今年のケンタッキー・ダービー、去年の再現となるか

ヨーロッパ競馬のレポートに続き、土曜日のアメリカ競馬を復習しておきましょう。今週は比較的静かで、土曜は三つの競馬場で4鞍のグレード戦が行われました。

先ずはガルフストリーム・パーク競馬場からパン・アメリカン・ステークス Pan American S (芝GⅡ、4歳上、12ハロン)。去年のレース紹介に1962年が創設年であることを追加しておきましょう。
今年は6頭が登録していましたが、最終的には2頭が取り消して4頭立ての寂しいレースになってしまいました、馬場は firm の芝コース。2月26日に行われた前哨戦ともいえるマック・ダイアルミダ・ステークスで接戦の1・2着馬の再対決が見所でしょう。そのとき3番人気で制したシマード Simard が123ポンドと負担重量が加算され、1番人気で微差2着のニュースダッド Newsdad が117ポンド据え置き。これが人気にも反映され、有利なニュースダッドが3対5の1番人気、シマードは9対5の2番人気でした。
結果も人気通り、負担重量と延長された距離が有利に働いたニュースダッドが期待に応えました。前半は最後方(と言っても差の無い4番手ですが)に待機、2番手から3コーナーで先頭に立ったシマードを直線入口で捉えると、伏兵(10対1、最低人気)へイルストーン Hailstone の追撃を2馬身抑えての優勝。シマードは重量が堪えたか首差3着に終わりました。逃げたハロッズ・クリーク Harrods Creek がしんがり。
ウイリアム・モットが調教、ジュリアン・ルパルーが騎乗したニュースダッドは、これが8度目のグレード戦挑戦にして初勝利。1ハロン短い前走でのハナ差負けの雪辱を果たしました。モット師にとっても、これがこのレース初制覇。

続いてターフウェイ・パーク競馬場からはクラシックに繋がる見逃せない3歳戦2鞍。
最初がバーボネット・オークス Bourbonette Oaks (GⅢ、3歳牝、8ハロン)。去年の紹介に歴史を追加すれば、GⅢに格付けされたのは2006年からです。
今年は fast の馬場に1頭が取り消して8頭立て。4対5と圧倒的1番人気に支持されたイン・ランジェリー In Lingerie が鮮やかな逃げ切り勝ちを演じました。逃げ切りというよりもここでは力が違う感じ。2着には前半2番手から一旦は下げたダンシング・ソロ Dancing Solo がそのまま6馬身差で流れ込み、3着は更に5馬身半差が開いてトクシス Toxis の順。1・2着は共にトッド・プレッチャー師が管理する馬で、プレッチャー師のワン・ツー・フィニッシュです。勝ったイン・ランジェリーにはジョン・ヴェラスケスが、2着にはハヴィエル・カステラノが騎乗していました。
イン・ランジェリーは、1月にターフウェイ・パークの新馬戦を6馬身差でデビュー勝ち(この時はオーナーも調教師も別の陣営)した馬。2戦目(ここで転厩)のガルフストリームでは2着敗退していましたが、3戦目のここはターフウェイ・パークに戻ってのステークス初挑戦・初勝利です。

