人気馬総崩れの愛1000ギニー
日曜日は日本でも東京優駿に沸きましたが、ヨーロッパでも愛仏でGⅠ戦4鞍、正にレーシング・サンデーだったようです。先ずはブログのタイトルでもあるクラシック・レースから。
アイルランドのカラー競馬場では、前日の愛2000ギニーに続いて愛1000ギニー Irish 1000 Guineas (GⅠ、3歳牝、1マイル)が行われました。馬場状態は前日と同じ good 、所により good to firm 。天候にも恵まれて、東京同様観客にとっては絶好の競馬日和になったようです。
出走馬は8頭。英1000ギニーを9馬身差で圧勝し、大波乱を演出したホームカミング・クィーン Homecomong Queen が今回はジョセフ・オブライエンを背に11対8の1番人気。前走がフロックでないことを証明すべくクラシック・ダブルを目指します。
そのニューマーケットでは5着に終わったものの、2歳時にGⅠ(フェニックス・ステークス)で前日の愛2000ギニーを制したパワー Power を破って優勝しているラ・コリーナ La Collina の巻き返しが期待されて2番人気(7対2)。以下、レパーズタウンの1000ギニー・トライアル(GⅢ)勝馬イエロー・ローズバド Yellow Rosebud が3番人気(9対2)、仏1000ギニーに挑戦して4着したアフター After が4番人気(11対2)で続いていました。
しかし結果はニューマーケットほどではないにしても大波乱。僅かに8頭立てながら、上記の人気上位4頭はいずれも3着までに入れませんでした。
ニューマーケットの再現を目指してホームカミング・クィーンが先頭でレースを引っ張りますが、勝負所でオブライエンが押せども馬は動かず、3番手に付けていた5番人気(12対1)のサミター Samitar が並び掛けるとズルズル後退、結局は勝馬から7馬身遅れの4着に沈んでしまいます。
サミターは先頭に立つとそのまま危なげない脚色、2着に追い上げる最低人気(33対1)のイシュヴァーナ Ishvana に1馬身半差を付けていました。更に2馬身4分の1差3着も下から2番目の人気(25対1)のプリンセス・シニード Princess Sinead 。ここから本命馬までは更に3馬身4分の1差が開いていました。2番人気ラ・コリーナは6着、3番人気イエロー・ローズバド7着、4番人気アフター5着という結末。
サミターを管理するミック・シャノン師にとっても、騎乗したマーチン・ハーリー騎手にとっても嬉しいクラシック初制覇。騎乗したハーリーは、道中も負ける気がしない程に馬の気合が良く、特別な感覚だった由。
2歳時にはロイヤル・アスコットでGⅢ(アルバニー・ステークス)に勝ち、GⅠのフィリーズ・マイルでも2着していた実績の持ち主。ただ、今期は初戦にニューマーケットの6ハロン戦で8着、前走仏1000ギニー遠征も9着と、2歳時の力を発揮できずにいたことが人気を落としていた理由でしょう。シャノン師も、シーズン初戦に短距離を使ったことは失敗だった、と認めています。
このあとサミターはロイヤル・アスコットのコロネーション・ステークスに向かいますが、シーズン開始前にアメリカ人馬主に買われたことから、その後はアメリカに転厩することが決まっています。
クラシックに先立って、カラーでは古馬のGⅠ戦も行われています。トトソルズ・ゴールド・カップ Tattersalls Gold Cup (GⅠ、4歳上、1マイル2ハロン110ヤード)。
僅か5頭立てですが、去年の覇者ソー・ユー・シンク So You Think が再び雄姿を現しました。2対11という考えられる限りの圧倒的本命。相手になるのはレパーズタウン競馬場のスペシャリストで、今期も既に彼の地で2勝しているフェイマス・ネイム Famous Name 。大きく離されて7対1の2番人気。後は全て脇役扱いです。
レースも予想通り。ソー・ユー・シンクのペースメーカー役ロビン・フッド Robin Hood が飛ばし、2番手に付けた本命馬が残り2ハロンで先頭に立つと後は独演会。フェイマス・ネイム騎乗のパット・スマーレンが逆転すべく鞭を一発、しかし差は縮まるどころか増々開き、スマーレンは瞬時に2着確保に戦術を変更します。
