チーム・オブライエンの作戦勝ち

昨日のサンダウン競馬場、相変わらずの不良馬場の中、二日目のG戦2鞍が行われました。

最初はゴードン・リチャーズ・ステークス Gordon Richards S (GⅢ、4歳上、1マイル2ハロン7ヤード)。10頭の登録がありましたが、馬場に恐れをなして4頭が取り消し、6頭立てで行われています。
前走ニューマーケットのアール・オブ・セフトン・ステークス(GⅢ)でクエスチョニング Questioning に惜敗したとは言え、二走目の変わり身が期待されるトゥワイス・オーヴァー Twice Over が6対4の1番人気に支持されていました。重の鬼ポエト Poet も、前走ロンシャンのアルクール賞(6頭立て6着)を叩かれての良化が期待されて2番人気(15対8)。

ライアン・ムーア騎乗のポエトが果敢に先頭を奪ってペースを作ります。やや掛かり気味のトゥワイス・オーヴァーは3番手待機にしますが、直線入口では馬場の影響か動きは今一つ。
2番手を追走していた3番人気(10対3)のコロンビアン Colombian がポエトを捉えにかかり、残り2ハロンで並ぶと後は両馬の激しいバトル。最後はさすがに重得意のポエトも力尽き、コロンビアンがポエトに3馬身差を付けて捻じ伏せました。更に6馬身差が開いてトゥワイス・オーヴァーが3着。4着ソス・ブリヤンテ Sos Brillante との差は30馬身もありました。最後は勝った馬も負けた馬も止まってしまうほどバテバテ。

コロンビアンはジョン・ゴスデン厩舎、ウイリアム・ビュイック騎乗。1勝馬ですが、去年は仏ダービーに挑戦して4着。その後もフランスのG戦に二度遠征して3・4着した実績があります。英国馬ながらフランス生活が長い存在、ヨルダンのハヤ王女の持ち馬。

雨風が更に強まる中、ダービーへのトライアルとして位置づけられるクラシック・トライアル Classic Trial (GⅢ、3歳、1マイル2ハロン7ヤード)に注目が集まります。一つ前のゴードン・リチャーズと同じ距離。ここは最初から4頭立てという小頭数の競馬でした。
2歳時に新馬勝ちしただけの馬が2頭、キャリアは豊富で今シーズンも既に1戦1勝の馬が2頭というメンバーで人気も拮抗、小頭数とはいえ難解な一戦です。11対8の1番人気は、エイダン・オブライエン厩舎がアイルランドから遠征させてきた1戦1勝のインペリアル・モナーク Imperial Monarch

レースは何とも言えないドラマチックな展開になりました。スタートが最も良かったのは、ジョセフ・オブライエン騎乗の本命インペリアル・モナークでしたが、直ぐに同じく1戦1勝のソート・ワージー Thought Worthy がハナを叩いて先頭に出ます。
ところが、ここで何を思ったかジョセフがインペリアル・モナークを3頭から離して大外に向かっていきます。内コースを通る3頭と、大外(スタンド側)をポツンと走る本命馬。先日のオルフェーヴルを思い出させるシーンでした。
しかし、これはアクシデントではなく作戦。カメラに映らないほど外ラチを回ったインペリアル・モナーク、直線(1000メートル)入口では内の馬たちと6~8馬身はあった差は直線で一気に詰まり、3頭とは大きく離れたまま先頭でゴール。内を先頭のまま駆け抜けたソート・ワージーに1馬身4分の3差を付けていました。3着は9馬身差で2番人気(11対4)のルージュモン Rougemont 、更に31馬身でスティピュレート Stipulate がしんがり。

オブライエンの奇襲策、実は本馬場入場の際に父(調教師)エイダン、息子(騎手)ジョセフ、馬主代表のポール・スミスの3人が協議して決めたこと。レース前にコースを歩いて馬場状態を確認したジョセフが、“内コースは競馬にならない。大外だけが走れるコース”と進言しての結果でした。それにしても思い切った判断をしたもの。若いに似合わずジョセフはやるなぁ~。
この結果、インペリアル・モナークのダービーへのオッズは20対1に上がりました。目下の本命は同じ厩舎のキャメロット Camelot ですが、馬場がどうなるかは判りませんからね。この日の思い切ったレースを見ておく価値はあるでしょう。

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