仏オークスのサプライズ

昨日は日本からも注目が集まったフランス・オークス、ディアーヌ賞 Prix de Diane (GⅠ、3歳牝、2100メートル)が行われました。馬場は good to soft 。
枠順発表でも紹介したように出走馬は12頭、イーヴンの1番人気に支持されたのは、仏1000ギニーを圧勝して4戦無敗のビューティー・パーラー Beauty Parlour 。父が日本産馬ディープインパクトであることが、わが国でも注目された要因です。第2のザルカヴァという過熱報道も・・・。
ビューティー・パーラーのエリック・ルルーシュ厩舎では、同じ馬主(エキュリー・ウイルデンシュタイン)のベスト・オブ・オール Best of All をペースメーカーとして出走させ、万全の態勢で臨みました。
因みにフランスで馬券を買う場合は同じ馬主の馬は「組み」(カップル)となり、仮にペースメーカーが勝っても配当は同じですが、イギリスの場合は夫々にオッズが付けられます。

その意味で今年の仏オークスはアガ・カーンの所有馬が3頭、クールモアの馬も3頭、オーギュスタン=ノルマンという馬主も2頭を出走させ、事実上6つの陣営の争いでもありました(調教師は夫々別でしたが)。

レースは意外にも2番人気に支持されたキスド Kissed の逃げで始まります。クールモアのエース格、ジョセフ・オブライエンが騎乗しましたが、2週前の仏ダービーでの苦い経験から、前で競馬をしてトラブルを避けたいという意向があったようです。これをベスト・オブ・オール、サガワラ Sagawara (サン=タラリ賞勝馬)が追走し、ビューティー・パーラーは4番手で待機する展開。
直線、キスドが急速に後退するのと同時に、満を持してビューティー・パーラーが先頭に立ち、後続との差を広げに掛かります。この時点ではシナリオ通りに進んだ本命馬の楽勝と思われましたが、前半は後方の内で置かれ気味だった伏兵(28対1)のヴァリラ Valyra が外に持ち出すと、残り120ヤードで一気にビューティー・パーラーを交わして4分の3馬身差で快勝。2着ビューティー・パーラーと3着ルジワ Rjwa との着差は3馬身差でしたから、上位2頭の力が抜けていたということでもありましょう。
更に4馬身の大差が付いて4着がフォーシズ・オブ・ダークネス Forces of Darkness 、首差5着に3番人気(73対10)のダルカラ Dalkala の順。サガワラは8着、後ろから2番目でゴールしたキスドはレース後に左前種子骨骨折が判明、オブライエン夫人から同馬の引退が発表されました。

大逆転を演じたヴァリラはジャン=クロード・ルジェ厩舎、ジョニー・ムルタ騎乗。ルジェ師は2009年のスタチェリタ Stacelita に続き仏オークス2勝目、ムルタ騎手は初制覇です。オーナーはアガ・カーン、出走していた3頭の中では最も人気の無いアウトサイダーで、オーナーも吃驚の逆転劇でした。
アガ・カーンにとっては仏オークス7勝目。これまでの記録を列記すると、1993年シェマカ Shemaka 、1997年からはヴェレヴァ Vereva 、ザインタ Zainta 、ダルヤバ Daryaba が3連勝。2008年にあのザルカヴァ Zarkava が、そして一昨年のサラフィナ Sarafina が七重奏を形成します。
騎乗したムルタ騎手は直前に騎乗依頼があった由。アイルランドでのアガ・カーン所有馬に騎乗しているムルタは、馬の手応えの良さから、道中で早くも勝利を確信していたそうな。距離もより長い2400メートルに適しているとコメントしています。

ヴァリラは3歳になってからボルドー(2000メートル戦)でデビュー勝ち、2戦目のシャンティー条件戦(同じく2000メートル)にも勝って仏オークスは僅か3戦目。無傷のクラシック馬となりました。
ルジェ師によれば、ボルドーで勝った時に同馬の素質を確信し、追加登録料を支払って仏オークス参戦を決めたそうな。ブックメーカーはヴァリラの凱旋門賞のオッズを14対1と発表、オッズではビューティー・パーラー(12対1から下がり)と並びました。
現時点では凱旋門賞への登録は無く、出走には追加登録が必要。この点を問われて、アガ・カーン氏は躊躇うことなく“Yes!” と答えています。