結果、ソー・ユー・シンクとフェイマス・ネイムの着差は6馬身。2着と3着ロビン・フッドの差も7馬身半の決定的な差が付いていました。去年はライアン・ムーア騎乗で4馬身半差、今年はジョセフ・オブライエン騎乗で6馬身と、10ハロンでの圧倒的な強さは伝説級と言えましょうか。
今期はドバイ・ワールド・カップ(人気で4着)以来となるソー・ユー・シンクは、これがGⅠ9勝目。トトソルズ・ゴールド・カップは去年に続き2連覇となります。(出身地のオーストラリアではコックス・プレート2連覇を含め5勝、エイダン・オブライエン厩舎に移ってからはエクリプス、愛チャンピオンを合わせて4勝)
管理するエイダン・オブライエンによると、ソー・ユー・シンクはタテガミも尾も他の馬に比べて2倍の速度で伸びるのだそうで、それが馬に一層ワイルドな風貌を齎しているのだそうな。
この後はロイヤル・アスコット(クイーン・アンかプリンス・オブ・ウェールズ)、エクリプス・ステークスを経て豪州で種牡馬入りするスケジュール。今回がアイルランドのファンにお目見えする最後の機会でした。
カラー競馬場のもう一つのG戦は、二つのGⅠに先立った行われたガリニュール・ステークス Gallinule S (GⅢ、3歳、1マイル2ハロン)。ダービーと言うより愛ダービーのトライアルとなる一戦です。
1頭取り消して8頭立て。去秋トトソル・ステークス(GⅢ)に勝ち、今期はクレイヴァン・ステークスで2着したクライアス Crius がG勝ちのペナルティーにも拘わらず13対8の1番人気に支持されていました。
そのクライアスが逃げますが、やや掛かり気味。追い出しても馬に反応は見られません。代わって先頭に立ったのは5番手を進んだスピーキング・オブ・ウイッチ Speaking Of Which 。これも掛かり気味でしたが、パット・スマーレンの合図に応えて2着スーン Soon に9馬身差の圧勝です。3着は1馬身4分の3差で2番人気(7対2)のアザンス Athens 。
勝馬はデルモット・ウェルド師の管理馬で、3歳デビュー、前走2走目にコークで初勝利を挙げたばかり。当然ながら愛ダービーに向かうでしょう。
アイルランドは以上、次はフランスのロンシャン競馬場に向かいます。こちらはレース順に見ていきましょうか。
先ずは仏オークスに向けた最大のトライアルとなるサン=タラリ賞 Prix Saint-Alary (GⅠ、3歳牝、2000メートル)。馬場は good にまで回復しています。
1頭取り消して8頭立て。イーヴンの1番人気に支持されたのは、ここまで地方競馬ながら5戦無敗、ロッシ厩舎のラ・パンテュール La Peinture という新星。
レースはハスナ Hasna が強いペースで逃げましたが、ゴール前は3頭が並ぶ接戦。優勝は2番人気(21対10)のサガワラ Sagawara でした。短首差2着に3番人気(15対2)ルジワ(?) Rjwa 、3着も短首差でフォーシス・オブ・ダークネス Forces Of Darkness 。本命ラ・パンテュールはメンバー中最も良い脚を使う瞬間もありましたが、結局は3着から半馬身差で4着。この馬には距離がやや長いという印象を与えました。
勝ったサガワラはアラン・ド・ロワイヤー=デュプレ厩舎、クリストフ・ルメール騎乗。前走ヴァントー賞(GⅢ)で2着していたアガ・カーンの持馬で、ストライドの大きな馬。当然ながら次走は仏オークス、舞台となるシャンティー競馬場はストライドの大きな馬に有利と言われるだけに、ここをステップとしてクラシック制覇を目指します。
一方2着のフランソワ・ロホー陣営も強気。サガワラを破って先のヴァントー賞を制したトロワ・リュヌ Trois Lunes 共々、ルジワも牝馬クラシック第2弾が目標です。
ところでサガワラは2歳のデビュー戦(サン=クルーの1600メートル)ではビューティー・パーラー Beauty Parlour に3馬身半負けの2着。仏オークスではビューティー・パーラー対サン=タラリ好走組という構図になるのでしょうか。
続いては豪華メンバーがズラリと顔を揃えたイスパハン賞 Prix d’Ispahan (GⅠ、4歳上、1850メートル)。8頭立てです。
