オブライエン師ワン・ツーも、

この時期、ヨーロッパでは連日のようにＧ戦が行われます。ニューマーケットのギニーは終わりましたが、ダービー・オークスへのトライアルは今が酣、アイルランドとフランスのクラシックはこれからですからね。

ということで昨日は月曜日であるにも拘らず、カラー競馬場でＧ戦が２鞍行われました。最初はアサシ・ステークス Athasi S (ＧⅢ、３歳上牝、７ハロン)。愛１０００ギニーのトライアルと見做されがちですが、古馬牝馬にも出走権があります。
馬場は相変わらず不良が続き、発表は soft to heavy 。出走馬は５頭、３歳牝馬が主体ですが、唯１頭４歳も出走していました。先日レパーズタウン競馬場で行われた１０００ギニー・トライアル(ＧⅢ)参戦組が人気上位で、夫々８・９着(９頭立て！)だったブルブル Bulbul とイシュヴァーナ Ishvana が１・２番人気(５対４、１１対８)でした。

人気の２頭は人気通りに走りましたが、纏めて負かしたのが唯一の４歳馬ゴッサメール・シード Gossamer Seed 。スタンドに近い側のラチ沿いを３番手から抜け出し、ブルブルに４馬身４分の３馬身差を付ける完勝でした。更に２馬身４分の１差でイシュヴァーナが３着。
ジョン・ジョセフ・マーフィー師が管理するゴッサメール・シードは余り耳にしない名前ですが、それもそのはず、これまではハンデ戦とリステッドが主体。２年間で２勝のみ、今回がＧ戦初挑戦という存在でした。負担重量も３歳馬たちより１ストーン近く重く、人気も９対１の４番人気、要するにブービー人気で、この圧勝は想像できなかったのが正直なところでしょう。
騎乗したのはシェーン・フォレイ騎手。確かこの馬には初騎乗で、同馬に跨ったのはフォレイが６人目のはず。ただ重馬場が滅法巧いのは事実で、今後も重馬場を求めて走り続けるのだとか。

続いてはムーアスブリッジ・ステークス Mooresbridge S (ＧⅢ、１歳上、１マイル２ハロン)。７頭が出走してきましたが、エイダン・オブライエン厩舎の馬が３頭。去年は陣営のエース、ソー・ユー・シンク So You Think がシーズンの足慣らしで勝ったレースですね。
２対５の断然１番人気に支持されたセント・ニコラス・アビー St Nicholas Abbey は去年のＢＣターフを制した馬、今年はドバイでシーマ・クラシック２着(優勝はシリュス・デ・ゼーグル Cirrus des Aigles)から帰国しての初戦です。相手(５対２の２番人気)もオックス厩舎のシャレスタン Sharestan 唯１頭という前評判で、他の５頭は全く人気がありませんでした。しかし落とし穴はあるもの。

レースはオブライエン陣営のペースメーカー、ロビン・フッド Robin Hood が逃げます。これを同じくオブライエンの第２ペースメーカーとも言えるウインザー・パレス Windsor Palace がマークし、有力２頭は遥か後方で待機する展開。
しかし勝負所になっても人気馬は動かず、遂には１０馬身もの大差が開いてしまいました。さすがに拙いと思ったシャレスタンのムルタ騎手が仕掛けましたが、大本命のジョセフ・オブライエンは未だジッとしたまま。結局は６６対１と無視されていたカーム・オダナヒュー騎乗のウインザー・パレスが先手の利を活かして抜け出し、漸く追い込んだセント・ニコラス・アビーに１馬身差を付けて番狂わせを演じました。先に仕掛けたシャレスタンが１馬身半差で３着。

この騎乗、当然ながらジョセフに批判が集まります。２０００ギニーでの好騎乗が絶賛されてきただけに、今回の失策？は恰好の標的になったかもしれません。いくら力が違っても、あんなに離されたら届かないだろう、と。
しかし親父さん(エイダン師)は擁護の立場。帰国後最初のレース、距離が短いこと、苦手の重馬場だったことがセント・ニコラス・アビーの主な敗因。ダルビッシュばりに“単なる負けの一つ、今日は彼の日じゃなかっただけ。それが競馬でしょ”と平然たるもの、予定通りエプサムのコロネーション・カップに向かいます。
一方のウインザー・パレスは今年７歳のヴェテラン、今シーズンはカラーのアイリッシュ・リンカーンでデビューしたあとグラッドネス・ステークス(ＧⅢ)が３着。この時は勝った馬がエクスセレブレーション Excelebration ですから、名誉ある敗北というもの。元来重馬場をメチャメチャ得意とする馬ですから、今回は「彼の日」だったの一言でしょうか。

なお、この日はリステッドながら愛２０００ギニーのトライアルとなるテトラーク・ステークス Tetrarch S (３歳、７ハロン)も行われました。５頭が出走し、勝ったのはジョン・オックス厩舎、ジョニー・ムルタ騎乗のタカール Takar 。５対４の１番人気に応えています。
当然、次走は愛２０００ギニーで、有力馬の１頭に上がってくるでしょう。

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