そしてヴィネリー・レーシング・スパイラル・ステークス Vinery Racing Spiral S (GⅢ、3歳、9ハロン)。アメリカにグレード制が導入された1973年から長い間GⅡに格付けされてきましたが去年からGⅢに降格されました。その年の勝馬アニマル・キングダム Animal Kingdom がケンタッキー・ダービー馬になったのは何とも皮肉なことでしたね。
今年は12頭立て。ミスター・プランクスター Mr. Prankster 、ラシアン・グリーク Russian Greek と2頭のステークス勝馬が出走していましたが、2対1の1番人気に支持されていたのはプレッチャー厩舎の2戦無敗馬へヴィー・ブリージング Heavy Breathing でした。
レースは本命へヴィー・ブリージングが逃げましたが、4~5番手のインコースを追走した3番人気(5対1)のウエント・ザ・デイ・ウェル Went the Day Well が進出して第4コーナーで先頭。直線入口では外に寄れる若さを見せながらも、外から追い込むプレッチャー厩舎の伏兵(25対1)ホリデー・プロミス Holiday Promise を3馬身半差抑えて快勝。本命へヴィー・ブリージングは更に1馬身遅れの3着。2・3着はプレッチャー厩舎の馬が占める結果となりました。
勝ったウエント・ザ・デイ・ウェルは、何と去年の覇者アニマル・キングダム Animal Kingdom と同じチーム・ヴァロー・インターナショナルの持ち馬。去年は英国で走っていました(エド・マクマホン厩舎)が、オーナー代表が渡英した際に馬を見、惚れ込んで買った馬、ケンタッキー・ダービー候補として大注目の1頭となりました。アメリカでの2戦目(3月3日、ガルフストリーム)が初勝利、これがステークス初挑戦です。
もちろん管理するのは去年のケンタッキー・ダービー馬と同じグレアム・モーション師。鞍上はバーボンネット・オークスをイン・ランジェリーで制したジョン・ヴェラスケス、グレード戦ダブル達成です。尚、同馬の名前は第二次世界大戦を描いたイギリス映画のタイトルから採られた由。本番前にもう一叩きする予定ですが、未だどこを使うかは決まっていません。

最後にサンタ・アニタ競馬場からトーキョー・シティー・カップ Tokyo City Cup (GⅢ、4歳上、12ハロン)。このレースの経緯については去年紹介していますが、かつてはサン・ベルナルディーノ・ハンデ San Bernardino H として行われていたレース。旧名のレースは1957年創設、グレード制導入時からGⅡに格付けされてきましたが、2003年にGⅢに降格されました。その後2005年に大井競馬場とサンタ・アニタ競馬場の提携を記念して新しい競争として再スタートを切った経緯があります。こちらも参考にして下さい。
いずれにしてもアメリカ競馬ではメイン・コースで行われる12ハロン戦は稀、距離適性が明確でない馬が多いこともこのレースの特徴として挙げられるでしょう。

http://www.tokyocitycup.com/jpn/jpn2/tokyo_city_cup_jp.html

今年は8頭立て、馬場は fast 。去年のBCマラソンの覇者エルダーファー Eldaafer が出走してきたにも拘らず人気は無く8対1。替って9対5の1番人気に支持されたのは、前走サンタ・アニタ・ハンデは7着と凡走したトゥワイス・ザ・アピール Twice the Appeal 。120ポンドと最も重い負担重量ながら去年のサンランド・ダービー(GⅢ)勝馬で、今年既に3戦という使われた強みが買われたのでしょうか。
しかし結果は2番人気(5対2)のダハーマー Dhaamer (去年まで英国のゴスデン厩舎で走っていた馬、これがアメリカ・デビュー)と3番人気(5対1)ダイナミック・ホスト Dynamic Host の叩き合いとなり、ダイナミック・ホストが首差ダハーマーを抑えての優勝です。4馬身4分の1差3着にスキップショット Skipshot の順。エルダーファーは4着、本命トゥワイス・ザ・アピールは6着敗退でした。大外8番枠、しかもスタートでやや出遅れて最後方を進んだダイナミック・ホストでしたが、ペースがスローの長距離戦ということでジックリと向正面で差を詰め、直線ではインコースを通って外のダハーマーとの叩き合いを制しました。
アート・シャーマンが調教、デヴィッド・フローレスが騎乗したダイナミック・ホストは、昨夏デルマーで行われた芝コースのクレーミング戦でシャーマン師が入手した6歳せん馬。これがG戦初制覇で、陣営にとっても初勝利となります。陣営によれば、次走は芝コースのサン・ファン・カピストラーノになるとか。

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