出走馬中、実に5頭がGⅠ馬。人気のある順に紹介すると、4対5の1番人気に支持されたシリュス・デ・ゼーグル Cirrus des Aigles はせん馬ながら昨秋のチャンピオン・ステークスや今期のガネー賞などGⅠ3勝馬。2番人気(4対1)プランテール Planteur は去年のガネー賞馬で、仏ダービーとパリ大賞典2着馬。
続く3番人気(43対10)のゴールデン・ライラック Golden Lilac は去年の牝馬2冠(仏1000ギニー、仏オークス)馬、4番人気(78対10)リライアブル・マン Reliable Man は去年の仏ダービー馬。他に人気は落ちているものの、去年の仏2000ギニー馬ティン・ホース Tin Horse も今期初戦を迎えます。
レースは本命シリュス・デ・ゼーグルが例によって逃げ作戦。しかし、久し振りの実戦とあって前半はやや掛かり気味にハナを争ったゴールデン・ライラックが最後の1ハロンで桁違いの瞬発力で本命馬を抜き去り、4分の3馬身差の快勝です。2着シリュス・デ・ゼーグルと3着プランテールとは半馬身差でした。リライアブル・マンは7着、ティン・ホースも6着敗退。
去年の8月以来の休み明けとなるゴールデン・ライラック、このメンバーでも瞬発力は一番であることを証明しました。次走は未定だそうですが、凱旋門賞のオッズが20対1と表示されています。
一方、負けたシリュス・デ・ゼーグル陣営に失望感は全くありません。この馬には距離が若干短いこと、馬場もやや乾き過ぎたことが敗因と言えば敗因。負けてなお強しの印象。
ゴールデン・ライラックに騎乗したマクシム・グィヨン騎手にとってはイスパハン賞初制覇ですが、管理するアンドレ・ファーブル師は最多勝記録に並ぶ8勝目。20世紀前半に活躍したチャールズ・センブラ調教師の記録を超えるのも時間の問題と言えそうです。
因みにファーブル記録は、1982年アル・ナスル Al Nasr 、1984年クリスタル・グリッターズ Crystal Glitters 、1990年クリエイター Creator 、1993年アーカンギュー Arcangues 、1998年ループ・ソヴァージュ Loup Sauvage 、2005年ヴァリジール Valixir 、2007年マンデュロ Manduro 。
日本にも馴染の名前がありますが、1998年のループ・ソヴァージュは昨日の日本ダービーを制したディープブリランテの母の父。その辺りはいずれ取り上げる血統プロフィールで詳しく紹介する積りです。
さてロンシャンの最後はヴィコンテッス・ヴィジエ賞 Prix Vicomtesse Vigier (GⅡ、4歳上、3100メートル)。フランス版ゴールド・カップですね。
出走馬は8頭、4月末に行われたバルべヴィユ賞(GⅢ、馬場は heavy )の結果が人気にも反映していました。即ち同レース2着だったプレーリー・スター Prairie Star が乾いた馬場で1番人気(3対1)、勝ったユージェーロ Usuelo は3番人気(48対10)に落ちています。
レースは長距離2冠を狙ってユージェーロが逃げましたが、2番手を進んだ4番人気(53対10)のアイヴォリー・ランド Ivory Land が最後でユージェーロを半馬身捉えて優勝。3着に1馬身4分の3差で本命プレーリー・スターの順。
バルべヴィユ賞3着で仏セントレジャー馬タック・ド・ボアストロン Tac De Boistron は5着、去年のカドラン賞勝馬カスバー・ブリス Kasbah Bliss も6着敗退。
アラン・ド・ロワイヤー=デュプレ厩舎、ステファン・パスキエ騎乗のアイヴォリー・ランドは、バルべヴィユ賞では5着に負けていた馬。明らかに重馬場が敗因で、今回は良化した馬場で能力を発揮したと言えるでしょう。今年のアスコット・ゴールド・カップには登録がありませんが、いずれはチャレンジしたいというのが陣営の意向だそうです。
まとめtyaiました【人気馬総崩れの愛1000ギニー】
日曜日は日本でも東京優駿に沸きましたが、ヨーロッパでも愛仏でGⅠ戦4鞍、正にレーシング・サンデーだったようです。先ずはブログのタイトルでもあるクラシック・レースから。ア…