仏オークス、無敗馬が制す
昨日の日曜日、シャンティー競馬場でフランス・オークスが行われました。何故か公式のレース結果が未入電ですので、一部不明な点もあります。
この日のシャンティーは good 、パターン・レースは3鞍でしたが、最初に行われたのが通称フランス・オークスたるディアーヌ賞 Prix de Diane (GⅠ、3歳牝、2100メートル)です。
出走馬は既に枠順発表で紹介したように11頭。仏1000ギニー馬上位3頭が揃い、当然ながら2冠の掛かるフロティーラ Flotilla が2対1の1番人気に支持されていました。同2着のエソテリク Esoterique が2番人気(3対1)で続き、2歳牝馬チャンピオンでトライアルのサン=タラリ賞も制したGⅠ2勝馬シラソル Silasol (7対2、3番人気)との対決が見所でしょう。
最初に先手を取ったのはバルチック・バロネス Baltic Baroness でしたが、これを突くように本命馬のペースメーカーを務めるセージ・メロディー Sage Melody が先頭を奪って流れを作ります。有力各馬は牽制するように後方から。
混戦が予想されましたが、勝負は決定的でした。後方から進んだ4番人気(83対10)の新星トレーヴ Treve が矯めていた脚を放つと、残り300メートルで一気に抜け、これも最後方から追い込む伏兵(16対1)チキータ Chicquita に4馬身の決定的な差を付けて圧勝。ゴール前僅かに粘ったシラソルが短首差で3着に残っています。凡走はギニー組で、フロティーラは良い所なく8着惨敗、エソテリクも7着で、辛うじてギニー3着のタサデイ Tasaday が4着に入ったのが最高位でした。
トレーヴは単に圧勝だっただけでなく、走破タイムの2分3秒77はコースレコード。2006年にコンフィデンシャル・レディー Confidential Lady が作ったレコード・タイムを2秒以上短縮しています。
勝馬を管理するのは、ヘッド・ファミリーの姐御的存在のクリティック・ヘッド=マーレク女史。最近は勝馬に恵まれず低迷感がありましたが、GⅠ勝ちは2010年にムーラン・ド・ロンシャン賞をフュイッセ Fuisse で制して以来のこと。仏オークスは1982年のハーバー Harbour 、2000年のエジプトバンド Egypyband に続く3勝目となります。騎乗したティエリー・ジャルネは仏オークス初制覇。また、父モティヴェイター Motivator にとって最初のクラシック馬でもあります。
トレーヴはステークス出走そのものが初経験で、2歳時に9月のロンシャンで新馬勝ち。2戦目に5月15日にサン=クルー競馬場で条件戦を勝って2戦2勝。この時点で姐御はファミリーの総裁たる父ヘッド(引退したアレック、数々の名馬を育てた名調教師)に相談した所、“頭がおかしくなったんじゃないか”と言われたとか。とても成績からはクラシックを制するとは信じられなかった存在です。
しかしクリティックは密かに自信があったようで、このあとは9月まで休養、差し当たっては牝馬のみのGⅠ戦を目指すとのこと。凱旋門賞には登録がありませんが、追加登録すれば可能。この圧勝でブックメーカーが出したオッズは8対1、オルフェーヴルの出走に暗雲が立ち込めた直後だけに、競馬界は新たな人気馬を探すのに躍起となっているようですね。
続いてはパリ大賞典のトライアルとなるリス賞 Prix du Lys (GⅢ、3歳牡せん、2400メートル)、仏ダービーが2400メートルで行われていた時代には残念ダービー的な存在でしたが。
出走馬は9頭。詳細が入っていないので確信はありませんが、どうやら1番人気はオカール賞(GⅡ)2着のパーク・リール Park Reel だった模様。
しかし優勝は7対2(?)のフリントシャー Flintshire 。パーク・リールは3馬身離された2着に入り、首差3着でトレ・ブルー Tres Blue の順。
勝馬はハーリッド・アブダッラー殿下のジャドモント・ファームの持ち馬で、殿下は今年の仏オークスに参戦させるだけの牝馬が不在で、ここで溜飲を下げた形です。同馬を管理するアンドレ・ファーブル師は、何とこのレース15勝目。最早独占状態と言えましょうか。鞍上はマキシム・グィヨン君。
続いてベルトラン・デュ・ブレイユ賞 Prix Bertrand du Breuil (GⅢ、4歳上、1600メートル)。聞き慣れないレース名ですが、実はシュマン・ド・フェル・デュ・ノール賞 Prix Chemin de Fer du Nord (意味は北鉄道賞)として行われてきた一戦。どちらにしてもスペルの長ったらしいG戦ではあります。
6頭立て。オッズは伝わってきていませんが、恐らく前走ロンシャンのリステッド戦に勝ったスポイル・ザ・ファン Spoil the Fun が1番人気だったと思われます。
しかしスポイル・ザ・ファンは最下位に敗退、優勝は2対1とオッズも高かったメインセイル Mainsail でした。珍しく仏オークスでは騎乗馬が無かったクリストフ・スミオン騎手の逃げ切り勝ちで、2着は1馬身4分の3差でレイガール Laygirl 、ハナ差で3着がプペー・フラッシュ Poupee Flash 。1着と3着は共にパスカル・ベイリー師の管理馬で、レイガールがベイリー師のワン・ツー・フィニッシュを阻止した形です。
ベイリー師はこのレース3勝目。勝馬のオーナーはリス賞と同じアブダッラー殿下のジャドモントで、この日はG戦ダブル達成でオークスの無念を晴らしています。
G戦初勝利のメインセイルは血統も注目で、凱旋門賞でディープインパクトを破ったレイル・リンク Rail Link の半弟。今年4歳で、今期はメゾン=ラフィットとロンシャンのリステッド戦で共に3着。前走のロンシャンの勝馬スポイル・ザ・ファンに雪辱を果たしています。
さて日曜日はアイルランドでもG戦が行われました。コーク競馬場のノーブレス・ステークス Noblesse S (GⅢ、3歳上牝、1マイル4ハロン)。馬場は soft 、所により yielding という重い状態。
馬場を嫌って2頭が取り消し8頭立て。出れば有力と思われていた馬が取り消したこともあり、9対4の1番人気には英国のベケット厩舎が遠征してきたキュバニータ Cubanita 。前走ヨークのミドルトン・ステークス(GⅢ)では5着だった4歳馬です。
レースは3歳のウィール・ゴー・ウォーキング We’ll Go Walking が逃げ、4番手追走のキュバニータも好勝負に持ち込みましたが、3頭が横一線の大激戦となったゴール前は、写真判定の結果6番手から追い込んだ3番人気(5対1)のミッドナイト・ソプラノ Midnight Soprano が制し、頭差で3歳馬マジカル・ドリーム Magical Dream が2着、短頭差でキュバニータ3着。
ミッドナイト・ソプラノはポール・ディーガン厩舎、騎乗した若手のマーク・モハナンは未だ5ポンドの減量騎手ですが、このレースはG戦のため減量は対象外。これまでリステッド戦に2勝の実績があり、陣営の今年の目標はGⅢに勝つこと。この目標を果たした現在、秋の愛セントレジャーでGⅠを制することと、更に夢は大きく膨らんでいます。
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