トレーヴ始動

日曜日は、ロンシャン競馬場に世界の目が注目していました。去年の凱旋門賞を圧勝したトレーヴ Treve が連覇を目標に始動するからです。この日はG戦が3鞍、レース順に紹介しましょう。

最初は、オークスに繋がるトライアル戦のヴァントー賞 Prix Vanteaux (GⅢ、3歳牝、1850メートル)。馬場は very soft と重く、6頭が出走してきました。3月末に新馬勝ちしたばかりのヴァジラ Vazira がイーヴンの断然1番人気。
3番人気(48対10)ショコラティエ Chocolatier の逃げを中団で待機したヴァジラ、早目に抜け出すと、後方から追い込む4番人気(66対10)でG戦の経験もあるケンザダルジャン Kenzadargent を短首差抑えて人気に応えました。3馬身差で2番人気(16対5)のクリソール Crisolles が3着。

新馬に続き2戦2勝でG戦勝馬となったヴァジラは、アガ・カーンの所有馬でアラン・ド・ロワイヤー=デュプレ厩舎、クリストフ・スミオン騎乗。サンタラリ賞からオークスを狙う器ですが、フランス競馬界では木曜日(4月24日)に条件戦に勝った同じ陣営のシャムカラ Shamkala の話題でもちきり。この馬も2戦2勝で、アガ・カーンでさえ“ヴァジラよりシャムカラが上”と言うほどの馬。
しかしヴァジラも半姉ヴァダヴィナ Vadawina はサンタラリ賞に勝って仏オークス4着した馬。加えてヴァジラの父は凱旋門賞馬シー・ザ・スターズ Sea the Stars ということもあって1マイル半にはより適していると思われます。フランスよりイギリスかアイルランドのオークス向きとも言えますが、カラーには登録があるもののエプサムには追加登録が必要。アガ・カーン陣営としてはこの2頭をどう使い分けて来るのか、目が離せません。秋にはトレーヴの強敵となる可能性もありましょう。

そのトレーヴ Treve がシーズン初戦に選んだのが、ガネー賞 Prix Ganay (GⅠ、4歳上、2100メートル)。ヨーロッパのシーズン最初のGⅠ戦でもあります。出走馬は8頭、もちろん凱旋門賞以来の実戦ながらトレーヴ(ランフランコ・デットーリ)が2対5の断然1番人気。相手はドバイのシーマ・クラシックでジェンティルドンナの2着した古豪シリュス・デ・ゼーグル Cirrus des Aigles (クリストフ・スミオン)。これが33対10の2番人気で、2頭の一騎打ちという前評判でした。
トレーヴのペースメーカーを務めるベル・ド・クレシ― Belle de Crecy が逃げ、後続を引き離します。直線、先に先頭に立ったシリュス・デ・ゼーグルに、最後方から鋭く伸びるトレーヴが並び掛けると、あとは後続が付いて行けない歴史に残るデッドヒート。最後まで譲らなかったシリュスがラストの一歩でトレーヴを短首差抑えて死闘を制しました。3着以下は4馬身半離され、前走ダルクール賞(GⅡ)の1・2着馬スモーキング・サン Smoking Sun とノーズ・キング Norse King の争いとなり、1馬身4分の1差でノース・キングが先着しました。

ここまで5戦無敗だったトレーヴは初黒星を喫しましたが、明らかに休み明けが敗因。一方シリュス・デ・ゼーグルはドバイを含めこれが3戦目。仕上がりで上回っていたことが結果に繋がったと考えられましょう。トレーヴ陣営に落胆の色は無く、順調なスタートを切ったと満足気。
コリーヌ・バランド=バルブ夫人の管理するシリュス・デ・ゼーグルは、2012年に続き2度目のガネー制覇。GⅠもチャンピオン・ステークス、シーマ・クラシックとを合わせて4勝目となります。ヨーロッパのせん馬としては傑出した記録と言えるでしょう。両馬は次走としてロイヤル・アスコットのプリンス・オブ・ウェールズ・ステークスを予定。オッズはトレーヴの6対4に対し、シリュスは7対2。一叩きされたトレーヴ優位というのが一般的な見方です。

最後は長距離のバルべヴィユ賞 Prix de Barbeville (GⅢ、4歳上、3100メートル)。10頭が出走し、今期サン=クルーで行われたバルべヴィユ・トライアルとなるリステッド戦(ライト・ロイヤル賞、3100メートル)の2着馬ゴーイング・サムホェア Going Somewhere が27対10の1番人気。勝ったオッシ・セレーブル Aussi Celebre は6番人気でしたが、ゴーイング・サムホェアは去年のロワイアル・オーク賞2着という実績があるだけに、叩かれれば実力は上という評価でしょう。
レースはグリーン・バイロン Green Byron が逃げ、ゴーイング・サムホェアは先行。しかしスローペースが合わなかったのか本命馬は動けず、中団に待機した3番人気(31対5)のモンクレール Montclair と5番人気(66対10)テルービ Terrubi の叩き合い。結局モンクレールがテルービをハナ差抑えて優勝しました。1馬身4分の1差で最後方から追い込んだ4番人気(32対5)のフライ・ウィズ・ミー Fly With Me が3着。ゴーイング・サムホェアは10着最下位と惨敗し、オッシ・セレーブルも9着敗退。

アンドレ・ファーブル厩舎、ピエール=シャルル・ブードー騎乗のモンクレールは、去年の3歳シーズンを3レース続けてG戦入着で終え、今期は本命馬2着したそのリステッド戦では3着だった馬。春の長距離戦の目標であるヴィコンテス・ヴィジエ賞が当面の目標でしょう。ただオーナーはオーストラリアのシンジケートだけに、秋(南半球は春)のメルボルン競馬祭に使うことを視野に入れているのは間違いなさそう。

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