフロリダ州にはハイアリア競馬場 Hialeah という重要なコースがありましたが2004年に閉鎖されてしまいます(現在はクォーター・ホースの競馬場として再開)。そのハイアリア競馬場の名物レースだったフラミンゴ・ステークス Flamingo S に替るものとして1990年に創設されたのがこれ。当初はプレヴュー・ステークス Preview S として実施されていましたが、1996年に競馬殿堂入りの名馬ホーリー・ブルの名を冠したレース名に変更されています。来るフロリダ・ダービーの重要なトライアルとなる一戦。尚、フラミンゴ・ステークスはグレード制導入以来通してGⅠ戦でしたが、1989年を最後にその歴史を閉じました。
今年の勝馬はアルゴリズムス Algorithms 。6頭立て。BCジュヴェナイルを無敗で制し、去年の2歳チャンピオンに選ばれたハンセン Hansen 始動に大きな注目が集まりましたが、逃げる大本命(4対5)ハンセンを2~3番手で追走したアルゴリズムスが直線入口で並び掛け、初めてハンセンの前を走る馬となると、そのまま5馬身差を付けて圧勝しました。ハンセンは半馬身差でマイ・アドニス My Adonis の急追を凌ぎ、2着を死守。大金星をあげたアルゴリスムスは去年6月にデビュー勝ち(ベルモント、5馬身4分の1差)、12月に2戦目のクレーミング戦(ガルフストリーム)でも1馬身差で連勝していた馬。無敵ハンセンを破るとすればこの馬、との評価から5対2の2番人気に支持されていました。
アルゴリスムスは血統的にも注目で、去年マイアミ・マイル・ハンデ(芝GⅢ)に勝ったサクセスフル・ミッション Successful Mission 、ウッディー・スティーヴンス・ステークス(GⅡ)に勝ったフスティン・フィリップ Justin Phillip と2頭のグレード戦勝馬の半弟に当たります。
一方4戦目にして初黒星を喫したハンセンは、スタートで躓きやや出遅れたこと、コースが不良の泥んこ馬場だったこと、負担重量が他馬より重かったこと、BC以来約3ヶ月ぶりの実戦だったことなどが敗因に挙げられるでしょうか。陣営は敗戦をあまり気にしていない様子でした。
調教師はまたしてもトッド・プレッチャー、騎手はハヴィエル・カステラノ。プレッチャー師はこの日、3歳のアローワンス戦でも三冠を目指すエル・パドリーノ El Padrino でも楽勝、クラシック候補を続々と送り出してきています。またカステラノ騎手は、アルゴリスムスの父ベルナルディーニ Bernardini でプリークネスを制したジョッキー、クラシックに向けて心強いパートナーと言えるでしょう。

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