仏オークス・デイは競馬よりもパリジェンヌたちのファッションが話題になる日、この他にも2鞍のG戦が組まれていました。

リス賞 Prix du Lys (GⅢ、3歳牡せん、2400メートル)は7頭立て。前走オカール賞2着のマスターストローク Masterstroke が4対5の圧倒的1番人気に支持されていました。

しかし結果は5番人気(149対10)の伏兵、ルミュ・ドゥ・ラ・トゥール Remus de la Tour の逃げ切り勝ち。マクシム・グィヨン騎乗のマスターストロークも最後で逃げ馬を追い詰めましたが、短首差届かず。3着は4分の3馬身差でアガ・カーンのアシュキール Ashkiyr 。
デイヴィー・ボニラが騎乗した勝馬は、ローカル競馬の調教師ケヴェン・ボルジェルが管理する馬。これまでヴィシー、カーニュ=シュル=メール、リヨンとローカルで3勝、前走はリヨンのリステッド戦(2400メートル)での勝利でした。

最後は1マイルのシュマン・デュ・フェル・デュ・ノール賞 Prix du Chemin de Fer du Nord (GⅢ、4歳上、1600メートル)。11頭立て、ここも1番人気(2対1)のムーンウォーク・イン・パリ Moonwalk in Paris が伏兵に脚を攫われて2着という結果になりました。人気になったムーンウォーク・イン・パリは、前走エドモン・ブラン賞(GⅢ)を含め昨冬から3連勝中の馬。
228対10の7番人気で勝ったのは、南西フランス、スペイン国境に近いラ・テスト・ド・ビュシュで厩舎を営んでいるヤン・デュレペール師が管理するヴァガボンド・シューズ Vagabond Shoes という馬。ステファン・パスキエが騎乗していました。4分の3馬身差で2着に本命のムーンウォーク・イン・パリ、更に1馬身4分の1差で3着には2番人気(23対10)のエヴァポレーション Evaporation が入りました。唯1頭イギリスから遠征したフュリー Fury は5着。
勝馬のオーナーはスペイン人で、去年のメッシドール賞(GⅢ)の勝馬。この冬はドバイで3戦(未勝利)して以来のレースでした。今年もメッシドール賞を狙ってくるでしょう。

さて日曜日にはアイルランドのコーク競馬場でもG戦が1鞍行われました。ノーブレス・ステークス Noblesse S (GⅢ、3歳上、1マイル4ハロン)、soft の馬場に8頭立て。

こちらは11対8の1番人気に支持されたサファイア Sapphire が順当に勝って期待に応えています。逃げたゴールドプレイテッド Goldplated の3番手の内に付け、残り2ハロンで先頭に立っての楽勝。2着は4馬身4分の3差でオークス8着のベターベターベター Betterbetterbetter 、更に3馬身半でスーン Soon が3着。2・3着はいずれもオブライエン勢です。
デルモット・ウェルド厩舎、パット・スマーレン騎乗のサファイアは、これがG戦初勝利ながら去年のブランドフォード・ステークス(GⅡ)では2着していた4歳馬。去年10月にカラーのリステッド戦に勝って以来の競馬でしたが、十分に仕上がっていたようです。
陣営によれば重馬場を得意とし、好走するには馬場状態が重要とのこと。条件が整えばGⅠクラスの器で、次走は距離の短いプリティー・ポリー・ステークス(GⅠ、10ハロン)になる予定だそうです。

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1件の返信

  1. まとめtyaiました【仏オークスのサプライズ】

    昨日は日本からも注目が集まったフランス・オークス、ディアーヌ賞 Prix de Diane (GⅠ、3歳牝、2100メートル)が行われました。馬場は good to soft 。枠順発表でも紹介したように出走

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