ベルモントの波乱
今週、と言うか5月28日はメモリアル・デイの休日のためアメリカの週末は3連休。G戦は土曜日と月曜日に組まれるという変則日程になっています。
土曜日は4つの競馬場で1鞍づつ、合計4鞍のG戦が行われましたが、3鞍は芝コースでの戦いでした。
最初にアーリントン・パーク競馬場のポリトラック・コースで行われたアーリントン・メイトロン・ステークス Arlington Matron S (GⅢ、3歳上牝、9ハロン)から行きましょう。
馬場は fast 、7頭が出走してきました。9対5の1番人気に支持されたのは一昨年のアーリントン・オークスを制したアッパーライン Upperline 、アーリントン・オークス/アーリントン・メイトロンのダブルを達成したのはこれまで3頭だけ。4頭目の快挙に期待が集まります。
レースはフー・ホワイ Hooh Why の逃げ。3番枠スタートの本命アッパーラインは内ラチ沿いに3番手を進み、直線ではやや外に持ち出して逃げ馬を捉えると、そのまま4馬身差を付けて期待に応えました。逃げたフー・ホワイが2着、1馬身4分の3差3着にはアリアーナ・ディー Ariana D が入っています。
マイケル・スティドハム厩舎、ジェームス・グレアム騎乗のアッパーラインは、前走キーンランドのビウィッチ・ステークス(芝GⅢ)に続くG戦連勝、芝でもポリトラックでもOK。オークス/メイトロン・ダブルは4頭目の快挙となりました。
因みにこれまでダブルを成し遂げたのはスイーテスト・チャント Sweetest Chant 、マリア―ズ・ストーム Mariah’s Storm 、ミーガンズ・ブラフ Megan’s Bluff 。ミーガンズ・ブラフは3歳での2冠、他の2頭は3・4歳での勝利。2年越しの達成は今回のアッパーラインが初めてとなります。
続いてはベルモント・パーク競馬場のシープスヘッド・ベイ・ステークス Sheepshead Bay S (芝GⅡ、3歳上牝、11ハロン)。雨の予報が出ていたためダートに変更されることを考え、コースが替った時に備えて4頭が予備登録していました。しかし結局予報は外れ、good の芝コース。当初登録からも1頭が取り消して9頭立てで行われました。
レースはスタートで大波乱、結果よりもアクシデントの方が大きく取り上げられる結末になってしまいました。即ち、1番枠スタートのミスティカル・スター Mystical Star がゲートをこじ開けるように飛び出し、いわばフライング・スタート。それを横で見ていた2番枠マジカル・キャット Magical Cat のアシスタント・スターターが、やり直しになると判断して馬の手綱を握ったまま。他馬が一斉に出たためにレースは正式に始まってしまいましたが、マジカル・キャットはレースがかなり進んだ時点でのスタート。結局は第1コーナーでヴェラスケス騎手が馬を止めてしまいます。
アクシデントの原因を作ったミスティカル・スタートはスタートで大きくあおったものの3着で入線。長い審議が行われた結果、ミスティカル・スタートは降着となり最下位に、またマジカル・キャットは正式には不出走(取り消し)と記録されることに決定されました。
肝心のレースはアクサーム Aqsaam が大逃げを打ち、4番手から徐々に進出した1番人気(2対1)のアルーナ Aruna が4コーナー手前で一気にスパート、2番手を進んだヒット・イット・リッチ Hit It Rich に1馬身4分の1差を付けて人気に応えています。半馬身差で3着にミスティカル・スターが入りましたが、前記のように降着。代わって4位で入線したプリンシパル・ロール principal Role が繰り上がりました。
グレアム・モーション厩舎、ラモン・ロドリゲス騎乗のアルーナは、去年ポリトラック・コースのスピンスター・ステークス(GⅠ)を制したGⅠ馬。BCフィリー・アンド・メア・ターフでは勝馬から1馬身ほどの5着に健闘しており、コースを選ばないタイプと言えるでしょう。
この日3つ目は、チャーチル・ダウンズ競馬場からルイヴィル・ハンディキャップ Louisville H (芝GⅢ、3歳上、12ハロン)。firm の馬場に8頭立て。前走キーンランドのエルクホーン・ステークス(芝GⅡ)で2着したブラジル産のタホー・レイク Tahoe Lake が2対1の1番人気に支持されていました。
レースはデペシェ・チャット Depeche Chat とハロッズ・クリーク Harrods Creek が交替で引っ張る展開。4番手から徐々に進出した2番人気(7対2)のシマード Simmard が直線で鮮やかに抜け、最後方から大外を衝いて追い込むジョイネム Joinem に1馬身4分の1差を付ける快勝です。更に半馬身で本命タホー・レイクが3着。勝時計2分27秒16はステークス・レコードでした。
シマードはカナダを本拠とするロジャー・アトフィールド師の管理馬、ガブリエル・サエズ騎乗。今シーズンは芝コースのGⅡで3戦し、ガルフストリームのマック・ダイアルミダ・ステークス優勝、同じくガルフストリームのパン・アメリカン・ステークス3着、キーンランドのエルクホーン・ステークスでもタホー・レイクに続く3着と堅実に走ってきた馬です。
最後はハリウッド・パーク競馬場で行われたアメリカン・ハンデキャップ American H (芝GⅡ、3歳上、8ハロン)。一昨年までは9ハロンでしたが、去年から1マイルに短縮された一戦です。
芝コースの馬場状態は firm 、2頭が取り消して9頭立て。1番人気(3対5)には3ヶ月ぶりながら、今期サー・ボーフォート・ステークス、アルカディア・ステークスと連勝し、圧倒的人気になった前走フランク・キルロー・マイルで首差2着惜敗しているミスター・コモンズ Mr. Commons が選ばれていました。
レースはこれも久し振りの実戦となるライベリアン・フレイター Liberian Freighter と、1番枠スタートの2番人気(2対1)コンパーリ Compari が引っ張る展開。しかし3番手に待機していた伏兵(44対1、7番人気)ウィルキンソン Wilkinson が直線で抜け出すと、最後方から猛然と追い上げる本命ミスター・コモンズに1馬身4分の1差を付けて番狂わせを演じました。3着は半馬身でライベリアン・フレイター。
人気の盲点だったウィルキンソンは、去年2月にルコント・ステークス(GⅢ)に勝ってクラシック路線に浮上したものの、ルイジアナ・ダービー(6着)、ブルー・グラス・ステークス(10着)と敗退。昨夏のサラトガでアローワンス戦に勝った後は6連敗中でした。前走のエルクホーン・ステークスは6着。このレースの3着馬シマードが同じ日にチャーチル・ダウンズのルイヴィル・ステークスを制したのだから皮肉です。
ここまではネイル・ハワード師が調教していたのですが、レースの僅か5日前に現在のジェフ・マリンズ厩舎に転じたばかり。マリンズ師も、実質の調教師はハワード師ですよ、と驚きを隠せない様子。マーチン・ペドローザが騎乗していました。
ミスター・コモンズは3か月の休養明けとトップ・ハンデの122(勝馬とは8ポンド差)を考えれば好走、またライベリアン・フレイターも去年7月以来の実戦を考えれば、共に次は狙い目と言える内容でしょう。
まとめtyaiました【ベルモントの波乱】
今週、と言うか5月28日はメモリアル・デイの休日のためアメリカの週末は3連休。G戦は土曜日と月曜日に組まれるという変則日程になっています。土曜日は4つの競馬場で1鞍づつ…